呪術 | ナノ
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「おい七海、これにサインしろ」
「……これ、昔出した私の写真集じゃないですか」
「そーだよ!」
「なんでですか、嫌ですよ」

芸能事務所JJ。
所属している芸能人は幅広く、俳優、お笑い芸人、アイドル、モデルと多種多様。
というのも、社長の夜蛾を筆頭に前世に呪術師として活動し、現在その記憶があるものが中心となっている。

「名前さんが!お前のファンなの!」
「…名前さん、見つかったんですか」
「そうだよ!お前先輩のラジオ聞けよ!」
「今ドラマの撮影してるんで暇がありませんし、元より聞いてません」
「なんで名前さんがお前のファンなんだよ!俺のほうが顔良いじゃん!!」
「ちょっと!五条!!名前見つかったの!?」
「庵さん、おはようございます」
「おはよう七海くん。おい五条!」

五条の姿を見た庵歌姫。
現在は俳優として活躍し、時に番宣としてバラエティにもでるし、映画の配役で決まった歌手が大ハマりして歌手としても人気がある。
お高くとまった感はなく、ドッキリなどでは親しみある反応でお茶の間の反応も悪くはない。
その庵が名前の事を聞きつけて五条に詰め寄ったのだ。
前世で可愛がっていた名前と結婚していた五条は腹立たしい。それだけではないが。

「なんで言わないのよ!」
「言う必要ないじゃん。名前さん別に歌姫のファンだとは言ってなかったし」
「は?」
「五条さん、これでいいんですか」
「名前さん七海のファンなんだってー」
「妥当じゃない。これで名前がアンタのファンだって言ったら目も当てられないわ、可哀想で」
「歌姫なんかに会わせてやんなーい!べー」
「いい度胸だな五条、社長にチクったぞ」
「「硝子!」」

クマのある顔、は昔の話。
少しけだるそうな家入硝子が顔を覗かせ、にやりと笑う。
現在は舞台をメインに活躍する俳優をしている。数年前にヒットした映画では主役を演じ、今はドラマのシリーズにも出ているが、やはり舞台の方が肌に合うからとそれ以外のドラマには出てはない。
それでもその演技力は高く、様々なオファーが来ているが本人にやる気がないの一択でテレビで見る回数はあまり高くはないがファンは多い。
気まぐれで出た医療ドラマはかなりの視聴率で制作側はまた出てくれないかとかなり頑張っているらしい。らしいというのは社長が言っていたからで、社長からしても出てほしいのだろう。

「ラジオで言ってて会わせないは無理だろクズ」
「五条さんに会わせなくてもその他には会わせるべきですよね」
「それなに」
「名前さんが私のファンだそうで、五条さんに頼まれてサインを」
「そうやって自分の株を上げる算段か、クズ」
「語尾がクズになってるよ硝子」
「悟ー、ネタの…なに、どうしたの」
「五条の探し人が見つかったから会わせろって話をしてたんだよ」
「皆知ってる人なの?」
「知ってるわよ、私も硝子も仲良かったんだから」
「出た、スピリチュアル。もしかして七海も?」
「ええ、お世話になった方ですね」
「私だけ疎外感」
「羨ましくもないでしょう夏油さん」
「まあね。悟、ネタ合わせするよ。なにそれ」
「名前さんが七海のファンだから」
「ああ、名前ちゃん」
「「「名前ちゃん!?」」」

この前傑と電話で話させた。という五条に一気に夏油の視線が集まる。
夏油本人は知らないが、夏油傑の姉だった名前を思えば驚くほかない。あれだけ苦労させた姉を覚えておらず、今は普通の暮らし…とは言い難い生活ではあるが、まあ思う所があるのは事実だ。

「おい傑…なんで名前ちゃんなんだよ」
「電話越しだけど若い声だったから。10代後半くらいでしょ?」
「五条さん、どういうことですか」
「正直にいいなさい」
「返答によってはこのまま社長のところに連行するが?」
「え?何?私何か変なこと言った?」
「面倒だ。夏油、お前社長呼んで来いよ」
「え?」
「そうですね、呼んできてください」
「それがいいわ。おら五条、言え、どこで名前と知り合ったかをな!!」

じりじりと詰め寄る3人に気圧される五条。
よくわからないが取り合えず社長を呼んでくることにした夏油はそこから逃げるように社長室に向かう。
事情をとりあえず話し、「悟が、名前という女性の事で…七海と庵と硝子に。社長に来てほしい、と」と言えばすぐに理解たのか「わかった」と一言。
案内して五条の様子を見れば、夜蛾を見て「あ」と言う。それは助かったという方ではなく、間違いないく「やっちまった」の意味で。

「しゃ、しゃちょ…」
「聞いてください社長。コイツ名前見つけてラジオで言ったくせして私達には会わせないつもりだったんですよ」
「記憶がないならまだしも、戻ったって話ですよ。お互い仲間を見つけたら報告する決まりを忘れたか?クズ」
「五条さんらしからぬ失態ですね。名前さん見つけて有頂天?違いますね、マウントとったつもりでしたか?」
「色々察した。悟、お前名前に会って連絡を取り合っているならここに連れて来い」
「え」
「それでここを選ばないならそれも良し、選ぶなら場所を用意する。わかったな」
「え、ちょ、僕…名前さんと、ラブラブしたい…」
「傑の話を聞けば10代後半らしいな、お前自分の年を考えろ。あと立場」

あの五条がここまでされているのを見るのは面白いが、夏油だけがわからない何かは面白くない。
しかしここで聞く雰囲気ではないし、ここであえて空気を読まないほど度胸はない。
とりあえず自分に飛び火しない事だけを思いながら責め立てられている五条を夏油は笑った。

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