呪術 | ナノ
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「あ、ごめんな、さ…い…」
「みっけた」

へあ?という声が名前喉とを抜けたが自覚はなく、声と言うより音が抜けたようだった。
高校を卒業して関東の大学に進学。それを機に1人暮らしを始めて学業とアルバイト、交友関係に勤しんでいた。
本日はバイトがあり、帰る頃には明日があと数時間で来てしまうくらいだった。
電車に飛び乗り、自宅最寄りの駅に降りてコンビニで明日の朝ごはんの調達をしていた時だった。
持っていたカゴが不意に人に当たってしまい、謝るとそこには長身白髪、サングラスに黒マスクと怪しさ満点の男性が居たのだ。

「僕の事わかる?」
「へ…」
「いや、怖がらないでよ。テレビ見る?」
「み、ないです、ね…」
「祓ったれ本舗って知ってる?」
「えっと、なまえ、だけ、なら」
「僕、祓ったれ本舗の五条悟」
「は、はあ…」

マスクとサングラスを外せば国宝級の顔面。思わず名前が「ひゅ」と喉を鳴らせば楽しそうに笑う五条。

「えっと…視聴者の、ドッキリとか、ですか?」
「いや?今僕オフなの。食料調達しに来たんだ」
「へ、へえ…」
「こんな時間にどうしたの?女の子が出歩いてちゃ危ないよ?」
「えっと…、ま、まあ、いろいろ、と」
「お家は?送るよ」
「え、いいえ!」
「もしかして僕怪しい?」

めっちゃ怪しい。と名前は心の中で叫ぶ。
確か友人が「祓い本最高!面白いし格好いいし、今度ドラマ出るの。観なきゃ」と言っていたのを思い出す。その友人が持っていた女性ファッション誌に名前から見ても高いブランドの服を着てポーズを決めているのを見た記憶がある。

「………あ」
「どした?」
「さ、とる?」
「思い出した?名前さん」
「え、な…ええ!?」
「ね、今も名前さん?」
「え?」
「名前だよ名前」
「え、あ…うん。夏油、名前」
「何歳?」
「18…」
「18か……」
「何かお探しですか!」
「へ!?」
「何かお探しですか!お客様!本日新商品のパンがおすすめですよ!」
「え、あ!だ、大丈夫です。知り合いです」

あ。という顔をして店員がそそくさと逃げていく。
若い女性に絡む男性客。という構図だったのを心配してくれたのだろう。先ほどまでは知らない人間だったが、今は知り合いだ。勿論変な意味ではなく。

「僕疑われた?」
「ま、まあ…」
「そうだ、連絡先交換しよ。持ってるでしょ?スマホ。あと明日の夜にラジオあるからそれの聞いてほしいし、毎週やってる冠番組も観て」

名前のバッグに手を突っ込んで名前のスマホを取り出してアプリを探すが見つからないのだろう。

「ね、交換」
「え…い、いいよ。悟は悟の人生楽しんで」
「僕が嫌なの。名前さんとまた会いたい」
「もう私、傑のお姉ちゃんじゃないし」
「傑もいるよ?僕の相方」
「もういいの、終わったの。スマホ返して」
「やだ。また僕と会う約束してくれないと返さない。家まで送っていい?暗いよ?危ないよ?」
「悟が危ない人だよ…」
「元旦那だよ?」
「今は他人ですよ」
「むー」
「いい年した大人がしても可愛くないよ」
「子供の話聞きたくないの?」
「もう昔の事だし。結構です」
「それ、買うの?僕が買ってあげる。それだけでいいの?お菓子とかもいいよ」

名前の持つカゴを引っ張り、お菓子のコーナーに行けばスナック菓子やチョコレート菓子、その他季節商品を入れていき、最後にはジュースのコーナーで「どれがいい?これ前好きだったよね、今も好き?」と聞いてくる。

「い、いいよ…そんな」
「僕がしたいの。あと僕のご飯入れてレジ行こうね」

お弁当コーナーに行って適当な弁当を持ってレジに行き、「これだけ袋別で」とあの店員に声をかける。
それを後ろであわあわとどうしていいのか分からないような顔で商品と長身の男性を交互にみる女性。店員から見ればとりあえず知り合いだ、というのはわかるがどんな関係だよと思う。
袋詰めをしている間に男性が会計を済ませ、「ども」と袋を持って退店する。

「名前さん、どっち方向?」
「ご、強引だなあ…」
「だって連絡先交換してくれないんだもん。暗いし、遅いし。バイトしてるの?」
「う、うん」
「近いの?」
「え…」
「なんもしないよ。暗いし遅いから送るの、危ないでしょ」
「さと……五条く、さんの方が危ないのでは」
「悟さんで」
「五条さん、ごちそうさまです。それでは」

五条のもつコンビニ袋を持とうとするが、名前の力ではそれを取ることもできない。男女差はもとい、体格差と力の差が大きすぎるのが原因だ。
「んー!」と粘るも、五条はニコニコするだけ。

「もういい。自分で買って帰る」
「え、ちょ、待って待って。ごめん、意地悪した、行かないで」
「顔はいいんだから、そんなことしたら嫌われるよ」
「やだ、嫌わないで」

重たいから気を付けて。と袋を名前に渡せば、名前はちらりと五条を見てから受け取る。
ジュースが入っている分少し重いが、名前が持てない重さでは勿論ない。少し重いが、スーパーでの買い出しを思えば重いとは思う重さではない。

「連絡先交換して、お願い」
「いやだってば。五条く、さん、有名人なんでしょ?こんなことしていいの?」
「ずっと名前さんの事探してたんだもん、これで騒ぎになるなら辞める」
「え」
「だから」

交換して、連絡先!と五条が懇願するので、名前は仕方なくスマホを取り出した。
別にわからないところに隠しておいたわけではないメッセージアプリを起動させ、お互いのアイコンがポコっと音を立てて現れると五条は上機嫌にニコリと笑う。

「アイコン可愛いね。なあに、これ」
「今流行ってるアニメのアイコン」
「好きなの?」
「うん」
「いつしてるの?配信してる?」
「んとね…あ、後でURL送るよ、無料配信してるから」
「絶対だからね、約束して」
「う、うん?約束…」
「で、お家どこ?送る」
「え」

それはいらないよー!と五条を撒こうとするが、五条も諦めない根競べが始まり、先に音を上げたのが名前だったので大人しく送られることとなった。

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