呪術 | ナノ
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※夏油離反教祖生存IF
※百鬼夜行は行われていません。



「悟が結婚、ねえ…それで子供まで?」

若い呪詛師が「ご存じですか」と切り出した内容はこうだ。
呪術界最強の男、五条悟が結婚してその妻は現在妊娠中。デキ婚かと思えばそうではなく、単純に時間の問題だったらしい。
五条悟が結婚したは1年にも満たないが前であり、妊娠も公表はされていないとのこと。
まあこの業界で秘密を保つのは難しい。現に敵である呪詛師に漏れているのだ。
どこまでが本当で、嘘かは不明ではあるが。

「気になるんですか?」
「まあね。あの悟と結婚して子供まで。どんな女かと思ってね」
「ああ…」
「あの悟が、だ。君は知らないだろうけどかなりの問題児でね、性格も難がある。まあ顔と才能と家柄とスタイルはいいから女性から見れば魅力的だろう。どこぞの良家かな?それとも五条家のお嬢様、か」
「一般家庭出身らしいです」
「へえ、それはまた」

物好きがいたものだ。と夏油は思って笑う。
学生時代、お互い女性関係はいいものではなかった自覚はある。あの激務でストレスがたまらないわけがない。発散する場が必要だったし、若いのだから性欲だって強い。
適当な女に声をかけて、ホテル、それでさようなら。お互い気に入れば連絡先の交換もあったかもしれないが、まあこちらは未成年を隠しているのだから適当なことを言って別れていた。

「五条家は厳戒態勢だとか」
「悟の子供じゃ仕方ない」

あの五条家だから。というより御三家なのだから当主の細君が懐妊となれば周りは神経をとがらせるだろう、御三家はお互いの足の引っ張り合いは得意だ。
それにしても相手の女性が可哀想だ。呪術師、それも御三家に嫁いで相伝がでれば万々歳だが術式がなければ目も当てられない。
あの五条悟が夫なのだ、不憫だと夏油は笑う。

「それでどこの物好きだろうね、その女」
「呪術師からしたら玉の輿なのでは?」
「ああ、確かにそうかもね。ほら、私、彼の性格知ってるから」
「確か……相手の名前は」
「おや、知っているのかい」
「ええ。ああ、そうだ。夏油さまと同じ苗字の、夏油名前、といいました」
「……は?」
「確か、夏油名前だと…あ、今は結婚して五条名前ですが」

夏油名前。
夏油傑の姉だ、そうであればあの五条悟もいう事を聞くだろう。あれば学生の時からそうだった、ひとつ上の夏油名前のいう事は聞いていた。
どういう風の吹き回しかは知らないが、不思議と聞いていたのは事実だった。
夏油が離反し、家族を殺し、唯一殺さなかった相手。
さぞ呪術師界で肩身の狭い思いをしたとは思う、だからと言って悟はないだろう!?と夏油は内心叫ぶ。

「そ、それは、事実、なのか?」
「夏油さまと同じ苗字だったので、苗字は間違いないかと」
「名前は?」
「おそらく、は…どうしました?」
「………外見はわかる?」
「いえ、噂話から聞いたのものなので。結婚と懐妊は事実の様ですが、相手の名前は確証は低いです。呪術師の家系ならまだしも、一般家庭では」
「…調べて」
「はい?」
「調べろ」

は、はい!と若い呪詛師は夏油の命令に恐れを抱きながら背筋を伸ばして、まるで啓礼の様な格好で返事をする。言われたからにはすぐさま、と夏油の執務室から飛び出て行った。


「ああ、どうしてなんだ」
「夏油様?」
「どうしたんですか?」
「…美々子、菜々子。勝手に入ってきて悪い子だね」
「ノックしました」
「でも、夏油様返事がなくて…具合悪いのかもって」

夏油が時計を見れば、あれから小一時間は経っている。
目を通さねばいけない書類はあの時のままで、これは真奈美さんが大きなため息をつきそうだ。と他人事のように夏油は思わず笑ってしまった。

「いや、少し考え事をね」
「私たちがどうにかできますか?」
「夏油さまのためなら、なんでもしますよ!」
「そうか、嬉しいな。でも大丈夫、2人が気にすることではないよ」

実際この双子の話したところでどうにもならない。
夏油傑と五条悟の関係と、夏油の姉である名前の話はしたことがある。
かつての親友と、同じ世界が見えていた姉。
一緒に来てほしかったが、姉の性格を考えれば一緒には到底無理だった。きっと、今でも自分を気にしているに違いない。

「…五条、悟?」
「ん?ああ、まあ、そうかもしれない。悪かったね、心配をかけて」
「あ!そいつのせいでお金の集まりが良くないの?」
「ふふふ、違うよ。ちゃんと猿が献金しているからね、その心配はないよ」
「夏油さまを困らせるなんて悪いやつ!」
「悪いやつ!」
「ふふふ、そうだね、悟は悪いやつだ」
「やっぱり!」

悪いやつ!悪いやつ!!と合唱する双子に笑う夏油。
夏油さまを困らせるなんて!
夏油さまを悩ませるなんて!
許せない!!
そんな双子を眺めているとノック音が。今度はしっかりとわかったので「どうぞ」と許可を出せば菅田が「失礼します」と入室してきた。

「お時間よろしいですか」
「うん、どうしたの」
「先ほどの依頼の件ですが、私の方でも調べておりまして…」
「ああ、続けて」
「はい。こちら私がまとめておいた資料です」
「なにそれ」
「貴女たちには関係のない物よ。ここで何をしているの?夏油さまの邪魔しては駄目よ」
「ああ、気にしないで。ちょっとした雑談を、して、いた…だけだから………真奈美さん、これ、本当?」
「はい。残念ですが」
「そうか……」
「なになに?夏油さまー!」
「悲しいことがあるの?菜々子と一緒に消してくる」
「ありがとう。でもこれは2人では手に余るね」

資料に特級呪詛師の姉である夏油名前は五条悟と婚姻し現在五条名前として生活。
現在は妊娠中。特級と特級の血縁者ということもあり、呪術に関係する人間たちは注視している。
なお五条家からの懐妊の正式な公表はなく、御三家ということもあり伏せている可能性が高い。
五条家の警戒態勢、購入品目を見るに信憑性は高い。
現在母体である五条名前には懸賞金がかけられている。

「まったく、嫌になるね」

資料に添付された姉の隠し撮り写真は、酷く懐かしい気がした。

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