呪術 | ナノ
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「復活?」
「いや、まだ現場復帰は先だな」
「自宅療養?」
「そうだな、死にたいなら現場行くか?私は同期の死体は見たくない」

名前の退院が決まり、明日にも戻ってくるという。
名前が家入に「明日退院だって。やっと好きなの食べられる」と少し弱った声で喜んだ電話が入ったのだ。
年も明け、やっと百鬼夜行の後処理が終わったと言ってもいいくらいの例年通りの忙しさになった頃だった。
名前の意識が戻ってからは夏油が足しげく通い、時折名前の見舞いに行った双子と一緒に食事をしたりとこちらでも有意義に過ごしている。時折呪術師としての任務が入っても「私今呪術師じゃないので」と無視をしているらしい。
らしい、というはそれを家入も五条も直接目にしたわけではないから。そして学長からどうにかしろ、ともいわれていない。

「誰が迎え行くの?僕行っていいの?」
「任務と授業に支障がないらいいんじゃないか?まあ伊地知か新田あたりがよさそうだ。それか任務帰りの誰かと同乗して戻るか」
「それじゃあ私が迎えに行くよ」
「……いつ来たんだ」
「さっき。ノックしたんだけど」
「てか、本当お前帰らなくていいわけ?そんなに休みって貰えるもんなの?」
「私がいなくて困るのは会社だからね」
「こわ。名前が乗っ取りの心配するのわかるわ、私だったら即家と縁切りする」
「もう傑名前と結婚したら?」
「やめろ、名前が可哀想だろ。もっとまともな奴と結婚させてやれよ、特級はない」
「私遠回しに否定されてる?」
「されてるね」
「そう。いいけど。私が明日迎えに行くから。車借りるよ」


「や、名前。迎えに来たよ」
「……帰らなくていいの?」
「酷いな、迎えに来たのに。実家に電話した?」
「昨日病院の公衆電話で電話したよ。入院してたからゴメーンって言った」

うるさくって、もう嫌になっちゃう。と笑う名前。
名前の顔色は良く、意識がなかったとは思えないほど。ただ呪術師としての任務を請け負うには体力の回復も体調も追いついていない、ということだ。
少しの荷物を持って病院の外まで行くと五条家の名前の世話をしていた人に礼を言って別れた。

「高専に戻るけど良いの?」
「うん。高専に住んでるし問題ないよ。戻ったら学長に挨拶して、硝子のとこ行って、補助監督に挨拶して、帰る!」
「そう?じゃあ車に乗って高専に戻ろう」

いつもの歩調で歩くのが上手くいかず、ゆっくりと歩いて夏油の後ろをついて行く。
車に着くころには息が上がっているあたり、体力が確実に落ちている。
夏油が「待っててくれればいいのに」と言えば名前は「体力戻さないとだし」と血色のいい顔で答える。
名前が後部座席に乗り込もうとすれば「助手席乗ってくれないの?」と言うので名前は迎えに来てくれたしな、と思って助手席に乗り込んだ。

「夏油くんこそ帰らないの?」
「名前がこの状態で帰るなんてできないよ」
「別に気にしなくていいのに」
「私が気にする」
「そんなもん?」
「そうだよ。友人が入院していたんだよ?」
「ふーん?そっか。よくわからんけど、夏油くんは”そう”なんだね」
「君ら呪術師は怪我が日常茶飯事で硝子がいるから麻痺してるけど、入院てかなり大ごとだよ?」
「生きてるんだから別に良くない?」
「良くないよ。スグルが泣くよ?」
「にゃーって?」
「私が涙を流してワンワンなく」
「犬みたい」
「名前は猫が好きだもんね」
「んー、優が好き」
「照れる」
「夏油くんじゃないからね」

運転中しばらくするとだんだんと口数が少なくなってきた名前。
眠いの?と夏油が問えば「んー、ちょっと」と言葉を濁す。
もうすぐ高専と言えば高専で、寝ていいよと言うには時間が短すぎる。しかし体のダメージを考えると疲れるのもわかる。
着いたら起こすよ、と声をかけると名前は眠る体勢に入る。本調子ではないのはわかるが、ここまでかと夏油は驚いた。

「名前、着いたよ、起きて」
「ん…あ、うん。ありが、と…う」
「荷物は私が持つから降りて」
「うん、ありがとう。ぼーっとする…」
「短い時間でぐっすりみたいだったからね、双子も来るって言っていたからちゃんと起きて。コーヒーでも飲む?」
「お茶が良い」
「良い紅茶貰ったから医務室で飲む?」
「そこまではいいかな」

のろのろ動き出したと思っていたが、目が覚めたのだろう。のろのろしていたがそれなりの動きになる。
補助監督の居る部屋に鍵を返すついでだからと先に行き、名前が顔を出すと女性補助監督たちの嬉しそうな声が上がる。
それを避けるように鍵のかかるボックスに鍵を戻し、近くにいた補助監督に鍵を返した事を告げ、適度な時間を見て「学長に挨拶に行くんだろう?そろそろ行こうか」と声をかける。
それから学長室に行き挨拶をする。まだ教え子の感覚が強いのか名前に菓子を持たせるあたり学長は名前に甘い。同期の様に抜きんでた何かがあったわけではない名前は学長からしても可愛いのだろう。学生の時から菓子をやっていたのは同期も知っている。問題児の中で普通の子がいるだけでも可愛いと当時の補助監督が話しているのを聞いたことがあるので、大人とはそういうものかと当時の夏油は思ったものだ。

「硝子」
「あー?お、戻ったか」
「ご心配おかけしましたー」
「本当だな、今日は五条の部屋の飲み会だ。強制連行」
「病み上がりぃ!…病み上がり?」
「夏油、名前を五条の部屋で寝かせておけ。買い出しはお前だ」
「え、私!?」
「文句でもあるのか」
「ないよ。ここで少し休憩してから名前を送ろうと思ってただけ」
「人の職場で休憩するな。ついでに五条に名前寝かせてるって連絡しておけ、飛んで戻ってくるぞ」
「私の意見は?」
「必要か?」
「必要でしょ」
「心配かけた罰」
「う、ぐぅ…それ言われたら……って、私が悪いのそれ」
「名前は弱いんだから無理しちゃダメなんだって」
「キッショ。さっさと名前連れて行け、疲れてるだろ」

しっし。と手で追い払う仕草をする家入。
仕方がないので名前は夏油の後ろを歩いていれば、自室に戻ろうとすれば「違うよ」と手を引かれる。
家入の言うとおりに五条に部屋に連行され、流石にベッドは御免していただいてソファに毛布となる。

「なんで夏油くん五条くんの鍵もってるの?付き合ってんの?」
「今居候してるんだよ。百鬼夜行の手伝いで、それから」
「そうなんだ。あ、スマホの充電したいんだけど…充電器、ある?」
「あるよ、ちょっと待ってて」

充電器を延長コードに刺してから渡すと電源の切れたスマホの充電を始める名前。
電源を入れないのか、と問えば「着信とか色々ありそうだからまだ寝かせる」と言う。
確かに実家や諸々からの着信やらいろんな受信があって騒がしくなりそうなのは予想ができる。特に名前の実家からの連絡は確実だろう。
ぬくぬくしている名前に紅茶を入れ、五条の備蓄しているお菓子を適当に持って来て名前に出すと名前は嬉しそうにする。

「でも、早く消化してしまった方がいいんじゃない?」
「充電しながらだし、そうかも」

紅茶を一口二口飲んだ後に名前が電源を入れれば、普段バイブレーションなのだろう。長い間ヴー!ヴー!と震え続けていた。

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