呪術 | ナノ
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「………しんだ?」
「生きてるよ」

ナースコールを家入が押して看護師と担当の医師が駆け付ける。
色々な検査だろうか、ぼんやりとしながら名前がされるがままになっているのを家入が確認し、静かに病室を出て同期2人に連絡をする。

家入
「名前の意識が戻った」
五条
「まじ?」
夏油
「今から行く」

五条はまだ後始末に追われ、夏油はまだ戻っておらず五条の部屋に居候をしているらしい。
らしいというのも、今の家入は忙しく他人の事を気にする余裕があまりないからだ。
名前に関しては同期という事もあるが、今回の百鬼夜行に関する最初の被害者という事もあっていつも通りに行かないという事もある。
連絡をして1時間もしないうちに夏油が到着するから家入は「早。ヤバ」とクマのある顔で笑う。

「名前は」
「今検査終わって落ち着いた所。ぼーっとしてる」
「一緒に居なくていいの?」
「五条んトコのお手伝いさんが今身の回りのことしてる。終わったら声かけてくれるってさ」
「…そう」
「名前の実家に連絡した?」
「してないよ。今来られても迷惑だろ」
「確かに。でもいいのか?社長の娘だぞ?」
「いいんだよ。最悪会社辞めても呪術師できるし」
「さすが特級。出戻れる場所があると違うな」

ははは。と雑談していれば見慣れた五条家の世話係が「苗字さまのご準備が整いました」と声をかけてくれた。
名前の準備って。と2人は思ったが、まあ声かけでしかないのもわかっているので素直に「はい」と返事をして名前の居る病室に入る。
相変わらず、ボーっとしているが横目でちらっと2人を見ると口の端が少し上がったのが見えた。

「生きてるからな」
「硝子?」
「さっき起き掛けに『死んだ?』だからな」
「ごめ…ん、」
「心配したんだからね。実家に連絡は入れてないからご両親は来ないから安心して」
「あとで五条は来ると思うがな」
「…ん」

元気がない、というよりも当然の反応だ。
声もあまり出ていない。
家入も任務があるので長居はできないが、夏油はこの場合幸運なのか呪術師ではない。
夏油に後の事を頼み、家入は高専に戻る。五条家の世話係は名前が以前最低限で、とお願いしているので五条もそれ以上はいい、と命じてある。

「沢山寝たね」
「…ん………」
「実家から電話が何回か来てたよ。元気になったら掛けなおして」
「…や、だな」
「私のところにもあってね、忙しくて私も会えてないって言っておいたよ」
「あ、りが、と」
「名前の手、握っていい?」
「や、だ」
「生きてるって感じたいな…」
「ひと……お、んな、たら、し、め」
「酷いな。友愛だよ」
「おっえー!お前そんなこと言う奴だった?キッショ」

振り向けば五条が学生のノリで懐かしいことをしている。
丸いサングラスに舐めくさった顔。
名前が思わず「ふ」と吹き出すと五条はにやりと笑う。
一応の回復はした、と思えたからだ。

「悟」
「なんか食べれそう?」

窘めるように夏油が五条の名前を呼べば、チラッと見てから名前に問う。
勿論名前は首を横に振る。

「だよね!まあフルーツ持ってきたから食べらるようになったら言いつけて用意してもらって」
「悟。もう少し声を小さくしなよ、名前起きたばかりだよ」
「だって嬉しいじゃん?僕の可愛い共犯者」
「…共犯?」
「そ。僕と名前は共犯なの」
「……何の話?また出鱈目じゃないだろうね」
「僕と名前は傑を呪術師から追い出した共犯なんだよ」
「私は自分の意思で、出て行ったんだけど」
「でも場所の提供は名前、背中を押したのは僕だし」
「阿呆らしい。名前の前でそんなケンカになりそうなこと言うなよ」
「ん?んふふ」
「うる、さ」
「ほら、うるさいって」
「ごめーん」

ふふふ。と名前が緩く笑う。

「また、ねむく、なって、きた」
「じゃあ私たち帰るよ、またね」
「早く回復しな、任務が待ってるよーん」
「悟」

あまり上がってない右手がフルフルと揺れる。自分では手を振っているつもりなのだろう。
病室の外で待機していた五条家の世話係に夏油は一礼し、五条は「じゃあ何かあったら連絡して」と言って一緒に病院を出ると高専の黒い車が1台。運転席を見れば伊地知が待機している。
そこに2人で乗り込み「高専に戻ります」という伊地知の言葉で行き先が高専だと知った。

「苗字さんの様子はどうでしたか?」
「まだボーっとしてたね、まあ長い事意識戻らなかったし?仕方ないね」
「このまま名前を置いて帰るのも目覚めが悪いんだよね…私」
「なんで?」
「なんでって…」
「傑は戻っていいよ?手伝ってほしかった件は終わったし」
「でも」
「まあ傑が呪術師に戻りたいって言うなら手配するけど?でもいいの?名前の親に気に入られてカレンダーまで作ったのに」
「アレは猿が」
「猿?なにお前、非呪術師の事猿って言ってんの?ヤバ」
「…………なんにせよ、社長と奥さんに名前のことなんて言うのさ、嘘ついて元気でしたって?」
「得意じゃん」
「…不得手ではない、けど」

あんなになった同期、見てていい気分じゃないだろ。
と夏油が言えば五条は黙った。

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