呪術 | ナノ
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「お疲れー」
「そっち大変だったみたいじゃないか東京」
「そーなの!超大変だったよ」

ま、僕の手にかかればチョチョイのちょーい。とおどける五条。
夏油の要望の通り名前は夏油の近くの配置にされたが、特級という事もあって五条は東京の守備、夏油は京都の守備となった。
見かけだけ万全の名前を七海とともに割れ物の様に丁寧に扱いながら京都へ出発し、無事任務を終えて東京に戻ってきた。
普段何ともない疲労も今の名前にとってはかなり大きく、戻ってくる間はずっと眠っていた。

「それより苗字さん休ませてあげてもらえませんか」
「反転術式使えないって不便だねえ」
「少数派をまるで多数の様に言わないの。名前、医務室に行こう?硝子に診てもらおうね」
「母親かよ」
「この際母親でも父親でもどうでもいいですよ。苗字さんの顔色みて何も思わないんですか」
「わーったよ。名前は僕が運ぶから2人は報告よろしく」
「え、悟運べるの?……心配だな。名前一応私の働いてる会社の娘さんだよ?」
「一応ってなんだ、殴るぞ」
「え」
「あー、これは不機嫌だね。おいで名前、僕と一緒に硝子のとこ行こうね」
「夏油さん、初めてですか?名前さん機嫌が悪くて口が悪くなるの」
「え、あ……うん、そう、かも?」
「酒が入るとまた違った口の悪さになりますよ。では私たちは報告のために離れますが、苗字さんに変なことしないでくださいね五条さん」
「変なことって?七海のエッチ!行きましょ名前ちゃん、七海に変なことされてない?悟子心配」
「ふざけてる暇はありません、苗字さんの事頼みましたよ」

睨むように言いつけて七海は夏油とともに報告に向かう。
そもそも名前の状態から見てすぐに現場復帰が無理な話なのだ、と家入は五条に愚痴っていた。見た目は万全でも中身がまだ不安定。一般的な生活なら送れるが呪術師というハードなものを送るには回復したとは言い難い、と。
しかし上がそんなことを許すはずもなく、また想定外の特級呪霊からの宣戦布告に名前は駆り出されたというわけだ。
特級の夏油が名前の近くに配備だというので、ある程度の防御策にはなっただろう。しかし名前の疲弊はかなり酷い。

「おつかれ、名前」
「んー…これ、夏油くんが起こすはずだった百鬼夜行だよね、乙骨くん、いるし」
「うん。でも、傑でなくても折本里香は解放されたから。名前の知ってる百鬼夜行ではないけど、終わったよ」
「解呪成功、しだんだ」
「あれ?名前知らないの?」
「百鬼、夜行…あることしか、知らないよ」
「そっか。じゃあ僕とわかるところ違うのか」
「ねえ…本当、しんどいんだけど…」

あ、ごめん。顔色死にそう。と五条はケラケラと笑って名前を抱き上げて家入のところに向かう。立っているのもやっとという状態なのは察した。
急いで家入が居るはずの医務室に行くが、目的の家入は不在。この忙しい時に外に行くことはないと思って電話を掛ければ仮眠室にいたらしく、不機嫌な声で「クズ」と言われた。
五条は名前が戻り、顔色が悪いと伝えると「…すぐ行く」と低い声で一言。
5分も待たずに家入は医務室に戻ってきた。

「………五条、補助監督の誰かに病院の手配しろと伝えてくれ」
「やばい?」
「ああ。だから無謀だと言ったんだ。名前、聞こえるか?反転を使うがあとは名前の体力次第だ、入院だよ」
「うえー……」
「しゃべらんでいい。無駄な体力使うな」
「名前、僕じゃあ補助監督とこ行って手配するからねー。あと家のヤツに世話またさせるからヨロシク」
「えええー……」
「おい五条」

お前な。と睨むと五条は「はいはーい」と医務室を出て補助監督のいる部屋に入る。
先日の百鬼夜行の後始末で呪術師だけではなく補助監督、窓もてんやわんやしている。電話が鳴り響き、FAXは受信音を絶え間なく、メールでもやり取りしているのだろう、パソコンとにらめっこをしている補助監督も少なくはない。

「悟?名前は?」
「補助監督に名前の病院の手配させるの来たんだけど、あ、伊地知ー!」
「は、はいぃ……」
「名前の状態が良くないから病院の手配して。病院は前のところでいい、手配が難しいなら僕の名前だして」
「わかりました、至急手配します。苗字さんは医務室ですか」
「そう、今硝子が診てる」

他にも負傷者は多いが名前ほど酷い人間は多くはない。家入の処置を受けたもの、そこまでではないが入院をすれば回復に向かうもの。
ただ名前は前戦でのダメージが多く、また追加された。家入が居る東京の現場ならまだマシだったかもしれないが、過ぎてしまった話はもう意味がない。
五条は伊地知に伝え、医務室に脚を向けると夏油も一緒に向かっていた。
七海は?と聞けば次の任務入ってたんだよ。と短く答える。

「硝子ー、手配頼んできたよ」
「ああ。なんだ、夏油まで」
「名前の状態が悪いって聞いて」
「あの状態で京都の往復、呪霊退治。お前の呪霊がいたからまだ楽だったかもしれないが、基本となる名前自身がボロボロじゃあな。今寝てる」
「呪霊の動きを止めるのに名前の結界術は重要だからね…ごめん、無理させた」
「殊勝な態度だな。で、お前いつ戻るんだよ」
「え?」
「名前が気にしてたぞ?あっちの仕事なのに呪術師の任務に来て大丈夫なのかってな。あと実家が煩いらしい」
「そっちが本命だろ名前。実家煩いっての。自宅療養中に顔見に行った時、傑終わったらちゃんと帰るよね?実家からの電話うるさくてって言ってたし」
「え…それ本当?」

本当。と2人の声が重なる。
名前自身夏油を呪術師の道から外してしまったという気持ちがあるのかもしれないが、それよりも実家の圧の方が面倒だった。ということだ。
実際具合が悪いのに何も知らない実家からそんな連絡がくれば名前でなくとも嫌になる。

「でも、こんな状態の名前を置いて、帰れないでしょ」
「お、意外にも良心があるんだな」
「でもお前さ、ここにいると呪術師の仕事しないとだよ?今回僕が呼んだんだけどさ。まあ上が傑がまだいるって知ったら任務振ってくるよ?動けない呪術師も何人もいるし」
「それは悟どうにかしてよ…私名前の家の社員として娘さんに寄り添うからさ」
「それは家の人間にさせるから」
「家入さん」
「伊地知か、入れ」
「し、失礼します…病院の手配ができました。苗字さんの搬送を」
「はいはーい。名前、抱っこするよ」
「え、ちょ、悟、私が」
「名前の負担になるから小競り合いするな。五条そのまま運べ、私が付き添う」
「おっけー」

まるで部外者の様な扱いに、夏油は戸惑う。
しかしここで大人しくは出来ない、そっちがそうなら。と「私も付き添うから。社長のお嬢さんだし」と宣言して無理矢理同乗した。

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