呪術 | ナノ
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「あ、これ名前の分。こっちは悟の」
「…?なにこれ?ポスター?」
「私と悟のカレンダーだよ。ほら、君らがこっち来た時」
「え!?あれ本当に撮ったの!?うっそ!!?」

長い筒。ビニールでカバーをされて、軽い。
名前がそれを覗くようにふざければ夏油は軽く答える。
迫る年の瀬、五条の企みによって名前は実家に戻っていたのだ。年の瀬と言えば呪術師の繁忙期。田舎である名前の実家に呪術師として派遣された、と言うわけである。
呪術師として活動はしていないが、そこには特級がいるのだから不要だろうと名前は思うも、一般人だしねーと五条に言われればそれ以上の事は言えない。
大人しく任務に従って実家に戻って、任務をこなして帰る時に夏油が送ってくれたついでにとくれたものがそれだ。

「売れた?」
「大盛況。悟もノリノリでね、これだと次も私がモデルになりそう」
「海外だと消防士さんのカレンダーもあるくらいだしね。硝子とこれ見て酒飲むわ」
「硝子の分もいる?」
「硝子いらないって言うと思うけど、ネタとして貰う」
「ネタ…次回からは2月ずつのカレンダーにしようかって話をしてたんだ」
「夏油くん単品?五条くんも?」
「それは悟次第じゃない?」
「ふーん?まあ私はノータッチだから、関係ないけど」
「関係あるよ、名前はうちの社長令嬢だろ?」
「令嬢ね…兄2人いるからおまけみたいなもんだけど」

じゃ、色々ありがとう。と手を振ってわかれる。
名前の兄2人も、夏油の前では色々負けているので大人しいのは前回と今回でよくわかった。
高身長、ガタイが良い、仕事ができて女性客にも人気がある。ただしクズ、というのは名前は言わない。職場であるところで上手くいっているのであればそれ以上の事はない。ましてカレンダーを限定的に作るくらいには名前の両親からも可愛がられているのだ。名前はただただ実家が乗っ取られないのを祈るくらいだ。
無事にと東京に戻り、現場報告を終える。戻った翌日には慰労会がある。

「伊地知くん、五条くんどこか知ってる?」
「五条さん、ですか?先ほど任務から戻られているので…休憩室か、家入さんのところでは?」
「ありがとう」

後輩という事もあってか、五条の任務の補助監督は伊地知が多く、五条の事になると彼に頼むのが早い。伊地知本人は嫌だろうが、まあ後輩の宿命だろう。
補助監督としても優秀な彼は、最強によって酷使される運命なのだ。
それから名前は休憩室を覗き、次に家入のいる医務室に向かう。

「お、名前おっかえり」
「たっだいま。これ夏油くんから、硝子にはこれとこれ」
「おん?ナニコレ」
「まあまあ広げてごらんなさい。」
「夏油元気だったか?」
「元気だったよ。次のカレンダーの話してた」
「うっわ!ね、特典のブロマイドは?」
「なんだこれ。なんで五条まで居るんだよ」
「我が社?家?のカレンダー。お客様や取引先に大人気の夏油傑さんと親友の五条悟さんをモデルに数量限定の特別販売していたカレンダー!らしい。これかな、特典ブロマイド。封筒持たされた」

薄いビニールを取って、紙を広げるとそこには上半身裸の最強コンビ。
その2人を中心に、カレンダーのはずのその紙にはカレンダー部分はかなり小さい。アイドルか。という冷静な家入の突っ込み。右下に小さく名前の実家の会社名が入っている。

「要らねえ」
「医務室に貼っておきなよ、夏油くんからだよ」
「名前に返す」
「私もあるから2枚もいらないんだよ…」
「猫のご飯の下にでも敷けよ」
「あ、それいいね」
「よくねえよ。飾ってよ硝子、僕だよ、僕!」
「猫は?」
「これから迎えに行く」
「見て!傑のブロマイド!!」
「猫のスグルの方が可愛げがあるな」
「魔除けにいいんじゃない?」
「魔よりも呪霊だろ、ここだと」
「次回は僕もブロマイドしようかなー!」
「いくらで売ってたの」
「値段は知らないけど、100枚限定の抽選販売?で、その中でまた抽選でブロマイドだったかな。夏油くんが私にもくれるって言ったけど、お断りした」
「ねえ、僕と傑の扱い悪くない!?ねえ!ねえ!!」

流石に元同級生のブロマイドはいらない。ついでにこのポスターに近いカレンダーもいらない。実用的ではない。欲しがる人間にしてみればカレンダーは二の次なのはわかるが、名前からしたら普通のカレンダーが一番である。

「あ、学長にあげよっか。夏油くんの近況報告を兼ねて」
「お前怒られるぞ」
「だめ?」
「学長男だぞ?男がこんな男のカレンダー貰って嬉しいと思うか?そっち方面の趣味はないだろ」
「あー」
「あーじゃないよ名前、あーじゃ。もう!名前も硝子も酷いじゃん!こんなGLGのカレンダーをないがしろにしてさ!ぷんぷん」
「中身がアレだからな」
「まあ、顔だけならいいんだけどね…」
「中身もサイキョーですけど!?」

ほら!見てよ!!この肉体!!と自慢げにするが、家入共々見慣れている。
五条の身体、ではなく、ここ高専にいれば基本肉体派が集まるので肉体美、といわれても「そうですね」しか感想がわかないのだ。
名前でさえ五条には遠く及ばないが筋肉はもちろんあるし、家入は職務上筋肉はある方ではないが負傷者の身体を見慣れている。

「しかしあの夏油が名前の家に就職して上手くやってるっていうのも意外だな」
「親に気に入られちゃってさ、私実家が乗っ取られないか心配だよ」
「傑に乗っ取られて名前困ることある?」
「………ないな、むしろ楽かもしれない」
「困ってやれよ、実家だぞ」
「元呪術師だし、私に理解あるし。私は別に実家に仕送りもなんにもしてもされてもいかないし?縁が切れても、問題なくね?気づいちまったよ」
「傑が名前と結婚して婿養子になっちゃえば、乗っ取り成功って、こと?」
「怖いこと言うなよ五条、冗談にもらならんぞ」
「現実味が増すからそれは駄目でしょ」
「もう名前傑と結婚しちゃえよ、楽だよ?」
「結婚を楽と楽じゃないで考えては駄目では?そもそも呪術師してる時点で結婚願望ないし?ただ、実家に特級が居るのが…しんどいなって、だけ」
「両親以上のボスだな。私だったら絶対帰らん」
「私だって帰りたくないよ?どこかの誰かが私にそっち方面の任務振るからだからね?何か楽しくて帰ったら見合いだのなんだの言われる実家帰らねばならんのだ」

御三家でもない一般家庭、ついでに上に男が2人いるんだし、私が何しようと自由じゃね?と名前が言えば、家入は大いに笑って名前に賛同した。

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