呪術 | ナノ
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「名前、話しはまとまったよ」
「…な、なに?」
「名前ちゃんおかえりなさい」
「名前ちゃんおかえり!」
「あ、恵。おかえりー」

ふふん。と言わんばかりに五条がニコニコして戻った名前を出迎え、次に双子、津美紀が恵におかえりと出迎える。
夏油の姿が見えないと思っていれば、五条が「傑はお仕事中」と上機嫌に答えている。

「恵くん、手洗ってこよう」
「はい」
「で、何がまとまったの」
「僕と傑のカレンダー!僕のマージンは取らないけど、傑にはボーナス付けてもらう事で手を打つことになった」
「は!?」
「といっても、部数というか枚数は100枚程度で抽選販売にしようって」

手が洗えるところに恵を連れて行き、その後ろで五条は楽しそうに報告をする。
それで、スペシャル版には傑のブロマイド!と楽しそうに続けるではないか。
これには名前も恵も呆れて口がふさがらない状態。お互いに横目でちらりと見て視線を交わし、大きく溜息をつく。この男、頭がおかしい。

「カレンダーは1枚で1年使えるタイプ!まあ今回は様子見だしね、評判良ければ次につながるかも」
「五条くんはいいの?五条家当主でしょ?一般家庭の、いや地方の一般企業の年末に配るようなカレンダーにそんなことして」
「僕当主だから問題ないよ?なに?心配してくれんの?」
「うちの会社のな。上層部に目つけられない?」
「なに、呪霊関係で目立つわけじゃないし。それだと僕待ち歩くだけで文句言われるよ?スカウトにナンパ。こんな弱小企業のカレンダー程度で文句言わんでしょ、そこまで暇なら引退しろよって言ってやるよ」
「名前さん、この人に言っても無駄だと思いますよ」
「そうですね、私もそう思います。ところで五条くんはどこに泊まるの?」
「ああ、車の移動になるけど旅館とってある」
「そう」
「あ、名前も泊まる?部屋とるよ?」
「いいよ、とりあえず実家だから」
「傑はどこで生活してんの?」
「本人に聞いてよ。高専の時は家の客間?使ってたけど」

子供は家では元気を持て余すので遊べそうな少し大きめの公園に行ってみたり、川沿いにある歩道を歩いてみたりと時間を潰す。
五条はこのあたりではまあまあの旅館を確保しているらしく、そこでご飯一緒に食べる?と聞かれたが名前は懇切丁寧に断った。面倒だからである。
ここの食材がどうだとか、地元だから、というよりも子供と一緒に食べるなら東京で五条に奢ってもらった方がゆっくりできるという打算からだ。

「傑にも断られたんだけど」
「夏油くんも忙しいんでしょ。ていうか、今回のこの任務絶対私じゃなくていいよね、良かったよね」
「まあ僕がねじ込んだんだし。両親にもあえてお得でしょ?交通費も高専持ちだし」
「そこまで困窮してないですっ。私明日には帰るから」
「え、なんで!?3日くらい日程取ってたよね」
「東京から連絡が来て私にお願いしたいんだって。という事で私は一足先に帰るから、子供たちよろしく」





「え、じゃあ名前明日帰るの?両親とご飯食べなくていいの?」
「いいのいいの。どうせ見合いだの東京で遊んでないでこっちに早く戻って来い、戻ったら戻ったで結婚しろ、結婚したら子供はまだか。産めば2人目はまだか。女なら男を産めないのか。ってくるのわかってんだから」

五条と子供とわかれて名前は夏油と居酒屋で食事をする。
ここでは顔なじみなのか女性店員に「あ、傑さんじゃないです…か…え、」と何人かに言われている。夏油の恋人だと思われたのだろう、いちいち否定も面倒なので何も言わずに黙っている。どうせもう(おそらく)こない店だと割り切って。

「あー…ははは、田舎って感じだね。まあ私も雌猿には辟易しているところさ」
「猿…」
「ああ、ゴメン。気にしないで」
「お客さんの娘さんとか取引先の娘さんとかお見合いの話来てるんだって?」
「なんで知ってるの」
「一応社長の娘だよ、私。」

あ、そっか。と無駄に納得した様子の夏油。
名前の両親は夏油の働いている会社の社長夫婦である。そんなの高専の時から知っていたはずなのだが、すっかり頭から抜ていたらしい。一緒に食事をしなくていいのかと聞いて来たくせに。

「お待たせしました…あの、傑さん、彼女ですか?」
「うん、そうだよ」
「違います。学校の同期で、今私の家で働いてるだけでしょ。変なこと言わないの」
「な、なんだ…」
「夏油くんモテるね、学生の時から変わらないねえ。お姉さん、そのぶん女癖良くないから気を付けた方が良いですよ」
「ちょ、名前」
「事実でしょ。毎回見かける度に違う女の子連れてたし」
「え…そ、そうなんですか」
「い、嫌だな…そんな、ははは…名前」
「変な冗談いうからでしょ」
「な、なあんだ、冗談」
「夏油くんの女癖は本当。あ、すみません、トリカラにんにく醤油1皿と、ポテト山盛り1皿、卵焼き大根おろしの出し醤油を1皿、……あとー、このお刺身盛り合わせ」
「ついでにビール追加で。名前もう1杯飲むでしょ?」
「明日帰るからいらないかな」
「あ、じゃあビールなしで、ウーロン茶2つ」



「悪いね名前を送ってもらって。遅いし泊まっておいき」
「ありがとうございます」

名前が嫌そうな顔をしたが、夏油は名前の父親の言葉にいい笑顔で頷いた。
聞けば学生の頃からの延長に近く、繁忙期などには寝床を提供しているらしい。
名前の知らない間に両親と学友が仲が良いのはなんとも言えない嫌な感じがする。名前の耳の奥で家入が「ウケる」と笑っているような気さえする。「ウケんな」と心の中で突っ込んだ。

「なんか複雑。」
「うん?」
「両親が同級生、しかも異性と仲が良い…」
「可愛がってもらってるからね、私。まあでも、猿との見合いはねえ…」
「夏油くんとこにもいってるんだっけ。私もさー言われるんだよ」
「悪気があるわけじゃないから余計に、ね」
「そうそう。この仕事も理解してないし」
「じゃ、私と付き合って防御策にしちゃう?」
「無理無理。んなことしたら夏油くんと結婚してこっち戻ってきなさいって言われるのがオチだよ。私知ってる」

あー…。という夏油。
この様子だと同じようなことを言われているのだな、と名前は察した。

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