呪術 | ナノ
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「はあああああ!!!???」

名前の姿を見た五条が腹の底から声を出した。それは五条を知らない名前がそれはそれは怯え上がる程に。
その声に名前は怯えて小さく悲鳴を漏らし、後ずさりをする程度に。

「なにこれ!?どういう事!!」
「先生、落ち着いて…名前さんビビってんじゃん」
「悠仁!どういう事か説明して。いや、伊地知か?なんで名前さん呪われてんの」
「俺がヘマして、名前さんが庇ってくれたんだ」

共同スペースで寮にいた学生たちと自己紹介をしていてたところに大男がやってきたと思ったら叫ばれ、長い脚で距離を詰め、そして名前にグイと顔を近づけていた目隠しをしたその顔。
大きいだけでも威圧的だというのに目隠し、そして白髪。
呪術師の世界は異様だが、ここまで異様な人間もなかなかいない。
ビビる名前にパンダが「恐くないぞ」というが、パンダが喋っている時点で少し恐い。

「家入先生が言うには、名前さん呪いで今身体も精神も15歳なんだって、高専1年。つか、それ以上名前さんに近付いたらセクハラで訴えるぞ」
「え、名前さん15歳なの…?」
「食いつくとこそこかよ」
「しゃけしゃけ!」
「あ、あの…」
「ん?なに??」
「…だれ、ですか?」
「……あー、そっか。名前さん15歳だもんね、僕の事知らないか。僕、五条悟。特級呪術師で高専の1年の担任だよ」
「ごじょう、先生。ですか?」
「先生!っはー!!名前さんが僕のこと先生って言った!ねえ聞いた!?名前さんが先生って!!」
「名前さん、ちょっと部屋行っててください。危ないので」
「それが良いな、おい野薔薇。私と野薔薇で名前さんの部屋行くぞ」
「了解」

騒ぐ成人男性に恐怖しつつ名前は真希と釘崎に連れられて部屋に行く。
それを確認した伏黒は玉犬を出して酷く機嫌が悪そうに五条の前に立つ。それに続くようにその場にいた男子たちが五条を囲む。

「最低ですよ先生」
「そうだよ!名前さんビビってたじゃん」
「高菜!」
「あれは悟が悪い。デカい男がデカい声だしてあのスピードで近づいたら女の子じゃなくても恐いわ」
「え、なにコレ。これ僕を糾弾してるの?心外」
「てか先生さ、もうすこし…こう、なあ、伏黒」
「紳士になれませんか」
「そうだな、悟は大人になれ。いつも名前が多目に見てくれてからアレだけど、本当今回酷いわマジで」

知らない環境に来て大男に大声だされてグイグイ来られたらトラウマだぞ。とパンダが腕組みをして頷きながら続ける。

「絶対ナナミンならそんなことしないよ」
「なんで七海…」
「確かに。七海さんなら紳士的にいくな」
「あー確かに。胸キュンだな。……そして始まるロマンス!?先輩後輩の関係だったけど今は違う!はー!!と年の差恋愛!!こうしちゃいられねえ!」
「明太子!」
「っと、そうだった悪い悪い。今は名前だな」
「少女漫画読み過ぎじゃない?」
「わかってねえな悟!ああいう年頃の女の子は年上の好きな頃なの!今の名前の性格だと絶対紳士的な七海が好みだね。悟は…まあ、良い所二人の中をかき回す役だな」
「え、そうなん?」
「ほら、漫画だと二人を揺さぶる役?いるだろ?チョッカイかけるやつ!あれだな」
「というか、居ない七海さんを巻き込まないであげてください。今は先生が名前さんに対しての態度を反省してもらわないと」
「おっと、そうだった。七海の話はまたあとな!」

ぷんぷん!と何か叱るようにオニギリの具を次々にいう狗巻にパンダは「悪かったって」と謝る。
多分ではあるがこの脱線について怒っているのだろう。彼も彼なりに名前には世話になっているし懐いてもいる。普段なら楽しい雑談でも今はちょっと許せないらしい。

「で、名前さんの状況は僕が見るに長くても一週間くらいって感じだけど」
「家入先生も同じ事言ってたらしい」
「ま、特に悪い状態じゃなくて良かったよ。今日の任務にそんな呪霊の情報あった?」
「なかった。でも俺が油断したから名前さんに迷惑かかったし…」
「あー気にしない気にしない。名前さんだって気にしてないだろうし。まあでもアレは厄介だな」
「…なにか問題が?」
「いや、名前さん上から嫌われてるってか、好かれてないから。高専に居れば問題ないだろうけど…任務は無理だな」
「硝子がその辺どうにかするだろ、補助監督使って。つかあの名前に仕事させんな、可哀想だろ」
「しゃけ!………こんぶ?」
「ん?」
「棘が『名前は戻るまで高専でなにするんだ?』って」
「そうだな…今15歳って言ってたから、僕のクラスに入れちゃお!」

善は急げってね!と共同スペースから走り出る五条。
残された男子たちは
「え、今クラスに入れるって言った?」
「え、名前さんを?」
「1年の、クラスに…?」
「た、高菜??」
「一週間で戻るのに?」
とグルグルと話を巡らせる。

「名前さん、俺らと、机、並べんの?」
「先生は、そのつもりらしい…けど」
「なんか危ない気がする」
「しゃけ!!」
「恵と悠仁は急いで女子寮行って野薔薇と真希に報告!俺と棘はまさみちのトコ行ってくる!!」
「「応」」

パンダの号令に男子は二手に分かれる。
女子寮に男子が堂々と入るのは憚られるが、今はそれどころではないし、何よりあの二人もこの状況では大目にみるだろう。
普段であれば玉犬辺りを行かせればいいが、その時間も惜しく感じる。
バタバタと寮内を走り人の気配がする部屋にたどり着いてドンドンとドアを叩くと案の定中から「うるせぇぞ!!」と女子とは思えない怒声が飛んできた。

「つかなんでお前ら来てんだよ!ここ神聖な女子寮だぞフザケンナ」
「大変なんだよ、五条先生名前さんを1年のクラスに入れるって」
「あ?」
「なんで名前さんを悟のクラスに入れんだよ。一週間でも戻るんだろ」
「私御三家の人のクラスに入るの?凄いね」
「いや、名前さんは別に入らなくても…」

一人その状況をわかっていない名前は「だって御三家でしょ?特級でしょ?凄いんじゃない?」と笑っている。
もしかしたら呪術師をしていなければこんなやんわりとした性格で過ごしていたのかもしれないと伏黒は思ったが、今はそんな「もしかしたら」を考えてる場合ではない。
何も知らない女子が毒牙にかかるかもしれないのを黙って見ているわけにはいかないのだ。

「いいですか名前さん、今のアナタは先生がどんな人か記憶にないから…そんな悠長な事言っていますけど、あの人は…」
「御三家のひとつの五条家の人で、六眼持ちでしょ?前に先生に教えてもらったからそれくらいなら知ってるよ。来年来るから気をつけろって、目をつけられるなって」
「先生って誰ですか?」
「夜蛾先生」
「学長ナイス」
「夜蛾先生、学長なの?へー!」
「ちなみにパンダ作った人間だぞ」
「パンダパパ!先生可愛いの作るの好きだって言ったし、そうなんだ」
「って!五条先生だよ!」
「ああ、そうだな。でもあの悟が言いだして思い通りにならなかった事なんて名前さんが潰した話くらいしか私は知らんぞ?」
「名前さんやべえ人じゃん」
「名前さんは先生のブレーキかけらる人なんだよ」

伏黒の最後の言葉に名前に注目が集まる。
何もわかっていない名前はただ頭を傾げて「ん?」と不思議そうにしていた。

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