呪術 | ナノ
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五条くん
『百鬼夜行』ってわかる?

妖怪の行列か?

違う。
呪霊の百鬼夜行。わかるんでしょ。

メールのやり取りの一部。
名前からの『百鬼夜行』というワードに五条は心臓がどきりと飛び跳ねた。
名前が思い出した、いや、知っている。という事は仲間だ、と。
唐突に頭に入ってきた、おそらくこれから10年先の出来事。
とある年の10月31日に小さな箱に閉じ込められるまでの出来事。
ここで夏油傑にあの惨事を回避させなければ夏油傑という人間は壊れてしまう。そうしなければ百鬼夜行が執り行われ、五条自身が夏油を殺す未来が来てしまう。そしてその死体が呪詛師に使われて、己を陥れてしまう。
自分が死ぬのも封印されるのも許せても、親友たる夏油の死体を利用されるのは許しがたい。回避するには、夏油が呪詛師になるをまず阻止しなければ。
そう思い立って名前の家で家業を手伝わせるというという事を思いつき、五条は名前を言いくるめて夏油を名前の実家に送った。
ここでは自分だけが異質だという自覚はあり、巻き込んだ名前には悪いと思ったが結果的にはオーライのはずだった。

名前が補助監督が運転する車から降りるのを待ち、名前の手を掴んで人があまり来ない場所に移動する。
確認しなければ、確認して味方であるかを知らねばならぬと言わんばかりに。

「名前、オマエ、先の事わかるの?」
「…百鬼夜行、わかるのはそこまで」
「じゃあ憂太もわかる?」
「確か、特級の?」
「そう!わかるんだ!名前、わかるんだ!!」
「ご、五条くん?」
「じゃあ僕が傑をここから遠ざけた理由わかるよね、わかってるよね!」
「う、うん…五条くん、しー!人が来るよ」
「ごめんごめん。何で来た?」
「えっと、優抱っこして、鼻チューしたら、バッチっときた?」
「傑と鼻チューしたの?」
「猫の!猫の優だからね!」
「ふうん?まあいいや、仲間は多い方がいいからね。ここから名前は僕の共犯だ」
「五条くん、僕って言うの?」
「何?こっちの方がこれからの僕にはなじみあるでしょ?名前とは“僕”の方が長いわけだし」
「んー…まあ、そう、だけど」

やった!と言ってから名前を抱きしめる五条。
体格差や色々あって名前は抵抗するが、勝てるはずもない。
名前が抵抗し続けてやっと満足したらしい五条は名前を開放する。

「傑の様子どうだった?怒ってた?」
「目立って怒ってる感じはなかったけど…」
「回復すると思う?」
「んー…回復を願うけど、私の家族との折り合いかな…一般家庭だし」
「傑も一般家庭出身だからそのあたりはまあ許容範囲だろ」
「村壊滅させておいて?」
「まだ、壊滅はさせてない。記憶が正しかったら1、2週間後にその任務がくる。それを僕と名前で向かう」
「私まだ学生だよ?」
「僕も学生だよ名前の1級の記憶あるだろ?それが終われば1級に推薦するから。今したら同じ任務に当たれない」
「でも…私たち2人で出来るの?」
「出来るかどうじゃないんだよ、やるんだよ」
「う、うわあ…」

にい。と笑う白い悪魔、と名前は思った。
名前が実家へ日帰りしてもう時間は遅い。ご機嫌な五条とは反対に名前はどんよりとして元気がない。

「あとで猫の料金払うから請求書だしてね」
「いいよ…私の猫だし」
「傑の面倒見てくれてんだろ」
「お互い様だよ。それより私お腹空いたから」
「お!じゃあ僕の保存食分けてあげる」
「えええ…」
「なんだよ」
「アイスもつけて」
「…しょーがないなー!」

上機嫌になって共同スペースに名前を待たせて持っていた保存食とお菓子とアイスをもって名前に渡す。
ちょうどいた家入が「どういう風の吹き回しだお前…」とかなりいぶかし気にしていたが、「傑のお守りのおだちん」と言えば納得された。
家入なりに夏油を心配していたのだろう。それに付き合わされた名前には同情するし、またそんな「おだちん」だなどという五条に驚いただけらしい。

「あ、これ高級カップ麺じゃん」
「お菓子もある。いいの?」
「いいよいいよ」
「なんだ五条、お前上機嫌じゃん」
「そ?」
「キッショ。名前、さっさと貰って部屋戻れ。なんか企んでんぞコイツ」
「企んでねーよ、なあ名前」
「ん…どう、だろうね」
「あ?」
「五条くん、頂きます」

それから名前はカップ麺にお湯を入れて、しばらく待ってから手を合わせて食べ始めた。
家入に「猫居ないけど」と言われれば名前「実家の夏油くんのお世話係に任命してきた」と真面目に言うので家入がゲラゲラと笑う。
猫に世話をされる夏油を思ったのか、名前の冗談が面白かったのかは分からない。
一通り笑ってすっきりしたのか、「寝よ」と早々に戻っていった。
それから少し五条と話してから2人とも共同スペースを後にした。
それから数日すると五条が言っていた通り、例の村任務が五条に入り、同行者として名前が任命された。

「特級いるなら私要らなくない?」
「要るよ。僕にはわからない何がかがあって、それが傑を狂わせたんだ」
「五条くんにわからないの、私にわかる?」
「わかるよ。僕は全知全能じゃない、誰かに補ってもらわなくちゃ」

ばちん。と長いまつ毛がウインクをして、風が吹いた気がした。

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