呪術 | ナノ
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※スピネル
※高専


「お前ん家、家業してるよな」
「へ…え、あ…うん…してる、けど…」

寮の外で名前がスグルをブラッシングしている時だった。
晴れているのに急に陰ったと思えば五条の声上から降ってきたのだ。
優は不機嫌そうに五条を見上げ、名前も恐る恐るその問いに答えた。

「傑の事、どう思う」
「ど、どう…?」
「最近あんまよくなさそうだろ」
「体調の面?…うん、なんか、よくないみたいだよね、顔色あんまりよくないし…」
「名前ん家、こっから遠いよな」
「うん…まあ、陸続きだけど、それなりに?」
「呪霊多いか?」
「えー…東京に比べたら、少ない、かな…?」
「で、名前ん家、バイト募集してる?」
「ば、バイト?えっと…まあ、あれば、嬉しいって感じかな」
「そこに傑入れられねえ?」

へえ!?と素っ頓狂な声が出る。
五条の言うスグルとは名前の猫のスグルではない。
夏油傑、特級呪術師、呪霊操術、同じく特級の五条の親友。

「な、なん、で?」
「傑呪術師に疲れてそうだから。気分転換だよ、気分転換」
「で、でも…特級って、私達より忙しいんでしょ?五条くんだって、戻ったの、結構、あれだし」
「いいんだよ、僕が動くから」
「ぼ、ぼく…?」
「あ、俺。俺が動くから、傑の分までちょっと頑張ればいいんだよ」
「え…ええ?な、なんで?」

スグルをブラッシングしていた手は完全に止まり、にゃーと催促をされるが、それよりも五条の圧が強い。
戸惑う名前にスグルが前足でちょいちょいと手を触るが、ちらりと様子を見るくらいしかできない。

「でも、先生とか」
「俺が話す、傑の分まで任務をする」
「それじゃ五条くん…」
「いいんだよ、反転術式があるから」
「で、でも…それじゃ、」
「で?お前ん家、傑をバイトに雇えんの?どうなの」
「聞いてみないと…まあ、夏油くんみたいに体力と力がある人は、喜ばれると思うけど…」
「じゃあ決まり、名前は実家に聞けよな。俺は夜蛾センに要望通すからよ」
「でも、夏油くんが、どういうか…」
「それは俺が丸め込む」
「丸め、込んじゃうんだ…」

じゃあ連絡しろよな。と五条が名前の頭を大きな手でわしわしと撫でてから担任のところまで行くのだろう、長い脚でさっさと行ってしまった。

「………電話、してもいい?」

にー。と猫が鳴く。
名前はポケットに入れてあった携帯を取り出して実家に電話を掛けた。


「あ、五条くん」
「どうだった」
「一応、受け入れてくれるって言ってたけど…夏油くん、来るの?」
「行かせる。つーことで、名前も口裏合わせろ、な?」
「く、口裏…?え?」
「名前の実家で人手が足りないってことにしておけってこと」
「え、家の不備なの?」
「そういうテイだよ、体。勿論名前の実家には傑が学業にちょっと疲れたってことにして、受け入れてもらうんだよ。傑には手が足りなかったって言ってもらってさ」
「んー…まあ、そういう、体、ね?」
「話が早くて助かる。こっちは夜蛾センとの話も終わったから、次は傑だな」
「……夏油くん、行かないと思うよ?」

やってみる前から諦めんなよ。と再度五条は名前の頭を撫でてから小突く。
それから五条は名前の肩を抱き、自分のポケットから携帯を出してどこかに電話を掛ける。夏油だろうか。
数回のコールの後、『もしもし?』と夏油の声が聞こえた。

「あ、傑?今暇か?」
『暇ではないけど…どうしたの』
「ちょっと共同スペース来いよ、話があるんだ」
『…電話じゃダメなの?』
「名前もいるから3人で話したい」
『名前?……なんで、名前も?』
「いいから来いよ」

プツン。と切られた電話。
じゃあ行くぞ。と五条は名前と手を引っ張って寮の共同スペースに脚を向ける。
長い脚と名前の短い脚では歩幅が違う。と小走りになるかと思えば五条は名前の歩幅に合わせてくれたようで転ぶことはなかった。
共同スペースに入ると、2人より早く来たのだろう、驚いた顔をした夏油が2人を見ていた。

「え…なに?2人付き合ってるの?」
「付き合ってないよ!」
「なー傑。お前、名前の実家でバイトしねえ?」
「…は?」
「名前の実家、ちょっと人手不足で困ってんだって。な」
「へ!?あ、う、うん!そ、そうんだ…夏油くん、力持ちだし、社交的だし、お手伝い、してもらえたら嬉しいなーって………」

あ、あは、あははは。とちょっと明後日の方向を向いて笑う名前。
そんな名前の背中をドンと叩く五条。真面目にしろと言いたいのだろう。
名前は小さく「ご、ごめん」と謝る。

「名前の?どうして?任務があるだろ?その様子だと悟が名前に無理言ったんだろ」
「ちげーよ。名前から相談されたの」
「え」
「な、名前?」
「へ、あ、う、うん!そ、そうだなー。モドッテ コナイカ イワレテテ」
「………」
「で、俺より傑の方がいいだろ。俺と違って黒い髪に社交的、力だってある」
「任務があるから無理だよ、ごめんね名前」
「それは俺がする。あと名前」
「え、私!?」
「つーか、もう夜蛾センに話し通したんだわ。つーことで、傑は名前の実家の手伝いに行ってもらう。送り迎えは名前な」
「は?」
「え、ちょ、そんな」
「明日傑は名前と一緒に名前の実家行けよ、1ヶ月くらい。そしたらその顔も少しはマシになるだろ」
「…どういう意味だ悟」
「今の傑精神状態は異常だ、だから少し呪術師から離れろ」
「命令か」
「違う。お願いだ。そんな姿の傑は見たくない」
「だから私に消えろというのか!!名前まで使って!!」
「違う。このままじゃ傑が疲弊する。休んでほしい。でも、俺の近くじゃ辛いだろ、だから名前に頼んだ。嘘ついて悪い。名前に頼んで名前の実家でバイトできるようにしてもらったんだ」
「…私にはもう用がないっていうのか」
「違う。傑と俺は親友だから元気になってほしい。時間が必要なこともあるだろ」
「私は特級だぞ!?それが、今更…」
「九十九さん思い出せよ、あの人任務なんて放り出してフラフラしてんぞ?」
「…っ!」
「ってことで、名前、傑の事よろしく。新幹線のチケットの準備してやるから傑の事送ってくれよ。あ、あとお土産よろしく」

ひらひらと好き勝手事をいって、手を振る五条。
あまりの唐突さと、いつもの五条ではない感じ。
共同スペースから五条が出てき、残された名前はまだ怒りが収まらない夏油を伺いみる。

「げ、夏油…くん」
「…ごめん、変なことに巻き込んで」
「う、ううん。あの、ね、実家、人手が欲しいのは嘘じゃないよ。でも、私にまでは言ってこないだけで。夏油くんが来てくれると助かるのは、嘘じゃないの」
「うん…」
「ど、どうする?」
「なにが?」
「行く?行かないなら私、実家に連絡するし…」
「……行くよ、仕方がない。巻き込まれた君の実家にも申し訳ないし」
「…ん。わかった。じゃあ、明日、一緒に行こうか」
「そう、だね……」

じゃあ、準備があるよね。私もしなくちゃ。と名前が言うのを見て、夏油が笑った。

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