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※芸能ぱろ

『祓本夏油お泊り愛!』

ででーん。という音が付きそうなタイトルが週刊誌にドデカく書かれて表紙を飾っている。
借りているマンションに安い記者が張り込んでいたのだろう。男女二人が並んでエントランスに入っていく姿が写真に撮られている。
祓ったれ本舗、通称・祓本。
高身長の白黒男性のお笑いコンビ。若手の頃からめきめきと頭角を現し、J-1では初登場でチャンピオン。今やテレビで見ない日はない、飛ぶ鳥を落とす勢いのお笑いコンビ。
ラジオを好調、出演CMはSNSでの話題は勿論、コラボ商品は飛ぶように売れている。

「えーっと、年末深夜、祓本の夏油傑と並ぶ黒髪の女性が夏油のマンションに二人仲良く入っていく姿を激写!女性は女優の○○によく似た女性で、」
「はあ?もっと美人だろ。良く見ろよ猿」
「口悪いぞ傑」
「おっと、失礼。」

所属事務所の一角でケタケタと笑いながら読み上げる夏油の相方の五条悟。言えば白い方である。
週刊誌によくある表現ではあるが、笑い転げながらひーひー言って遊んでいる。それを聞きながら相方の夏油傑、黒い方も笑いをこらえて、たまに怒ったりしている。

「てか、恋人って……かわいそー。」
「この週刊誌の記者も馬鹿だな、私がそんな簡単に撮られるわけないだろうに」
「冥さんにお願いするわけ?」
「まさか。する必要なんてないだろ」
「まあそうか」

だって恋人じゃないし。と二人の声が揃う。
その女性は夏油傑本人の姉であり、2人の後輩で俳優の七海建人のマネージャーである。
その日は事務所の忘年会であり、時間が時間だからと姉の名前を自宅に泊めただけの事。格好が格好だけにそれがまるで恋人の様に見えるが、実際は違う。
言えば夏油傑は姉と仲が良い。ついでに相方の五条悟も名前と仲が良い。
それこそ同じ事務所でマネージャー業をしているのだから自分たちにつけばいいのにと何度も何度も話したが名前は全く取り合わない。それに何故か名前は後輩の七海のマネージャーをしているのだから意味が解らない。

「ま、どうせ顔もわからないし芸能人でもないんだからすーぐに消えんだろ」
「そうだね。姉さんに迷惑かかると悪いし」
「これ、名前さんが僕らのマネだったら面倒な事になってたよな」
「それこそ『違いますマネージャーです』なんて言ったら『祓本夏油、マネージャーに手を出す!』なんて書かれそうだね」
「ネタばらししたら傑のねーちゃんだもんな」

あひゃひゃひゃ。と品の無い笑い声が聞こえる。他に事務所にいた人間は祓い本ネタに頭を抱え、撮られた名前には同情をした。幸い2人言う様に顔はわからない状態だ。それに雑誌が3流もいいところのゴシップ。こんな雑誌を信じる人間はいないだろうという程度なのだ。

「下品な笑いが廊下聞こえていますよ」
「あれ?姉さんは?」
「今社長と話しています。雑誌がなんとか、と言っていましたが」
「あー、これだろ?」
「……なんですこの雑誌」
「この前傑が名前さん泊めた時撮られたんだよ」
「ああ…それで。」

五条に手渡された雑誌に目を通す七海建人。
言えばその写真を撮られた女性が担当する男性俳優。彼もまた人気俳優の一人でドラマや映画、舞台。最近では番宣でバラエティにも出ている。
雑誌の写真には大柄の男性、夏油傑はすぐわかるが一緒に居る女性は確かに名前であるとわかるのは事務所関係者位だろう。あの夏油傑がここまで近くによる女性は数が圧倒的に少ないからである。幼い頃より面倒を見ている双子、姉である名前。それ以外で自分から寄る女性は圧倒的に少なく、本人曰く「女が寄ってくるだけ」である。

「お待たせ七海くん、見て見て!って、あれ?持ってる」
「やあ姉さん」
「噂の恋人かっこ仮さーん。お疲れ」
「社長に呼ばれたから何かと思ったら傑と撮られてた!私女優の○○さんに似てるって!あとで買わなくっちゃ!」
「姉さんはそんな女優よりも綺麗だよ」
「名前さん、そんな事で喜ばないでください。貴女私のマネージャーなんですよ」
「社長に『いくら夜遅かったとはいえ、すまなかった』って謝れられちゃった」
「美々子と菜々子喜んでたけどね、朝。名前さんがいるー!って」
「まあすぐ仕事だったわけだけど」

記念だよね。と笑っている当人を横に、七海は大きな溜息をつく。
名前という人間はしっかりして信頼がおける人間である。ただ夏油傑の姉という難点だけがあるが。
社長である夜蛾も一時期名前を祓い本のマネージャーに着けていたが、あらぬ噂で名前を七海に変更した。まああまりに距離が近いと変に噂されても困るから、である。
祓い本2人が同じ高校であるのは公に公開している情報であり、そして後輩の七海も公開している。今現在プロスポーツ選手として活躍している灰原雄もゆくゆくはこの事務所で芸能活動をするつもりでいる。
そして名前もその高校出身であり、この事務所に所属している彼らとは仲が良い。同性である女性俳優の家入硝子や庵歌姫とも当然仲が良い。
事務所外でわざわざ「私は夏油傑の姉です!」「夏油名前の弟です!」とアピールする必要はなく、変に噂されるのも面倒だと担当をかえたというわけだ。

「っと、七海くん。今撮影しているドラマが映画化されることになりました」
「おめでとう七海」
「ネタにしてやろ」
「名前さん…それ雑誌より先に言うべきことでしょう?」
「ごめーん、雑誌が嬉しくて。あと今日急遽取材がはいったので、これから出発です」
「忙しいね七海も姉さんも」
「傑と五条くんは伊地知くんがそろそろ来るから準備してあげてね、現場行くって」
「伊地知……」
「すっげ、名前さん使うのアイツ」
「伊地知くんをいじめないで。2人が忙しいと伊地知くんも忙しいの。七海くん、出発しよう、車出すから」
「いいなー七海。名前さんの運転で」
「伊地知くんの方が上手でしょ」
「わかってないなー。」
「名前さん、行きましょう」

あんまり伊地知くん困らせないで。と言いながら名前は七海と一緒に歩いて行く。
言えば名前の方が祓本のマネージャーをして方が扱いやすいのは社長もわかっている。ただシスコン気味の弟が面倒なのだ、と続くが。


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