呪術 | ナノ
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「今度は夏油くん?」
「あ、名前。今度はって?」
「この前は五条くんが来たよ」

名前が任務に向かう前に補助監督たちのいる部屋に行けば見慣れた長い黒髪の長身の男性。
日本人の成人男性の平均よりも抜きんでた身長と顔立ち、話術で女性補助監督の中心にいるから余計に目立つ。

「今日はヨロシク」
「ん?」
「今日は私と名前が一緒の任務だよ」
「げえ。大型なの?」
「そんな感じ。名前には帳をお願いしたいんだ」
「帳なら私がここでは一番なんですけど…」
「そうなの?でも私の知る限りで名前以上に結界術が上手い人はいないかな。名前が居ない時に頼もうかな」
「夏油特級呪術師と苗字1級呪術師は仲が良いんですね」
「同期だからね。個人的には、もっと親しい関係になりたいけど」
「夏油くんの学生時代の写真見たいくありません?良ければ送りますよ」
「ごめん、謝るからやめて!」
「担任に叱られて正座してるの、寮に他校の女子を連れ込んで叱られてるの、五条くんとケンカして妖怪大戦争して手をつないで反省しろって言われてるの」
「全部𠮟れてるやつ!なんで名前が持ってるの!?」
「硝子がくれた。クズを扱うのに使えって」
「硝子…!」
「夏油は五条よりやっかいだからな、周りの同性のためだ。ってね。あ、毎回違う女の子の写真もあるよ?」

同世代から年上のお姉さんまで。と名前はさらりという。
名前自身ここの女性陣が望んで夏油と関係を結ぶのはいいが、痛い目を見るのは正直可哀想だと思う。なんせクズだ。知らない無関係であれば全く問題ない、だって名前の知らない人に名前が心を砕く必要がないからだ。

「仲が、いいんですね…」
「よくはないけど、夏油くんのせいでここの女性陣が泣くことになるのが嫌なだけ。数少ない女性がさらに減るのが嫌。クズのせいで要らない涙を流させたくない確固たる思いからです。非呪術師を猿って言って嫌ってる男がまっとうに人を幸せにできるとは到底思えないので」

あ…という女性陣の声。
そしてクリティカルヒットを受けた夏油。
今度は逆に「げ、夏油さんにもいいところはあるんじゃ…?」「そ、そうそう…」「ほら、この前いらした五条特級呪術師と仲が良いとか?」「類友ですよ?クズの」「そ、そのへんにしておきましょう?ね?苗字さん」(夏油特級呪術師涙目…)とフォローになっている始末。
まあこれも夏油の手口だと名前はわかっているので、そのくらいにしておく。
一応名前は夏油はクズである、というのは周知させたので名前の同期としての役目は終えたはず。

「名前…もう、任務の話、しようか」
「あ、うん。担当の補助監督は?」
「私です!」
「じゃあ別室で打ち合わせしようか」

うん。と頷き補助監督を交えて打ち合わせを開始する。
当初2級5体程度だと思われていた現場に2級呪術師が2人派遣されたが実際は1級だった、という事で名前の任務になる予定だったが夏油がその呪霊が欲しいと目に留まったらしい。

「1級なのに?」
「土地神クラスらしい」
「ああ、そういうこと。ついでに5体だろう?名前に封じてもらえれば私も楽だし、本当に5体かも怪しい」
「呪霊操術」
「帳の範囲が欲しいのさ。祓い忘れなんて特級の恥だろ?」
「ふーん?で、帳はどの程度必要なの?」
「とりあえず直径1Kmか2Kmあれば余裕だろ」
「2Km!?そ、そんなの無理です!!」
「君にはね、でも名前なら出来るんだよ」
「夏油くんの無茶ブリで5Kmやったことあるから、そのくらいなら余裕」
「ご…!?」
「補助監督じゃ無理でしょ?」
「は、はい……」
「私呪術師できなくなったら補助監督なろうかな」
「じゃあ私の専属になって?」
「やっぱ辞めた。出発はいつ?」
「へ、あ…えっと、あと15分ほどしたら出発をと思っています」

それから各自準備をして駐車場に集まり、現地へ赴く。
道中は夏油と補助監督が主に喋り、時たま名前が突っ込んだり話を振られたりして時間を潰す。
名前はわかっている。女性の大半は夏油に騙されることを。名前はだから忠告したし、そのうえで騙されるならばもう自己責任だ。
時たまうんうんと頷いて当たり障りなく過ごした。
現場に到着し、名前は呪具を装備して補助監督がいる地点を帳の外側と規定して帳を降ろす。
降ろしてしまえば中は呪霊の巣窟、調査書以上に呪霊が居るのは範囲が大きいからだろう。雑魚呪霊は夏油の呪霊で一掃しながら本命を探す。
暫く探していれば目的の呪霊が調査書通りに5体、それは間違いはなかった。

「土地神って嫌なんだよね…」
「苦戦したことあった?」
「灰原くん思い出して」
「ああ…」
「それで?1体ずつシュルシュルするの?1体だけ?」
「5体全部欲しいな。4体足止めしてくれる?」
「了解」
「後でタピオカ買ってあげるよ」
「いらないなあ」

あはは。と笑いながら4体を結界内に閉じ込めて動きを封じる。その隙に夏油は呪具である程度弱らせて1体、次の1体と順に取り込むための呪霊玉を作っていく。
5つ作り終えると実に満足そうにしている。
補助監督の元に戻る道中にそれをごくりと飲み込み、うえ。と小さくうめき声をあげて取り込み終える。

「この姿見た女性陣はどう思うんだろう…」
「ん?」
「夏油くんの、その取り込み方…今でも慣れないし」
「え?なんで」
「なんか…怖い…」
「怖いの?」
「うん。あんな大きいの一口でしょ?喉痛そう…」
「味も最悪だよ」
「うわぁ…」

くん。と名前が指を動かすと帳が上がる。

「わ、え…?お、お疲れさまです!!」
「お疲れ様。無事終わりました」
「名前のおかげでスムーズだったよ、名前がこっちにいてくれて助かったよ」
「なにが助かった、だよ。連行するくせに」
「だって名前だけじゃないか、呪霊をああやって封じれるの」
「便利呪霊いないの?」
「あ、あの!分校までお送りします!」

それから分校に戻り、本日の任務は終了となった。
夏油が東京に戻るのに送るついでにご飯をご馳走してくれるというので名前は喜んで運転手を買って出る。女性補助監督が立候補をしたそうにしていたが、任務の関係でそれもかなわなかったのだろう。
羨ましそうな視線を感じたが名前スルーして鍵を借りて駐車場に向かった。

「夏油くんも五条くんも心配して来てくれたの?」
「うん?」
「五条くんがさ、来た時?七海くんとケンカしたのかって聞かれてさ」
「あー…まあ、うん。学長が長期出張出さないと思ってね」

車に乗り込み、名前はエンジンをかける。
前回は五条が運転したが今回は送るという名目上名前が運転をする。
後部座席に乗るかと思えば助手席に乗る。背の高い夏油が窮屈そうなのがなんだか面白い。
東京では体格のいい特級専用と言っていいほどの車があるが、ここにはない。あるのは御三家が来た時用のもので、特級と言えど貸し出してはくれない。

「ケンカしたの?名前らしくないね」
「ケンカしてないよ。ちょっと…変な雰囲気、作っちゃって」
「エッチな?」
「違うよ!」
「七海とのエッチはどう?気持ちいい?」
「セクハラ反対!」
「七海のって、大きい?ちゃんと入った?」
「降りて呪霊で移動してくれない?」
「ははは、ゴメンゴメン。冗談だよ」
「過ぎるんだよ。七海くんにもその話振らないでよね」
「ね、まだ七海くんなの?七海くんでいいの?」
「…だめ?」
「名前だって七海なのに。私まだ希望があると思うよ」
「希望?なんの?」
「言わないとわからない?かわいいね名前」
「あ、なんか嫌な感じがするから結構です、やめてください。」
「つれないなぁ」

だからクズっていわれるんだよ。と運転しながら名前は悪態をついた。

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