呪術 | ナノ
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「おい七海、名前束縛してんじゃねえよ」
「…はい?」
「いやあね、結婚当初の同期の飲み会には出てくれていたのに最近出てくれないんだよ名前。私も悟も寂しくてね…」

ああ。と七海は小さく納得した。
この2人が現在進行形で七海の伴侶を狙っていることが分かったこともあるが、名前にそれとなく「私はそういうのを好みませんが、名前さんが参加したいのであれば止めません」となかなかズルい言い方で伝えたのだ。
それを聞いた名前は頷き、それからはそういう誘いには乗らなくなっている。
しかしそれを面白くないと思うのがこの2人でる。

「結婚した女性に対しての態度ではないでしょう」
「僕認めてないし」
「私だって認めてない。でも籍は入ってるんだよね…略奪もいいよね」
「よくありません」
「飲み会に参加しないで2人でイチャイチャしてるんだろ!」
「名前に上に乗ってもらった?感度はどう?コスプレとかするの?玩具は?」
「セクハラですよ、やめてください」

しっし。とあっちへ行ってくれと言わんばかりに迷惑そうにする。実際とても迷惑である。
こんな堂々とセクハラと後輩の嫌がらせをしてくるのだからクズである。
名前が居ても堂々とするだろう、特に五条は。夏油の方は猫を被る可能性が高い。
特級がクズ、同期である家入が常識があるのでまだマシではある。この2人のストッパーになってくれるからだ。
生憎彼女は医務室勤務なので普段呪術師が居る場所にはいないのが難点ではある。

「夏油く…ん?」
「なに?名前」
「今度の任務なんだけど、どうしたの?七海くん」
「今セクハラを受けていました」
「ちょっと、私の可愛い七海くんをイジメないでもらえます?」
「イジメてないよ。どちらかと言えばこっちがいじめられてるよ…」
「七海くんはそんなことしないでしょ」
「僕から名前を奪った」
「私から名前を奪った」
「…うん?」
「名前さんの事が前からお好きだったそうですよ」
「へーそっか。で、その任務私も同行だったんだけど、その前に任務が入ったので現地集合になったから」
「ああ、大きいやつね。了解」
「つーか、なんでまだ名前は七海の事『七海くん』なの?僕ワンチャンあるってこと?」
「職場、旧姓使ってる。ちなみに私は猫ちゃん派。プライベートでは名前で呼ぶ、練習をしている」

いえい。と意味のないブイサイン。
名前を呼ぶ練習というあたりで色々察するし惚気られたのは確実だろう。
心ナシか七海が満足げにしているように見えるのは間違いない。今まで散々目の前のクズである先輩に嫌味を言われ続けていたのだ。
名前本人から惚気ととられてもおかしくない言葉がでれば、2人は黙るしかない。
しかも告白を今もスルーしたのだ。

「………最近付き合い悪いじゃん名前」
「七海に束縛されてない?」
「されてないよ?普通」
「同期の飲み会だって」
「五条くんか夏油くんの部屋で飲むやつでしょ?一応結婚したし…ねえ」
「やだー!名前とアイス食べたい!」
「名前の口の悪いの味わいたいー!」
「じゃあ私資料渡したから帰るね」
「え?」
「帰るの?最近帰るの早くない?呪術師辞めるの?」
「今のところ辞める予定はないよ。学長のご厚意です、七海くんももうすぐ上がりだし」

ぐりん。と同時に七海を見る2人。
お前…
お前…
と声にならない呪詛の様な念の様な何かが。
別段おかしいこともないだろう。上司が部下結婚を喜び、早く帰りなさいという厚意。
まして教え子である。夜蛾学長だって嬉しくないはずはない。

「名前って、七海の事好きなの」
「七海で妥協したんじゃない?私たちに言ってごらん」
「うわ、酷い。どうしてそんなこと言うの」
「だって付き合ってないじゃん」
「2人には関係ないでしょ。七海くんをイジメないで、セクハラしないで」
「じゃあ名前にセクハラしていい?」
「いいわけないでしょう?馬鹿じゃないですか」
「うるせー!僕の名前!!」
「私の名前!」
「2人のじゃありません。私は私のです」
「じゃあ明日傑の部屋で飲み会するから来て!」
「不参加。七海くんが拗ねるので」
「七海!名前に参加していいよって言いな、今すぐ」
「嫌です。拗ねます。」
「贔屓だ!」
「好きな相手が嫌がることをしないだけ。以上!じゃあね」
「うわー名前ー!」
「帰って来てよー!」

うわーん。と騒ぐ成人男性、2メートル近い躯体をへなへなと織り込んで喚く姿の地獄。
七海はあまりの惨状に引いたし、それをまったく無視して姿を消した名前のメンタルの強さを改めて知った。

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