呪術 | ナノ
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「七海くん超カッコいい。王子様みたい。まあ王子様なんて物語でしか知らないけど」
「七海くん優しい。世の中こんな顔が良くて優しい人間がいるのかと思ったよね
「帰ってもイケメン、朝起きてもイケメン、イケメンに休みはないね。さすがイケメン」
「朝日よりも眩しい。逆に目が疲れる」
「七海くんと結婚?いや、何かの間違いでしょ。確実に」
「………なにが言いたいんですか貴方がた」
「名前にさ、七海と結婚生活どう?って聞いたら帰ってきた言葉集」
「これさ、どれも私でもよくない?」
「馬鹿、僕だよ」
「時折ディスリが入っているのはいいんですか」
「そこが名前じゃないか」
「七海は学生時代の猫被りが好きなの?あれも可愛いけど、やっぱりこのくらい毒づいてないと」
「わかる。学生の時の名前も可愛いけど、こう遠慮がない感じが心を許してくれたって感じがある」

「「な」」と意気投合をする先輩2人。
な。ではない。
七海がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいれば、この2人は両サイドを陣取りいきなり話し出すから何かと思えば恨み節だ。
この2人は学生時代から名前を玩具に用に扱っていたのは知っている。弱い者いじめ、というより最近聞くようになったキュートアグレッションに近いのだろう。可愛いからいじりたい。かまいたい。そんな感じだろうが当の本人にしてみればいい迷惑だ。
学生の時はよく「私で遊ばないで」と控えめに抵抗をしているのを見たことはあったが、まああの2人に対抗することは女子には無理だっただろう。
構って「あげている」というつもりだろうが、名前からしてみればほとんど嫌なものだっただろう。

「羨ましいんですか」
「羨ましいね、実に羨ましい」
「なんで七海なんだよ」
「そう思うならもっと優しくしておけばよかったじゃないですか」
「私優しくしてたけど?」
「僕だって」
「学生時代を思い出せば名前さんからしたら苦行でしょうね。2人からそんなこと言われても名前さんであれば笑ってスルーしますよ」
「されたよ」
「え」
「されてんだよ、お前知ってて言ってんだろ」
「…………してたんですか」

じとー。という擬音語が付きそうなくらいの2人の目線。片方はアイマスクで隠れているとはいえ、それでもその雰囲気は十分醸し出している。
七海自身、まさか2人が本気でそうだとは思っていなかったのだ。
いえば2人からすれば好きだった女性をいきなり横から掻っ攫った憎き相手、ということだろう。そうであれば突っかかるのもわかる。今まではただ玩具を取られた感覚なのだろうと思っていた。

「……………それは、知りません、でした」
「まあ私達は本気にされなかったんだけどね」
「罰ゲームとか賭けだと思われてたんだよ…本気で口説こうって時に七海、お前だよ、お前なんだよ…なんなんだよお前…」
「まあ私もお2人同様に本気にされなかったので翌早朝にキャリーケース引き下げて伺いました」
「…君、意外と行動派だな……」
「前日の飲み会でプロポーズしましたらね。このまま勢いで行かないと」
「七海、お前名前の事好きだったわけ?」
「ええ、そうですね」
「いつから?私学生の時から」
「僕も」
「え、悟本気?君あの態度で?」
「それは夏油さんも同じでしょう?」
「え!?」
「何かと名前さんのこと小馬鹿にしていましたよね」
「し、してないよ!?」
「あー、してたしてた」
「嘘ぉ!?」

三者三様、とは言わないが2人の場合名前にはいい思い出というより良い印象というものがあまりないのがある意味答えだろう。
学生時代にはまあ普通の先輩後輩をしていたし、悪い印象はない分この2人よりは好印象、というだけの七海ではあるが、紳士である部分は大きい。

「あ、七海くん」
「名前!私別に君の事小馬鹿になんてしてないからね!?」
「僕だって名前の事大切だから!大大大好きだから!」
「え…あ、う、ん?そ、そっか…」

名前の姿を見つけると七海の両サイドを固めていた特級が名前に飛びつくように迫る。そして言い訳をする。
今来た名前には意味が分からず、目で説明を求める名前に七海は「今までの自業自得を清算したいんですよ」とため息交じりに言う。

「お2人とも、人の伴侶に近づきすぎです。ご配慮を」
「うるせー!僕の方が名前の事好きだもん!幸せにするし」
「私だって!」
「では困惑している名前さん自身の事はどうでもいいと?」
「名前は迷惑?」
「違うよね?違うって言って」
「迷惑です」

綺麗な一刀両断に大男たちはその場に座り込む。
慣れているのだろう、名前は手に持った書類を七海に渡すと小さな声で「なにこれ」と不思議そうに聞いてくる。
不思議だろう、いきなり大好きだとかぬかすのだ。何も知らない、というよりも外見だけで判断するならその2人に愛を囁かれれば女性の大半は撃ち抜かれるだろう。しかし名前は知っているのだ。

「ああ、任務の資料ですか」
「変更だって」
「ありがとうございます。ところでいつ引っ越しをするんですか」
「今のままでよくない?高専に部屋あると楽なんだよね、七海くんだって泊まるじゃない」
「そうですが…」
「なになになに?別居?別居なの?」
「広い部屋引っ越す甲斐性もないのかい?名前、私なら庭付き一戸建ても準備するよ。間取りはどんなのがいいかな」
「違うよ。呪術師結構時間がまちまちでしょ?ひとつにしなくて、ふたつでも便利でしょ?っていう話。家賃はかかるけどお金使う事あんまりないし、問題ないと思うって話」
「ですが」
「別に高専の寮は独身寮じゃないし」
「呪術師で結婚してる方が稀だからな。あーあ、僕も名前とそんな話がしたーい」
「私なら名前に呪術師辞めてもらって専業主婦も良いと思う」
「それは私が七海くんと相談して、決めるの。2人は関係ないの」

名前の影で2人に勝ち誇ったように七海が笑った。

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