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「七海…名前との結婚生活はどうだ…」
「え、ナナミン苗字さんと結婚したの!?まじで!?おめでとう!!俺知らんかった!!」

高専の廊下で虎杖に見つかり、雑談をしていると五条が影から負のオーラを出しながら低い声で聞いてきた。
つい先日、五条の同期である苗字名前は後輩の七海建人と入籍し、苗字から七海に姓を変えたのだ。変えたといえど、職場では旧姓で通すつもりなので知らない人間も多い。ついでにいえば面倒だから身近な人間以外には公表もしていない。
名前曰く「ほら、私特級と硝子の同期でしょ?今まで言い寄る人いなかったし、これからもいないし。まあ七海くんはモテるから公表っていうのもわかるけど、私は別にいいかな」と悪い虫なんてこっちから寄って行っても逃げるよと笑った。
七海も七海で「確かに」と納得してしまったので、おかげで公表のタイミングを逃してしまっていた。

「先日入籍しました」
「ナナミンが苗字になったん?それとも苗字さんが七海?」
「名前がお嫁入したよ…」
「……なんで五条先生が?」
「名前さんを取られて悔しいんです、察してあげなさい」
「お!」
「どうしました」
「ナナミンが苗字さんのこと名前で呼んだ!」
「きいいぃぃぃぃい!!!なんで、なんで七海なんだ!僕の方が背が高いしイケメンだしお金もあるのに!!」
「そういうとこじゃね?」
「ゆ、悠仁まで…そんなこと、いうの…?」

先生顔はいいんだから、そういうの止めた方が良いよ。とストレートに言うあたり子供は残酷である。いや、虎杖にしてみれば親切心からの忠告だ。子供なりに考えて、先生を思って。実際はストレートに言っているだけでオブラートも何もない状態なので五条の心は軽く抉られたわけだが。

「先生もそんなことしてないでさ、羨ましいなら羨ましいって言えば」
「羨ましい!超羨ましい!なんで七海なんだよ!僕だって…僕だって」

食い気味に来た。と七海と虎杖は思ったが、まあ五条だしな。と思ってそれ以上の追及はない。
しかし虎杖は五条が名前名前というとは思っていなかった。
苗字名前という呪術師とは以前任務に同行させてもらったことがある。勿論五条と夏油の計らいで。
2人曰く「いろんな呪術師と交流するのも学生の務めだよ、呪術師としての戦い方を理解するんだ」という事らしい。
実際苗字名前という呪術師は術式が結界術なので攻撃全般が呪具で行うことになる。
虎杖は他の1級となると七海しか知らないが、名前の戦闘スタイルの違いは勉強になった。虎杖と七海がパワーだとしたらバランスタイプかもしれない。ちなみに五条はテクニックタイプ、夏油はいろんな意味でパワータイプだ。

「そうだよ…私だって…」
「うわ…げ、夏油先生…」
「私だって…私だって、名前のこと狙ってたのに」
「その発言がアウトじゃね?苗字さん獲物としてみてんじゃん。あ、七海さん?になるの?」
「旧姓で任務にあたるので苗字さんで良いと思いますよ」
「旧姓って言うな!」
「そうだそうだ!」
「だって今七海なんでしょ?じゃあ旧姓じゃねえの?」
「虎杖くん…」
「五条…」
「夏油…」
「七海だよ、先生たち」

圧倒的正論、だろうか。
現に名前と結婚したのは七海建人であって、この2人の特級のどちらかと結婚したわけではない。
そして何も悪気もなく、純粋に訂正をする虎杖の眩しい事。
七海にとっては正論の味方であり、特級にとっては自分の欲求は満たされることのないと切り捨てられているわけだが。

「いい加減諦めてください」
「嫌だね!」
「なんで七海なんだ、七海がなんだ!」
「うわ…」
「虎杖くん引いてますよ、教師として恥ずかしくないんですか」
「恥ずかしくない!!」
「私たちの方が付き合い長いんだよ!?七海なんて出戻りじゃないか!ずっと一緒だったのに!」
「ナナミン頑張って。苗字さん守ってね、絶対だかんね?」
「悠仁まで七海の味方なの!?」
「まで?」
「家入さんも虎杖くんと同じだという事です」
「あー…」

察した虎杖に七海も溜息をつく。
虎杖自身、特級で担任の五条も、特級の夏油も尊敬しているが、この姿はいただけない。
虎杖の中のイマジナリー伏黒が酷く嫌なものを見る目で見ている気さえしてきた。
ついでに「五条先生も夏油先生もそういうとこあるぞ」なんて空耳さえも。
転入した虎杖でさえも特級同期の4人は仲がいいと思っていたが、そういう事かと気が付きたくなかったが気が付いた。そして名前という人間の危機と七海の危機。
そもそもそんなに好意があったなら早々に告白でもしたらいいのに。と思ったが口に出したら面倒だと察したので口にはしなかった。

「邪魔だクズ共、何してる」
「しょうこー…」
「なんだ、七海と虎杖も居たのか」
「うっす!苗字さんとナナミンが結婚したって!俺ビックリしたんだよね」
「ああ、その話か。このクズ2人より断然マシだろ?」
「そーっすね!」
「心強い味方ができたな七海。これが一般的な反応だクズ共」

特級も家入には頭が上がらないのか、先ほどまで喚いていたのがウソのように黙る。
この反応を見るに、家入も七海ならばと思っていたのを察した虎杖。確かに、これを見ると七海が一番いいだろうと虎杖でさえ思った。

「結婚祝い何が良い七海」
「え」
「私と歌姫さんで渡すつもりなんだ、名前と相談しておけよ」
「包丁贈るよ…名前に手料理作ってもらえよ、七海……」
「じゃあ僕ハンカチ贈ろうかな…」
「悪質だなお前ら、だからクズなんだよクズ」
「何が駄目なん」
「こういう場合、刃物は縁が切れてしまう、ハンカチは漢字で書くとテキレとも読めるので縁起が悪いんです。わかって送るというあたり悪質ではありますが、まあ五条さんと夏油さんですからね…名前さんも笑って片づけるでしょうね」
「すげーのろけ」
「はい?」
「そんなんじゃ縁はきれません。ていう宣言だろ?ナナミン」
「え」
「そうだな、お前もかなり長い間名前に片思いしてたクチか?意外だな」
「きいいいいぃぃぃ!!」
「私の名前なのに!」
「うるさい」

少し踵のある靴で家入が2人の脛を蹴ると、2人は黙った。
しかし七海を睨むのを忘れないあたり、いろいろと根深いんだなと虎杖は思った。

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