呪術 | ナノ
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「夏油名前です、よろしくお願いします」
「灰原雄です!」
「…七海健人です」

補助監督が立ち会い、名前は後輩である二人に挨拶として頭を下げる。
すると後輩二人も同じく自己紹介をして名前に頭を下げる。

「夏油先輩は2年にもいますけど、お姉さんですか!」
「ええ、夏油さんは2年に弟さんがいます。ではこれから現場に向かいますので車に乗ってください」
「………はい」

名前に向けた質問なのだが、それをさらりと補助監督がさらって答える。
この補助監督は仕事をスムーズかつ楽に終わらせることを信念としているので無駄に時間を奪われることを嫌うのだ。
それを名前は知っているが彼らは知らない。呆気にとられている後輩をもう一人の後輩が突いて乗車するようにと促している。
名前が小さく「うん、2年の傑は弟だよ。それじゃあ行こう」と声を掛けると元気のいい「はい!」という返事が返ってきた。
運転手の補助監督は運転席、生徒である三人は後部座席に乗り込む。

「先輩も後ろなんですね!」
「うん。でも人数が多いと前とか行く時あるよ。もしかして隣嫌だった?ごめんね」
「全然!なあ、七海!」
「どうしてこっちに振るんですか…」
「えーっと、ゲトウ、先輩?」
「弟がいるから名前の方でいいよ。呼びにくいなら苗字で」
「えっと…」
「名前先輩」
「そう!名前先輩!なんだ七海、ちゃんと聞いてたんだな!」
「失礼ですね、人が話を聞いていないような言い方だ」
「お話の途中ですがよろしいですか?本日の件ですが」

少しイラついた声色の補助監督が咳払いをひとつ。
名前が手に持っていた書類を見る様にと二人に促すと二人は慌ててあらかじめ渡されていた書類を手にする。
廃墟となったビルの地下。今では立入が禁止されているがそれが読めない人間のたまり場になっているらしい。そこでの不可解な現象の対処。それが今回の任務である。
初回あたりであれば担任が受け持つがそれも数回まで。それ以降になると上級生と一緒であったり呪術師として所属している人間と組み、呪術師としての仕事に関わる事になる。
名前にとっては下級生のサポート受けることは初めてではないが、1年である二人にはサポートするのは初めてである。

「以上です、質問は」
「ありません」
「ないです」
「ありません」
「では目的地までまだ時間はありますのでお好きに」

ぴしゃり。ではないが、その突き放した言い方に二人は黙ってしまった。
それを見た名前は小さく笑う。この補助監督は悪い人でないのだが態度がいちいちい冷たいのだ。何度か関わると悪い人でなく良い人だというのがわかるのだが、初対面ではこうなるのも仕方がない。名前も実際そうだったのだ。恐らくこれがこの補助監督の通行儀礼、かもしれない。

「あ、そうだ。飴あげるね。ブルーベリー、平気?」
「ありがとうございます!」
「はい、七海くんも」
「……ありがとう、ございます」
「これ、あとで食べてくださーい」
「どうも」

助手席の背もたれから滑り落ち、座席に転がる飴の小さな袋。デフォルメされたフクロウが目を強調しているイラストがあしらってある。

「いいのですか?私が貰って」
「ブルーベリー嫌いでしたか?」
「いえ、貴女は目を使うので。そのためのものでは?」
「食べたかった買っただけなので、そういうのじゃありません」
「そうですか」

そういうと名前は袋を切って飴を口に入れてゴミをポケット入れる。
その様子を灰原は意味ありげに眺めてから同じ様に口に入れてみる。何か警戒していたのか、「普通…」と独り言がこぼれていた。



「終わったね、二人ともお疲れ様でした」
「した!」
「お疲れ様でした」
「名前先輩のあれ、凄いですね!」
「初めて見ましたが、弟の先輩も同じなのですか?」
「傑とは全く別モノ。傑が再利用するなら私はぐしゃぐしゃって丸めて捨てるって感じかな」

手を合わせた何がを丸める様な動きをする名前。
あまりそこで時間を食うと補助監督が電話をかけてくるので「車に戻ろうか」と階段の方を指す。

「そうだ、2年生とは会った?」
「はい!」
「五条先輩みたいな人だったらどうしようと思いました」
「………七海くん、なかなか言うね…五条くんなかなか破天荒だからな」
「腹減った!どこか寄ってくれますかね」
「お願いしたら寄ってくれるよ。任務の食事は経費で落ちるって聞いたし」
「マジっすか!」
「じゃあお願いしてくださいね灰原」
「え!」

自分で言いだしたんだから最後までやれよ。と言われて悩んだ末、灰原は補助監督に大きな声でお願いしてた。


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