呪術 | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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※スピネル
※夏油生存IF

「あ、硝子はどっちに賭けたの?」
「何の話?」
「五条くんか夏油くんにさ」
「…?」

本日の同期の飲み会会場になったのは夏油の部屋。
五条の部屋まではいかないが、それなりに大きい部屋である。ここ高専で1番広い部屋が五条の部屋ならば2位は夏油の部屋だろう。
五条は言えば御三家の出身ので広くていいが、一般家庭出身の夏油には広すぎるといってもいいだろう。双子が入学するまでは一緒にいたので気が付かなかったが、入学して寮にいる今現在は独身1人では空間が広すぎる、と前の飲み会で笑っていたのは記憶に新しい。

「また私で遊んでたんでしょ、3人で」
「んー?」
「五条くんと夏油くんが結婚を前提に付き合って。なんていうんだもん」
「ぶふ!!」
「げは!!」
「ほう…?その話詳しく」

ビールを飲んでいた夏油は吹き出し、お菓子を食べていた五条はせき込む。ついでに家入はにやりと笑って某アニメの司令官よろしく顔の前に手をくんで「続けて」と名前の次の言葉を待っている。

「だーかーらー、2人がそんなドッキリ計画するからまーた3人で私で遊んでるって思ってさ。どっちと付き合うか賭けてたんでしょ。私は騙されないよ」
「はははは!さすが名前。もうそんな簡単に遊ばれないな、良い事だ」
「10年ですからね〜」

女性陣がきゃいきゃいと笑っている側、男性陣は死んだ顔をしながら後始末をしている。
その最中にお互い目でバチバチとけんかをしているのを家入は感じ取り、馬鹿がいるなと頭の片隅で思いながら酒をあおる。
「お酒飲んだらトイレが近いぜ!」と名前は「トイレ借りるねー」と席を立った名前を確認した3人は家入を前に2人正座をする。

「で?」
「いや、私確かに名前に告白したけど…」
「ぼ、僕も…でも、別に傑と示し合わせたわけじゃなく…」
「へえ…?」
「僕は遊びじゃないし、ゲームでもなく」
「私だってそうだよ。誠心誠意」
「で?」
「振られました」
「同じく」
「理由は」
「…私は名前に『なに?罰ゲーム?』って」
「僕も。あと、多分傑の後だったのか『私で遊ぶな』って」

まあ想像通りだな。と名前はつまみを口に投げ入れる。
名前は学生の時から可愛がられている、というよりこの2人の玩具に近い扱いだった。2人からしたら構っていた、だろうが名前本人からしたら扱いは良くなかった、だろう。
名前から見たらあの2人はデカいし怖い部類である。それでも同期だし、という事で当たり障りのない学生生活をしていたのだ。
名前が余所余所しい。という2人の愚痴は愚痴ではなく事実だし、名前からしてみれば構わないで、の一言だろう。

「トイレさんきゅ…って、なに?どうしたの」
「うん?別になんもないよ」
「おい夏油、名前の好きなアイスでもないの?」
「あ!僕の冷凍庫にある!持ってくるね」
「うちの冷凍庫にもあるよ。限定のラズベリーのあるから名前食べていいよ」
「いいの!やった、嬉しい」
「……っち」

家入が咳ばらいをすると「戻れ」という号令のように先ほどと同じ場所に戻る2人。
名前がキッチンから戻って座り、うふうふとアイスの蓋を開けて食べ始めた。

「…美味しい?」
「美味しい!で、何賭けてたの?」
「別になんもないよ。ただ名前の反応を見たかっただけ。まあ案の定って感じだね」
「でもさ、悪趣味だからもうしちゃ駄目だからね」
「う、うん…」
「ご、めんね…」
「五条くんは五条家当主なんだし、そんなおふざけしてる場合じゃないんだし。夏油くんも」

まさか特級の2人がごく普通に、そして真剣に自分に告白をしたなんてつゆほども思っていない名前は説教をする。まあ自分に本気だった、とは本気で名前は思っていないからこそできることで、そうではないのを知っている3人は内心複雑である。
家入は男性陣には「ざまあ」ではあるが名前には「そのままでいい」という心境で、男性2人は地獄である。
まさか、まさか。同じ人間を好きになって同じ日に告白して、同じ日に振られた、というより本気にされなかったのである。
まあこの2人には前科が多すぎるので名前が本気にしない理由には心当たりがありすぎるのだが。

「そういえば、えーっと?リエ?エリ?さんとはどうなの五条くん」
「え、誰?」
「あれ?夏油くんのほうだった?」
「私も心当たりないけど…どうしたの」
「この前どっちだったかの恋人ですって言われて、なんか牽制された。ウケる」
「なに?パンピー?」
「パンピーパンピー。任務の空き時間にコンビニでコーヒー買って公園で飲んでたら呼び止められてさ、恋人のエリ?リエ?です、彼氏がお世話になってますっていわれた」
「呪詛師じゃね?」
「結界術見えてなかったからパンピー」
「おいクズ2人」
「う、うっす」
「はい」
「それに心当たりは?」
「茶髪ロングゆるふわウエーブ、服装は綺麗め、派手ではなく清楚。胸はまあまあ、小尻」
「あ!」
「五条くんだね」
「まって!違う!違うから!恋人じゃない!セフレ!」
「いや、何でもいいけど。私もなんか牽制されたのわかったから同期です!彼氏大変ですね!って言っといた」
「よし名前、これを食え」
「アイス食べてるのにタコわさを…?」

絶対合わないじゃん…。と家入の誘いを断る名前。

「でも、なんで名前が悟の知り合いだってわかったんだろうね」
「先日デート中でお見掛けしました、たしか…名前、さん?でしたよね。って」
「安易に答えるなよ…」
「1級呪術師なので、呪詛師でも簡単にはやられないぞ!」
「呪言師の家系の子がいるけど」
「マスクもしないで?」
「あ、そうか…たいていの呪言師の家系呪術師なら見てわかるもんね」
「まあ、こっちとしてはデート中にほかの女の名前言っちゃう男はお断りだよね。リエ?エリ?さんも見切りつけちゃえばいいのに」
「恋人じゃないんだけど」
「まあまあ名前。悟見た目はいいからさ、ステイタスってやつだよ」
「傑…お前なぁ!お前だってこの前のユイカはどうなんだよ!」
「な!んで悟が知ってるんだよ!」

「……私帰るね」
「帰んの?」
「うん、巻き込まれて怪我したくないし」
「治してやるよ」
「いや、任務でも何でもない同期が酒飲んで暴れて巻き込まれて怪我したとかね。そんなことで硝子の呪力消費させたくないし。私が反転術式使えればいいんだけど、こればかりはねえ」

アイスとスプーンも持って立ち上がり、言い争う2人の横をすたすたと歩いて玄関に行ってバタンと扉が閉まる音がした。
しかしそのことに気づかずに大男はワンワンと言い合いをして納める雰囲気はない。
この2人の喧嘩なら名前も見慣れているが、酒の席だ。被害が予想できないと名前は逃げ、反転術式が使える家入は酒の肴だと言わんばかりに不毛な言い争いを眺めて酒を一口、また一口。

「あ、酒がない。おい夏油、酒がない、持ってこい」
「冷蔵庫に入っている!!」
「色男が台無しじゃん傑う!硝子に持ってこさせんの?」
「っち!!1本でいいの!?」
「面倒だから自分で持ってくる。あ、そうだ。名前帰ったからな」
「「は!?」」

ふふんふーん。と冷蔵庫に行って酒を持ってくる家入。
確かにいたはずの名前の姿がなく、飲んでいた酒の缶だけが残っているではないか。あの甘い酒は家入の趣味でも夏油の趣味でもなく、名前のために買ってきた酒である。

「…馬鹿らしい」
「本当」
「で?いつから名前狙ったんだお前ら」
「…いつだっていいじゃん」
「私もノーコメント」
「ふうん?で、なんで今日」
「「たまたま」」
「玉砕野郎共め」
「私は自信があったんだけど」
「僕だって。ここで見せつけようかとは思ったけど」
「ま、名前も馬鹿じゃないからな。クズに引っかからなかっただけの話だ。今回は名前もおふざけの一環だと思ってスルーしてるんだからお前らもスルーしろよ、私も協力したんだ」
「それは聞けない提案。名前がふざけてると思っているならこっちは本気だと自覚させる」
「僕も」
「……名前、学生時代からお前らの事苦手だから時間かかるぞ」
「「ええ」」

初耳…と言いたげに2人は少ししょげた。

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