呪術 | ナノ
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「おい名前」
「あ、五条くん。あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」
「あけましておめでとう、よろしくな。今戻りか?」
「うん」
「俺も。まあ、お互いこの荷物だもんな」

名前は新幹線、電車、バスを乗り継いで歩いて寮に向かっている途中に後ろから声をかけたのが五条。五条家のお坊ちゃまなので車での送迎だろう、名前よりも疲れている様子はない。

「土産あんの?」
「一応買って来たよ」
「よっしゃ。傑も硝子も実家帰らねえから面白くねえんだよ」
「私五条くんのために買って来たんじゃないんだけど」
「実家から菓子適当に持ってきたら名前にもやるよ」
「ありがとう」

ガラガラとキャリーケースを引いて、階段上るのも一段ずつ。
のろま。と五条に言われたが言い返しても意味がないので「先に行きなよ」と言えば「やだ」との返答。持ってくれるわけでもないのに、と名前は内心で頭を傾げる。
寮の玄関についてキャリーケースのキャスターを拭くために雑巾を用意していると、五条は共同スペースにも自室にも入ろうとせずに名前のキャリーケースのすぐそばにいる。
不思議に思って名前が「どうしたの」と声を変えれば気まずそうに小さな声で答えた。

「…だって、共同スペース、傑いるかもしれねえじゃん。傑、俺見ると具合悪くなるだろ、名前か硝子がいれば、まだマシだけどよ」
「………」
「俺、傑の事親友だと思ってるし、しんどいけど、傑がつらいのもシンドイ」
「私を、偵察に使うの?」
「ちげえ…く、ねえな。うん、そう。」
「うわ、素直だ」
「あ?」
「仕方がない。偵察してあげるよ、火傷は許してないけど」
「おま…まだ言う?それ」
「言うよー当たり前」
「くっそ」
「ま、同級生だから協力しますよ。私も2人にはまた仲良くしてほしいから」
「名前……お前、いいやつだな」

こういうことに巻き込まれたくないから。という心の本音は隠しておいて。
ニコっと名前が笑えば、五条もつられてにこっと笑う。まあ、そういうところは可愛げがある、と言えるだろう。普段の悪態を見ていると、こうなる当たり夏油の事を心配しているのがわかる。
キャスターを綺麗にしてガラガラ引きながらと共同スペースに行くと双子が遊んでいるのが見えた。

「あ!おねえちゃん、おかえりなさい」
「あけましておめでとうだよ、みみこ」
「あけましておめでとうございます、おねえちゃん」
「あけましておめでとうございます、おねえちゃん」
「はい、あけましておめでとうございます、今年もよろしくね。夏油くんは?」
「おへや!かだい?だって」
「おねえちゃんきたの、おしえてくる!」
「「あ」」
「あん?」
「「ごじょーさとる!」」
「ほら、挨拶は?」

わー!と声を上げる双子に名前が言えば、2人は顔を見合わせてから名前を見てから「あけましておめでとうございます」と声をそろえた。
まさか双子が挨拶をするとは思っていなかった五条は思わず「お、おう」と中途半端な挨拶をしたので名前が「五条くん」と責めるように言えば「あけまして、おめでとう」と挨拶を返した。

「私一度部屋に戻ってからお土産持ってここにくるね」
「おみやげ!」
「げとうさま、よろこぶ?」
「夏油くんの好きなお蕎麦持ってきたから、喜ぶかも」
「げとうさまに、おしえなくちゃ!」
「あー!まって、ななこ!」

ばたばたと走って出て行く双子。
残された五条は「え、俺には聞かねえの?」という可哀想な声。普段あの双子とも時間が合わないことが多いので、双子も五条もどう接したらいいのか分からないということもある。自分に懐いてほしいとは思わないが、あれだけ名前の周りできゃっきゃされれば寂しいのだろう。
名前が控えめに笑えば五条はキッと名前を睨んだ。

「じゃあ私、一度部屋戻ってくるね」
「俺は」
「え…好きにしたら、いいんじゃない?」
「今部屋行ったら傑に会うかもじゃん」
「お、大きな、足音たててみる、とか?」
「馬鹿かよ」
「え、じゃあ自分で考えなよ…」

うわー!と名前のコートの端を掴んで「それは言うな」と言わんばかりに引っ張る。
しかし名前にはそこまで五条を擁護も援護もフォローもするつもりはない。
コート引っ張らないで。やだ!はなして。やだ!!という子供の様なやり取りである。

「夏油くん来ちゃうでしょ」
「廊下で鉢合わせるかもしれないだろ!」
「じゃあ外から自分の部屋入れば?私関係ないし」
「なにしてんのアンタら」
「あ、硝子。あけましておめでとう」
「はいはいおめでと。五条と戯れてんの?」
「しょーこー!」
「うっざ。さっさと名前はなせよクズ。名前、酒は」
「なによ!お土産目当てなの!?」
「俺も酒あるし!!」
「「賄賂?」」
「なんだよおおお!」
「「うっざ」」
「硝子はまだしも、名前お前なんだよ!前はもっと大人しかったじゃん!!」
「お前らの相手するのに学習したんだよ。んな格好してないで着替えて来いよお前ら」
「着替えたいのに五条くんが!」
「傑は助けるのに俺は助けないのかよ!」
「助けてないよ!」
「助けた!俺も助けろよ!」
「うっざ。うるせえぞ五条」

小柄な家入が五条の額をバシッと叩き、名前は解放されて急いで自室に飛び込んだ。
どうやらここまでは追いかけてこないらしく、名前は一息をつく。
キャリーを開けてお土産を出して、着替えて、だしたお土産を持って名前は部屋をでる。後片付けは、まあ後でいいだろうと思って。

「あ、名前おかえり」
「夏油くん、あけましておめでとう」
「おめでとう」
「おみやげ!」
「こら」
「いいのいいの。はい、お蕎麦。こっちはみんなのお土産だから好きに食べて。こっちは2人の分」
「ありがとう!」
「みていい?」
「いいよ」
「わざわざありがとう。あ、それ硝子の?」
「うん。硝子は?」
「……悟の、相手してる」
「そっか」

げとうさま!みて!かわいい!と双子が騒ぎはじめ、しんみりとする暇もなくにぎやかになった。

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