呪術 | ナノ
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「ぎゃははははは!!」
「フラグ回収めっちゃ早かった、これは音速、禪院家」
「ちょっとちょっと、そこは五条家にして」
「うるさいぞ、騒ぐなら出ていけ五条」
「え、僕!?」

少しだけだぼついた袈裟を着て、猫背気味に診察を受けるための椅子に座る夏油。
その正面には白衣を着た家入。
一応、というどうでもいい名目で名前が夏油に付き添って、いざ診察というときに五条が乱入してきたのだ。
ちなみに菅田は車で今後のスケジュールの調整をしている最中である。

「えーっと、なんだっけ。名前指名してきた任務内容」
「某ショッピングセンター、数年前に退去して廃墟になってた大型ショッピングセンターが肝試しスポットになって、そこに行った若者数名が約10年、人によっては15年とかの記憶障害が起きているって案件。無事夏油くんが原因の呪霊をしゅるるーってして、ごっくんしたら呪霊の影響が出たって感じ」
「2・3日ってところだな。目立った外傷もないし、大人しくしてろ」
「で、持ってきた?」
「もちのろん!!いやー、名前が僕にそんなことを頼むなんて何事って思ったけど、わかった、うん。ついでに僕も持ってきた!」

じゃじゃーん!と紙袋から出したのは高専の制服。
懐かしい五条と夏油の物。同じではなく、上はまだ現行のものがあるが夏油の下のほうはホームセンターか作業着専門店で買っただろう値札が付いている。

「うわ、それ名前が頼んだの?」
「イキってた時の夏油くん、懐かしくて五条くんに速攻連絡したよね。こう見ると夏油くん、当時から大人っぽい顔だよね」
「老け顔ってこと?僕は僕は?」
「ベビーフェイスですね、中身も」
「これ、ボンタンだよね?私サルエルだってば」
「「細かいことは気にしない」」
「うは。気が合うじゃん2人」
「こういうことは楽しまないと!あ、着替えたら菅田さん呼ぶから着替えて」
「あの秘書の人?なんで?」
「一眼で撮影してもらうの。監督は五条くん」
「いえーい!」
「終わったならさっさと出ていけ、私は忙しい。名前は遊んでていいのか?」
「夏油くんの制服姿拝んだら次の任務出るよ。まだ小一時間あるから」
「休んじゃえば?」
「それは無理。あ、後で菅田さんに相談して同期で飲み行こうよ。五条くんの奢りで」
「お、賛成。いい酒飲ませろよ」
「えー。まあいいけど」
「いや私未成年だけど」
「飲まなきゃいいだけじゃない?どうせ五条くんも飲まないし」
「お気に入りの七海と伊地知は良いのか?」
「どっちも嫌がるだろうし。まあ声だけかけてみようか」

うん?という声とともに名前がポケットからスマートフォンを取り出すと、嫌な顔をする。
それをのぞき込んだ五条は五条で「あーあ」という声。

「覗くな。えっち」
「いやん」
「どうしたの?」
「急な任務入った。残念…夏油くんの制服姿見たかったのに」
「写真送るよ?」
「生で見たかったの!なんでこういう時に急な任務入るかな…」
「どんなのが入ったの」
「まあまあ素早いやつが出たみたい」
「手伝おうか?」
「優しいじゃん夏油」
「現場に七海くんと猪野くんがいるみたいだから、いい。あ、五条くんもコスプレして写真撮れば?」
「僕の欲しい?」
「面白そうだから。ついでに五条家のお嬢さんに絡まれたときに見せる」
「何その話、僕初耳なんだけど?」
「おっと補助監督が待ってるから私行くわ」

お店は五条くん決めて、そんで迎えきて。と我儘を言えば五条は慣れていると言わんばかりに「おっけー」と返事をする。

「さて、傑」
「な、なんだよ…悟、君その変な目隠しなに?」
「六眼疲れるからね。ここの教師してるからサングラスっていうのもアレでしょ?包帯も一時期してたけど、あれ手間なんだよね」
「学生からは目隠し馬鹿って呼ばれてるがな」
「え、待って、悟、きみ教師してるの?真面目に?私を揶揄ってない?」
「色々あってね。じゃあ傑、場所替えて着替えて撮影会」
「………は?」
「おい五条」
「硝子からも何か言ってよ」
「名前が言っていただろ、秘書に連絡しろ。ついでに私にも写真寄越せ」
「硝子…?」
「ネタに何か奢らせる」
「傑、2人には甘いから別にいらなくない?」
「気分だよ、気分」






「すみません、助かりました」
「気にしない気にしない。困ったときはお互い様だよ」
「でも本当苗字さん空いてて助かりましたよ、これ苗字さんの結界術ナシだと祓えませんもん」

お疲れー。と任務が終わってお互いに声をかける。
名前に要請が入った通りに素早い呪霊がいたのだ。普段であればこのコンビで問題ないのだろうが、それ以上の速さだった。
名前が到着して結界術で行動範囲を狭めてしまえばあっさりと終わる。
速さだけが取り柄のような呪霊である。

「今度何かお礼を」
「いいって、どうせ空き時間だし。あ、でも…」
「どうしたんすか?あ、もしかして任務の時間?」
「今ね、高専に夏油くんが居て」
「夏油さんが?」
「確か、特級で五条さんと親友の、あと坊さん?」
「お坊さんじゃないんだけどね、夏油くん。面白いことになってるんだよね、生で見たかった」
「夏油さん、怪我でもしたんですか?確か1件夏油さんからの依頼があったとか」
「なんで知ってるの?」
「五条さんが言っていたので」
「あ、そういう…?うん、まあそうなんだけど。取り込んだ呪霊の影響で今、心身とも高専なんだよね」

反応が可愛いの。と、まるで飼っている動物が可愛いの。というように軽く言う名前。
その言葉に七海と猪野は「はあ?」と素っ頓狂な声を重ねる。
夏油と言えば特級の呪術師で、今現在はフリーで宗教家。宗教家と言えば聞こえはいいが、詐欺まがいな教団の教祖である。
あの五条と親友であるからして、クズという認識が高専でも強い。

「五条くんに連絡してさ、高専の制服用意してもらって、今撮影会じゃないかな」
「…………」
「それ、冗談ですよね」
「本当だよ、こんなの冗談言わないよ。あ、ほらほら」

ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出し、名前は2人に見せる。
そこには戸惑った表情の夏油に、全力で楽しんでいる五条。どちらも高専の制服を着用している。
そのスマホに次々と通知が来ているのは恐らくそれ関係の写真が送られているからだろう。ヴーヴーと繰り返しバイブレーションが振動している。

「え、だ、大丈夫なんすか?夏油、特級呪術師」
「硝子の話だと2・3日って話だから、大丈夫じゃない?菅田さんも一緒だし」
「あの双子が聞いたら大変でしょうね」
「そのあたりは菅田さんが良くするでしょ。」
「五条さんも、当時こんな感じなんですか?」
「五条くんはあんまり変わってないね。七海くんが一番変わってると思う」
「苗字さんだって、変わりましたよ」
「ふふ、そうだね。七海くんは、当時は今に比べて可愛かったよ?今は超格好いい!」
「カッコいいすよね、七海さん!」
「ね!」

夏油よりも七海。と言わんばかりの話題の転換である。当の七海は大きな溜息をわざとらしつき、猪野と名前は「溜息は幸せが逃げますよ」と楽しそうに話している。

「あ、そうだ。今日同期で飲み会やろって話してたんだけど、2人くる?」
「俺同期じゃないし、何より高専在籍もかぶってないっすよ」
「いいのいいの、気にしない。五条くんの奢りだし」
「猪野くん、やめておきなさい。どうせろくでもないですよ」
「夏油くん高専の時の夏油くんだから大人しいよ、未成年だから飲酒しないって言ってたし。まあ、五条くんのウザ絡みの生贄だよね」
「苗字さん凄いっすね…」
「伊達に特級2人と反転術式使う人間と同期してません。」
「猪野くんは知らないと思いますが、苗字さん在学中はもっと大人しい性格でしたからね」
「私あそこで目立てるほど肝は据わってない。まあ、おかげで先生とか補助監督さんからは可愛がってもらえた。そして特級2人と反転術式使う人間らに遠慮しても意味はないと学習して、まあ、こうなったよね…」
「わ、わあ…」

うんうん。と頷く七海を見て猪野は「こうなった」という意味を知る。
確かにアレだけ凄い人が周りに居たら図太くならないと駄目なんだな、と何気に失礼なことを思っていた。

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