呪術 | ナノ
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※スピネル
※夏油Not離反教祖If

「………?」
「わーお高速フラグ回収お見事」
「…名前?」

やば。と夏油を目の前に名前はケラケラ笑う。
それもクスクスという可愛いものではなく、本当に面白いのだろう。
「まじ?やば、うける」とスマートフォンを出してパシャリと音を鳴らす。

「あ、れ?なんで、私…?何、この恰好…袈裟?」
「夏油くん、今何歳?」
「へ?今?17…だけど、…?名前、制服は?」
「やっばーい。あ、説明するとね、今夏油くんは27歳、職業はフリーの特級呪術師兼宗教家。そして、頭に『?』がなんで並んでいるかというと」

今夏油くんが取り込んだ呪霊の影響です。と名前は言う。
簡単に説明すると夏油が高専に名前の派遣を依頼し、その件の呪霊を取り込んだ影響で夏油自身が記憶ごと若返ってしまった、という事。
廃墟の一室、病院でもなければ学校でもない。元はにぎわったショッピングモールのような建物。明るくはなく、薄暗い。呪霊が好みそうな場所である。

「さて、任務終わったし戻ろうか」
「戻る?」
「そ。私は補助監督と一緒に高専、夏油くんは菅田秘書さんと一緒に自分のところに」
「え…ねえ、私、その…戻る、の?場所じゃなくて、大人?に」
「んー、どうだろう。私夏油くんが呪霊の影響受けるの、軽いのなら聞いたことあったけど、こうなるの聞いたことないし?高専で硝子に診てもらう?」
「診てもらえるならお願いしたいけど…硝子に治せる?」
「さあ?私は硝子じゃなから分からない。とりあえずここから出て菅田さんと新田さんに相談しようか」

足場や色々綺麗だとは言い難い建物の大きな大きな通路を歩き、ガラス張りの大きな出入口まで来て外の出る。
駐車場だったはずの大きな敷地は荒れていて雑草、落ち葉、その他にゴミと散乱している。そこに2台の車。色はどちらも黒、片方は見慣れた高専の車に黒いスーツの女性、もう片方は高専の車より見るからに高級で艶さえもよく、隣には艶めかしい女性。

「夏油様、お疲れ様です。御髪が乱れている様ですか…」
「え、いや…えっと」

「名前さんお疲れ様っす。怪我も無いみたいっすね、確認のサイン貰ったら高専戻りましょう!」
「あ、それなんだけど」
「はい?どうかしたっすか」

ちらりと夏油を見て、名前は新田を「ちょいちょい」と手招きして耳を貸す様にしぐさをする。

「?」
「夏油くん、取り込んだ呪霊の影響で精神も体も高専時代みたいなんだよね。で、硝子に診てもらいたいっぽいんだよね」

へ?という腑抜けた声。
あの夏油特級呪術師が?という目をしている。
若い高専関係者であれば夏油と言えばアッパーである、という認識が強い。
元の性格は五条の事もあって非常に大人であったし、紳士だった。今は色々あって昔を知る人間からしたら異常なくらいのテンションである。
まあ今と昔を知らない人間からすると、まあ色々とアレなのである。

「夏油くん」
「…名前」
「苗字様、何があったのですか?夏油様の様子が」
「取り込んだ呪霊の影響で今の夏油くんは高専時代に心身ともになっている状態の様です。現に先ほど年齢を聞いたら17歳と答えましたし、髪型も当時の状態、顔も少し若いです。少しだけ」
「その強調いる?酷いな」
「菅田さん、夏油くんの美女で敏腕な秘書さん。オーケー?」
「では改めて。菅田真奈美と申します、ご紹介に預かりましたように秘書を務めさせていただいております。それで苗字様、どう対処されてるのですか」
「夏油くん本人は高専の家入に診てもらいたいと言っていました。手配しましょうか?」
「夏油様の意思であればお願いいたします。こちらも今後の予定を組みなおし致しますので。どの程度で戻るのかというのも、わかるのであれば把握できれば、と」

わかりました。と名前はスマホをタップして電話をかけ、家入に連絡を取る。
幸い今は空いているというので「夏油くんが面白いことになったから連れて行くね」と電話を切る。
その電話の内容に当の夏油は面白くないよ、と全面に顔に書いてある。

「家入のスケジュールは抑えたので、これから高専向かいましょう」
「ありがとうございます。こちらもこれからの予定のキャンセルをしつつ向かいますので、よろしくお願いいたします」
「じゃあ夏油くん、また後でね」
「え、待って。私は?」
「そっちの車。夏油くん高専の人じゃないし」
「え。わ、私1人で、あの、車なの?」
「……どうしたの?あ、美人と一緒で緊張?らしくないぞ!」
「混乱してる私を置いていくのも酷くない?」
「えー?酷い?」
「酷くないと思うっす」
「夏油様をあのようなお車でお送りするのは…あ、そういう意味ではなく、わが教団のトップとしましては、という意味です」
「ま、夏油さまはそちらの高級車でいらしてくださいませ。新田さん、出発っすよ」
「了解っす!あ、その前に。菅田さん、こちらにサインを」
「失念しておりました、只今」

さらさらとサインをしてお互いに一礼。
これで夏油から依頼された任務は完了となり、本来であればここで解散なのだが。
今は夏油がこの状態なのでまた違う任務(仮)が始まってしまった。金払いはいい夏油なのでこの件も後で請求したらしっかり払ってくれることだろうと名前と新田は思っている。どんなに面倒な相手でも金払いがいいと少しだけ許すことができる。

「じゃ、高専で」
「名前…」
「菅田さん、一眼準備して来てください」
「常備しております」

ぐっ。とお互いに親指を立てて頷くあたり、何かと交流があるのは夏油でもわかった。
夏油からしてみれば、ここで知り合いと言えるのは名前だけ。その名前はこうも軽く夏油を見放して別の車で帰ろうとしているのだ。
確かにスダという女性は美しい。しかし夏油にとってはそれだけ、スダという美人がいる、だけである。秘書というのだから夏油にとって身近な存在なのだろうが、今の夏油にとっては知らない女性である。

「私も高専の車に乗っちゃ…駄目かな」
「駄目っす」
「そんな…」
「そもそも、高専の車、五条くんクラスの人が乗るのに適してないから、必然的に夏油くん姿勢がつらいと思う」
「悟?」
「そう。ついでにこれ、小型だから夏油くんマジキツイ。まして袈裟がシワシワになる。大人しくそっちの良い車に乗りなさい」
「夏油様…お気持ちはわかります、不安なのですね。ですがご安心を、しっかりと高専にお送りいたしますので」
「いいなー!良い車!」
「…乗る?」
「いや、乗らない!!よし、じゃあ新田さん、行こうか」
「はいっす」

じゃあね!と名前はさっそうと新田と車に乗り込み、車はエンジンを拭かせて出発。
残された夏油は菅田に言われるまま車に乗せられ、少しだけ気まずそうにして黙って乗っていた。

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