呪術 | ナノ
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「お風呂入りたい」
「阿呆」
「せめて着替えたい」
「名前の部屋から持ってくればいいわけ?」
「いや、それは…駄目だな。私と言えど今の私とここの私は別人だし…」

でも汗臭いしヤダ…とダメージのある体で名前は家入に愚痴る。
学生でありながらも忙しく現場だ治療だと走り回っている家入の隙間時間に名前を診ている。
未来の自分が持たせたという薬を名前の様態をみつつ「コレ」と与えて名前が反転術式を拒む代わりにと治療をしている。
家入自身医者でもなんでもない学生であり、名前の持っていたセットを見て未来の自分からの指示に従っているに過ぎないが、それでも学友のためになるのならと妥協をしている。

「ま、不衛生は良くないな」
「でしょ?」
「でも負担が大きいから許可できない。体拭くくらいなら許してやる。夏油に頼んどいてやる」
「……なんで夏油くん?」
「夏油の奴が『私が名前を面倒を見る。私が名前を傷つけた、怪我をさせた。責任があるんだ』ってさ。名前、何したの夏油に」
「別に何もしてないんだけどな…」
「戻ってからなんか知らないけど、何かと名前名前って言ってるみたいだけど」
「え、なにそれ…こわ…」

クズにかける情けほど無駄な事はないぞ。と言って呆れたように名前に忠告する。
そんなことを言われても名前だってただ言われた通りに夏油を殴りに来たようなものだ。それが結果的に救う事になる、というのだが。
子ども扱いが良かったのか?と一瞬頭をよぎるが、あの夏油に限ってないか。とすぐに頭から消えた。
「私これで行くから」と疲れた様子で出て行く。
家入が出て行ってからそのまま名前は体力温存のために眠っているとドアが叩かれる音で目が覚めた。

「…名前?」
「げと、う、くん?」
「大丈夫?具合悪い?入っていい?」
「いいよ」

ゴメン、寝てた。と言えば入ってきた夏油は「ああ、ごめん。寝てたんだね」と申し訳なさそうにする。
双子の姿が見えないと思って聞けば「今補助監督と一緒に出てる。子供服が必要だからって」というから驚いた。
あの双子は夏油から離れないと思った。一応は謹慎という形の夏油は出られないというのを理解はしていないが、なんとなくわかっているのかもしれない。
頼るべき夏油から離れること自体名前には信じられなかったが、子供と言えど大人の部分があるようだ。

「硝子から…聞いたんだけど、体、拭こうか?」
「え」
「あ、いや、私もね?驚いたんだけど…さ、硝子が、名前の背中でも拭いてやれって…」
「硝子…ううん、いいよ。あ、じゃあ蒸しタオル作ってくれる?力入らなくて」
「ああ、それくらいなら。服、私の貸そうか?大きいけど、それ洗濯もできてないだろ?」
「あー…うん、貸してもらうかな」

少し待ってて。と部屋から出て行き、すぐにお湯の入ったタライとタオル数枚とスウェットを持って戻る。
床に置いてタオルをギュッと絞り、空いているタライに置いて行く。わざわざここで作らなくてもいいのに…思う。

「このくらいでいいかな。これに着替えて、脱いだ服は私が洗濯しておくよ」
「え…いや、それは…無理です」
「…なんで?」

キョトンとして言う夏油。
恐らくは親切心からの行動なのだろうが、それはさすがに名前でもできないし甘えられない。
未成年男子に成人女性が洗濯を頼むは気が引ける、という柔らかな表現を使うよりも「無理」という直接的な表現が一番合っている。
家族でもない、同期、同級生である。しかも異性。

「このくらい私にもできるよ?美々子と菜々子も居たし。そうだ、背中拭こうか。あっち向いてくれる?」
「いやいやいや?親切心から来ているんだろうけど、夏油くん、それは無理。でもタオルありがとう」
「何が無理なの?」
「………同期、いや、今は同級生?だし?……女子じゃないし」
「……迷惑、だったかな」
「うん、まあ、はい」
「はっきり言うな…傷ついた」
「曖昧にしたら誤魔化してわからないふりするでしょ」
「…………」
「夏油くんの手の内はわかっています。タオル置いて出てください」
「別に、下心は……ある、けど」
「あるんかい」

まあ、気持ちだけ受け取っておく。と気持ち優しい声で答えて「でも、出て行ってね」と言って出して、よたよたと立ってカギをかける。
家入には「名前、あんたの具合は薬で誤魔化されているけど正直悪い。反転を使うなていうから使わないけど、今すぐ使いたいくらいには悪い状態だ。何かあると悪いから部屋のカギはかけるな、命に係わるかもしれない」と言われていたが、このくらいは許してほしい。
ひいひいと思った以上に体力が奪われている体でのろのろと体を拭いて汗をぬぐう。
これは戻ったらすぐに家入に反転術式で治してもらって即風呂だな、なんて安易に考える。
大体の部分を拭き終わり、用意してもらったタオルも使い終わるころにドアがノックされる。

「終わった?」
「もう少し…着替えるから、まだ時間かかるよ」
「わかった。終わったら声かけて、ドアの前で待ってるから。10分経っても何もなかったらまた声かけるよ」
「………うん」

それから5分といったところだろうか。着替えて部屋をでると夏油が壁に寄りかかって待っているのが目に入った。
名前の姿を見るとニコリと笑い、洗濯物をもらおうとする夏油に名前は遠慮なく「NO」と突きつける。
のろのろリネン室に向かう名前の後ろに不安そうについて歩き、何かと「呪霊に乗る?」と聞いてきてその都度名前は「謹慎中なんだから呪霊使ったらダメでしょ」と何度かやり取りをした。
洗濯機に洗濯物をの投げ込み、洗濯機を回し、移動が面倒だからとベンチに座る。

「座ってて大丈夫?」
「部屋まで戻るのが面倒だし。ついでに乾燥機も入れたいしね、借りたままってのも悪いし」
「気にしなくていいよ、可愛いし」
「アラサーに可愛いとか」
「名前は何歳になっても可愛いよ」
「出た、人たらし。こわーい」
「なにそれ」
「夏油くん10年後は凄いんだよ、いろいろと」
「嫉妬しちゃう?」
「いや?夏油くん達学生の時から凄いから嫉妬も何も起きないよ」
「…………私、10年後どう凄いの?」
「…うーん、人心掌握?」
「え?」
「あ、あとね、美人な秘書さんがいる」
「秘書?私フリーで呪術師してるの?」
「そんな感じかな」

それから他愛もない話をぽつぽつとし、洗濯が終わると次に乾燥機に入れる。
ゴウンゴウンと唸る乾燥機。今では新しくなったと聞いている古い乾燥機は年季が入っている。だから余計にうるさいのかもしれない。

「なにしてんの」
「名前の洗濯を待ってる」
「部屋まで戻るのが面倒」
「あー…っそ。ガキ2人は」
「ガキじゃないよ、美々子と菜々子。何回も教えているだろ悟」
「任務帰り?」
「おう」
「お疲れ」
「早く戻れよ名前、ザコでも使い道はあるんだしよ」
「うわー、可愛くなーい。でもこれが五条くんって感じ」
「あ?」
「やっぱりこれが五条くんだよね」
「私は?」
「んー…まあ、夏油くんだね。アッパー系じゃないほうがしっくりだし」
「アッパー?なに、傑アッパー系になってんの?やっば」
「何騒いで…おい、なんでここに名前がいるんだ」
「洗濯に来て動くの面倒なんだと」
「オイ夏油、名前抱えて部屋戻れ。体の状態わかってんのか馬鹿」
「しょ、硝子…」
「夏油」
「了解。じゃあ戻ろうね名前」
「俺も行こ。硝子は?」
「名前の洗濯持ってってやるよ」

大丈夫ですけど。という名前の声ば無視され、ニコニコした夏油は名前を抱きかかえて名前の部屋に向かう。
後ろに五条が「うげぇ」という顔をしながら付いてくるのを黙認しながら。

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