呪術 | ナノ
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「罰を受ける覚悟はできています。でもその前に名前を診てください、お願いします。私が名前を傷つけました、怪我を負わせました。そんなつもりはなかったけど、結果的にこんな風にしてしまった。お願いします、名前を、名前を」

助けてください。と夏油は頭を下げる。
違う。と名前が声を上げたかったが、今の夏油の声量に手負いの名前に勝てるわけもなく、名前の声はかき消された。

「うわ、マジで名前なわけ?」
「しょ、うこ…」
「うっわ、ひっど。夏油にやられたの?今治す」
「いい…硝子、今大変でしょ?反転使わないで、普通のお医者さんで、十分だから」
「でもさ、あんた…」
「いいのいいの」
「ていうか、無理。皆出払ってるから私しかいない」
「え。」
「そして私は2徹目」
「硝子は休んで…私、あと少ししたら戻るから…」
「あ、今の名前がこっちに戻るってやつ?うける」

頭を下げている夏油をすり抜けて名前のところに来た家入。
夏油のズボンにしがみついている双子の子供をちらりと見たが、それ以上に名前を心配したらしい。

「五条に聞いたけど、マジなんだ」
「超マジ。夏油くん連れ戻しミッション終了ー…とりあえず横になりたい」
「センセー、名前どこ運びます?」
「先生、私が運びます。私がしたことです、迎えに来た名前をこうした責任があります」
「…名前、学生寮のお前の部屋でいいか?」
「それは勘弁してください…私だけど私ではないので…できれば違う部屋を、用意していただければと…思います」
「私の部屋使う?」
「夏油…お前な…んな子供もいて怪我人いたら名前が休まらない」
「寮の部屋なんて空いてんだから好きな部屋使えばいいじゃん。七海か伊地知に掃除させてさ」
「男子だろ、七海も…その彼も」
「悟も傑も俺と一緒に来てもらう。硝子、悪いが名前を頼む。後で顔を出す」
「先生、美々子と菜々子は」
「ああ……連れて行こう。名前と硝子に頼みたいが名前の状態では無理だろう。それに夏油にべったりの様子だ、離すのも可哀想だ」

夏油が夜蛾と五条と行く前に名前の元に来て「良い子で待ってて」というので名前は思わず嫌な顔をする。同じく近くにいた家入も嫌な顔をする。

「なに?あんたら付き合ってんの?」
「間違ってもない。絶対に嫌」
「だよな」

………、まあ今七海呼ぶからちょっと待って。
とポケットからガラケーを出して短く「あ、私、家入。七海、お前ちょっと来いよ、急ぎな」と言いたいことだけ言ってプツンと切ってしまった。
今思えば、学生の時はこんなだっただろうか、と名前は思ってしまった。
暫く待てば寮の方から金髪の男子の姿が見え、小走りにくる。
どうも彼は学生の時からこうらしい。実に彼らしいな、と名前は内心でニコリと笑顔がでそうだ。

「なんですか家入先輩」
「家入先輩!」
「……苗字せん、ぱい、ですか?」
「ざっくり言うと、名前。10年後の、らしい。夏油を連れ戻すために来たんだと」
「それは…まあ、五条先輩から、聞いてはいましたけど…本当なんですか?大体そんなの映画とか漫画の話で非現実的じゃないですか」
「ははは、面白いことを言うな。呪術師だって十分非現実的だろ。まあ一般企業に行くことにした七海にはもう関係ないか。まあ怪我人の名前運ぶの手伝ってくれよ。私じゃこっちまで怪我しそうだし」
「休み休みなら1人で動けますけど。にしても若い七海くん…可愛い……髪長いね…かわいい…」
「は?」
「何?名前七海と付き合いあるの?七海一般企業就職でしょ?」
「あー…個人的なお付き合い?ほら、七海くん見える側でしょ?そういうので私に相談くるんだよね。五条くんとか夏油くんより相談しやすいでしょ?特級より」

まあ…それはあるな。と家入。
七海建人は今の時点では呪術師ではなく一般企業に就職する。10年後には一緒に呪術師をしているのだが、それは今はまだ誰も知らなくていい。
名前自身動けないわけではないが、普通に動くにはキツイ状態なのは自覚している。戸惑う七海の肩を借りて寮へと向かった。
卒業してから寮には用事がないので行かないが、こう歩くとなんだか懐かしい気持ちになる。日々同じ敷地には足を踏み入れてはいるのだが、向かわないととことん向かうことはないのだと感じた。
寮の共同スペースのソファに降ろしてもらい、家入は七海を見ずに持参した治療セットを準備する。

「女子寮の1階の一番出入り口に近い部屋掃除しろ七海、伊地知も使っていい」
「は!?」
「私は名前の手当するから」
「え、いいよ。手当してあるし」
「素人判断の手当な。反転使わないでいてやる代わりにちゃんと診せな、辛いの名前だよ」
「ちょ、家入先輩、女子寮ですよ?私男子です」
「特例だ。なに、床掃いて寝床の準備だけしたらいい。ヤガセンには許可取ってある」
「ですが」
「じゃあ七海が名前診てくれるのか?」
「………わかり、ました」
「七海くん、ごめんね…」
「名前が謝ることじゃない。ほら、服めくりな」
「なっ!?そ、それでは私掃除してきます」

家入が名前の服に手をかけて迷いなく服をめくりあげるので驚いた七海は急いで共同スペースから逃げるように出て行く。
高専生の彼にはどうやら刺激が強いらしい。

「硝子、硝子からもらった薬あるから大丈夫だって」
「それ、何の基準」
「硝子が準備した基準」
「…見して」
「車のトランクに入ってる。カギはここ」
「持ってくるから待ってな。ていうか、それ早く言え。往復させんな」

馬鹿。と文句言いながらも取りに行くあたり心配をかけているのだと改めて思う名前。
なんだかんだ言って手を焼いてくれる同級生に感謝しないといけない。だが、それと同時に子供にこんなことをさせて申し訳なく思ってしまうのも事実である。
実際名前が学生の時に比べて、今の学生の任務の危険度はかなり低くなっている。
治療系の子が入ってきても家入ほど酷使はされていないはずだ。

「おい名前…名前?」
「…ん?ああ、硝子…」
「顔色悪いな」
「硝子には負けちゃうよ」
「冗談言ってる場合かよ……熱出てる」
「あー…怪我してるし」
「まったく…こんな状態で運転して馬鹿じゃないの。七海のところ覗いたら掃除終わったって言ってたからそっち行こう。歩ける?」
「歩ける」
「そっちで診るから。準備万端なんだよ、この治療薬とか。名前の怪我わかってるみたいじゃん」
「わかってるよ、だって硝子診たんだもん。だから、戻ってきた私がまたここに来るときに持たせてね」
「……やだ。っていっても、こうなるんだろ。覚えておく」

ゆっくりと歩いて行った先の部屋のベッドに横たわり、怪我の具合を見た家入が「あー」「うっわ」と状態が悪いと名前でもわかるようにわざわざ呟くので名前は「やさしくしてよー、特級回収してきたんだからさー」と思わず言ってしまった。

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