呪術 | ナノ
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「おーい名前さん」

任務の無い完全オフが珍しく2日間続いた。
1日目はまず生活用品。トイレットペーパーに洗剤、ティッシュに歯ブラシetc…そのストックを買いに走り、最後に食品を買い込んだ。深夜に終わる事もあるから冷食やカップ麺の買い置きは必需だ。
2日目は自分の為に時間を使う事にして、いつもは黒を基調とした服から一転。
季節に合ったら色を取り込んで、いつもはしないヘアアレンジやアクセサリー、メイクをして、デザイン性の高い靴を履いて出かけた。
本日は一般企業も休みなだけあって街は人にあふれている。
いつもは車から眺めていた世界が目の前にあるのはかなり久しい。

「…真希ちゃん?」

声のした方を向けば高専生の禪院真希が手を振っている。その隣には1年の釘崎野薔薇も手を振っている姿が見える。
同じように手を振ると二人が走って寄ってきた。

「ほらな、名前さんだろ」
「本当ですね、名前さん。えー、その格好可愛いー」
「二人ともお休みで遊びにきてたの?」
「そ。まあ私は野薔薇の付き合いで」
「名前さん高専で会うときと全然雰囲気違うからわからなかった。あ!そのバッグ去年の限定デザイン!!え、名前さんこのブランド好きなんですか?」
「え、あ、これ?これ五条くんが誕生日プレゼントってくれて……え、なに?これ高い?」
「めっちゃ高い。なーんだ、名前さんとブランド談義できると思ったのに」
「野薔薇知ってるか?名前さんの高いモノは大抵悟だ」
「え!?名前さん…もしかして」
「付き合ってはいない。名前さんの名誉の為に言っておく。悟が貢いでる」
「言い方!貢がれて…ない、と…思う……うん、」

へー、ふーん。と二人の視線が色々と刺さる。
確かに誕生日プレゼントと称して色々と貰った経験はあるが貢がれているわけではない。
あの御三家の五条家の御当主なのだから金に執着がなく、「あ、これいいんじゃない?」という軽いノリでプレゼントをしてくるだけなのだ。
それこそ高専だった時に五条が誕生日だというので持っていたお菓子をあげた程度の名前の感覚で五条もしてくるのだ。

「彼氏でもないのにプレゼント使う系なんですね」
「物に罪はないから」
「確かに。物自体は良い物だから使わないと損ですよね!」
「ま、悟にしたら金なんか腐る程あるんだからな。経済くらい回してもらわねえと」
「名前さん、私達これからデパコスみてからお茶して帰ろうと思うんですけど一緒にどうですか」
「え、でも…」
「いいじゃん。女の術師少ないんだし、先輩の話も聞きたいしな」
「そうそう!」
「……休日に仕事の話聞いて楽しいの?学校じゃないのに?」
「違うわよ。それは口実。名前さんて言わないとわからない系の人?彼氏いないの」
「うん、いないよ!」
「……………あ、いや、その。迷惑でなければ一緒に遊びませんか」

名前があまりにいい声で返答するのと勢いに押された野薔薇は口ごもりながら思っていた事を名前に言う。
真希は名前とは高専に来てからではあるがどんな性格をしているか知っている。あの五条悟の先輩が素直なはずがないと言わんばかりに野薔薇を見てニヤついて見ている。

「でも…私、ほら、二人とはかなり齢はなれてるし…ね」
「おいおい野薔薇聞いたか?名前さんは私たちが子供だから駄目だとよ」
「その煽り方、五条くんに似てるね」
「は!?」
「そうやって五条くん人怒らせるよ。まあ本人無自覚だけど」
「真希さん…」
「五条くんは高専からの知り合いだからね、ちょっとやそっとの煽り耐性は付いているつもりよ」
「くそ…っ、アイツに似てるとか屈辱以外のなんでもない」
「わかる。五条くんに似てるとか本当屈辱だよね…前禪院の人に言われて腸煮えくり返りそうだったもん私」
「ウチの家系の人間が悪かったな」
「いいの、気にしないで。私も『さすが御三家の禪院家はお口が上品でいい勉強させていただきました』って言ったし。呪術師の家系なんぞ基本クソだからな」
「それな」
「えーちょっと私も仲間に入れてくださいよ」
「野薔薇ちゃんも悪口言いたいの?」
「そっちじゃない!まあいいわ、名前さん、一緒に行きますよ、はい決定」

名前の両サイドに二人がしっかりと回り込み、名前の腕をとって自分の腕をからめる。言えば名前は両手に花状態で両サイドに女子高生(女子高専生)、はたから見ればさぞ仲の良さそうな事だろう。多少真ん中の女性が困った様ではあるが、知らない人間からしたら些細な事だ。

二人に連行されるように連れてこられたデパート。
野薔薇が欲しいと言っていたブランドのコスメコーナーには名前が使う価格帯とは雲泥の差がある。
野薔薇が嬉しそうにカウンターに座っているのを眺めながら並べられている宝石の様に輝くコスメを眺めるていると真希が来て難しそうな顔をしている。

「どうしたの?」
「いや、これ、野薔薇何が楽しいんだと思って」
「野薔薇ちゃんの場合、ブランド物を使っている自分が好きなんじゃない?ブランドに詳しそうだったし」
「そんなもんか?」
「真希ちゃんも高い呪具使うと楽しいでしょ?その感覚が近そう」
「えー…」
「このリップ真希ちゃんに似合いそう」
「……化粧しないからな、わからん」

この仕事だと化粧しても意味ないからね。と名前も頷く。
頷くが化粧や化粧品が嫌いなわけではない。仕事の関係上しても意味がほぼないからしないだけだ。
着飾っても、化粧をしても相手は呪霊。呪霊は褒めてくれないし褒められても気持ちが悪い。自分の気分をあげるものだと思っていても、その武装は名前自身を振るえ立たせることが無かったからだ。気に入ったリップをしても呪いを弾き返す事はできない、アイシャドウを塗っても能力は上がらない。
分かりきってはいるが、自分を奮い立たせるものにはなりえなかった装飾品。

「真希さん、名前さん。どっちがいいと思います?」
「私に聞くのか?野薔薇」
「んー、そうだな。右のほうはナチュラルで可愛くて良いと思うし、左は大人っぽくて素敵だと思うよ」
「迷うー。名前さん上手すぎ。あともう1色気になってて」
「タッチアップしてもらっちゃえ」
「えええ、いいんですか」
「いいよ。ね、真希ちゃん」
「ああ、うん。名前さん野薔薇に甘くね?」
「真希ちゃんにも甘いつもりだけど?」
「………ふーん」

じゃあこれも。と後ろ姿でわかるくらいにワクワクしている野薔薇。
ニコニコとしているビューティーアドバイザーは野薔薇に言われるままにタッチアップを素早く仕上げる。

「どうですか」
「んー、それなら私はさっきの色のどっちかが良いと思うな。今日の格好とは合わないかな」
「真希さんは」
「私も」
「んー、んー……じゃあさっきの二つ買います」

ビシッと指を二本立てて購入を決めた野薔薇。
化粧をさっと直してもらい購入したコスメをブランドバッグに入れてもらってご満悦だ。
元々欲しかったモノが手に入ったのだからかなり機嫌が良い。

「二人に来てもらって良かったー!最高!」
「そりゃどうも。ほぼ名前さんのアドバイスじゃねえか」
「真希さんだっていいって言ってくれたじゃないですか。名前さんも何かコスメ買いましょ。リップとか下地とか、アイシャドウとか。どこのブランドですか」
「野薔薇聞いて驚け。化粧品も貢物だぞ」
「は!?」
「七海さんとか伊地知さんとかのな」
「違います、自分で買ってます。変な誤解与えないでください」

貰った事はあるけども。という言葉は飲みこんだ。
ただ変な誤解は止めてほしいのは名前の本心である。名前が後輩である二人に誕生日やらなんやらでプレゼントを贈ったお返しの様なものだ。
最近では食事の方が後腐れない事に気づいてそうしているが、等級に見合った給料が一応あるので後輩にあって困らない物をあげていた。
とくに一度一般企業で働いていた七海はそういう事、いえば一般的にコレを贈るとこういう意味だ、というのには詳しく前置きとして「お世話になったので」と付いている。

「そのリップは」
「自分」
「下地」
「全てにおいて本日自分です」
「と言う事は、やはり貰い物もあるわけですね」
「……本当五条くんの教え子って感じがする…」
「ぐは…」
「五条くんに似てると言われると皆ダメージ受けるわな」
「悟だぞ?」
「悪い部分は全部五条くんに擦り付けよう、それがいい」
「わー名前さんクズ」
「クズの先輩するにはクズでないと出来ないのよ」

名前さんやべえな。と真希と野薔薇が笑う。
その後は化粧品売り場をゆるゆると見て歩き、このブランドのリップがどうだ、やれあそこのブランドの基礎化粧品はどうだ、そこのブランドはパッケージが可愛い。と野薔薇のコスメ知識を披露しつつそれに付き合った。
真希さんにはこれが似合いそう!名前はこっちかなー。とリップやチークの色を指したりネイルを見ては「この絶妙な色が最高!」と笑っていた。
それからお茶をしに野薔薇が前から来たがっていたというカフェへ。

「あー楽しかった」
「野薔薇ちゃん博識だね、驚いちゃった」
「ふふん、この程度で驚いてもらっちゃ困ります。またコスメ見に行きましょうよ」
「やめとけ野薔薇。名前さんそういうの興味ないぜ」
「えー」
「名前さん自分のなんて何も見てなかっただろ、そういう事だ」
「……じゃあ、名前さん。人のなら見るって事ですね。ねえ真希さん」
「…………野薔薇ちゃん顔恐いよ」
「今度休みいつですか。私選んでほしい服とか靴とかコスメとかあるんですよ」
「視点を変えたな」
「………野薔薇ちゃんと真希ちゃんが可愛くなっていくのは興味あるわ私」
「げ。」
「じゃあ決まり!」

ついでに新しいカフェとか色々調べておきますね!と野薔薇が笑い、真希は巻き込まれたと言わんばかりに「げー」と文句を言いたそうにしていた。

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