呪術 | ナノ
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「……名前」
「あ、はー?や、ちょっと、油断?焦り?が、あって…あ、大丈夫。運転できるから」
「手当は」
「自分でするから大丈夫。というか、なんで居るの」
「心配だから来たんだよ。2人は帳と外のギリギリ中にいるし呪霊を護衛に付けた」


しゅるるる。と名前が呪具で戦っていた呪霊が現れた夏油の手の中に収まった。
不安になってきてみれば、そうらみろ。と言いたげな顔をしている夏油に名前はバツが悪くて年甲斐もなく「へへへ」と誤魔化してみる。

「それ」
「…これ?」
「そう。見せて」
「………見て、どうするの」
「夏油くんなかなかそれ見せてくれなくてさ、前から見てみたかったし、持ってみたかったんだけど…いいかな」
「………もう1人でこんなことしない?」
「私1級なんだけどな…わかりました、ここにいる限りはしません」
「約束だからね」
「うん」
「…仕方ないな、はい」
「さんきゅー」

手渡して貰った呪霊玉を名前はサッと懐に入れて「じゃ、行こうか」とヒョコヒョコ歩き出す。
その行動がまるで自然だったので、夏油は思わず頷きそうになったがスルーは出来ない。

「ちょ、名前…返して」
「子供はこんなもの飲まんでよろしい。預かります」
「名前…?」
「10年後に返してあげる。まだ欲しかったらね」
「ちょ」
「助けてもらった立場で言いづらいけど、今夏油くんは子供で私は大人。出来る限りで守ってあげたいってだけ。高専に戻ったらどうせまたしなきゃでしょ?これは私が勝手にしたお仕事で夏油くんには関係ない。でも、これが欲しいなら返す、でも10年後ね」
「………怪我、してるから肩貸すよ」
「いや、でけえよ。とどかんわ」

車に戻る途中に居た双子を回収し、車に戻るが手当を先にしたいと夏油に双子を車に近づけない様に相談する。
怪我の具合の確認と、そんなのを子供に見せるべきではないという配慮から。切り傷くらいならば問題ないが、これは子供に見せれるレベルの上を行っている。

「私がするよ」
「誰が子供を見るの?子供だけにしたら危ないでしょ」
「いいこにできるよ?」
「いたいの、だめだよ」
「大丈夫、私が手当てするからね」
「じゃあ、だいじょぶね」
「げとうさま、わたしたちのもしてくれたから」
「え、ちょ…」
「さ、脱いで」
「えっち」
「名前」
「冗談。でも平気、1人でできる。硝子直伝だから」
「硝子?」
「そ。夏油くんと戦うからって応急処置と痛み止めやらそういうの一式あるの」
「私、そんなこと名前にしないよ」
「そうね。ほら、あっちで待ってて」

しっし。と手であちらへ行ってくれと態度で示す。
じわりじわりと痛みが増している気がする。早く手当をしなくてはならない。

「私の責任だから。菜々子、美々子」
「「はい」」
「後部座席に座って、私が良いって言うまで手で目を隠しておける?」
「「はい!」」
「夏油くん…?」
「さ、乗って。名前は手当できるように服あげて」
「自分で出来るから」
「私が昨日止めたから、時間がないんだろう?なら私が負わせた怪我でもある」
「…変なところで責任感持つなぁ」
「早くして。そうじゃないと痛みが増すし悪化する」

渋々名前は負った怪我を見せるために服をまくり上げる。
腹部、腰、脚。急所こそギリギリ避けてはあるがダメージは大きい。トランクに投げ入れてあった家入の救急セットでテキパキと手当を始める。名前から見ても実に手際が良い。

「…上手だね」
「まあね。私反転術式使えないし。男女の差はあるにしても、基本構造は同じだから」
「いっ!」
「状態はあまり良くないから早く高専に戻ったほうがよさそうだね。硝子に治してもらおう」
「硝子には頼れない」
「え」
「今の硝子は今の時代の仕事があるでしょ?戻ったら治してもらう」
「は?何言って…」
「薬飲んでしのぐ。さて、移動再開しますか」
「名前」
「2人とも、いいよ」
「…名前、」
「夏油くんは助手席に乗って、出発しよ?私が動けなくなる前に」

そういわれてしまえば夏油は黙るしかない。
恐らくこれから悪化して辛くなるのは名前で、それに対して自分には運転免許もないし子供を2人に成人女性を連れていけるだけのナニかもない。
言いたいことはあるが、黙って助手席に座ってシートベルトを締めるしかない。

「具合悪くなったら言って」
「なる前に着きたいね」
「もういいの?」
「なおった?」
「治ってないよ。でも、悪くなる前に目的地に着きたいの。ちょっと強行突破になるけどいいかな?」
「きょーこ?」
「とっぱ?」
「急ぐって事だよ。ただし名前、私が不味いって思ったら止めるからね車」
「どうやって?運転私なのに」
「キスする」
「うわマジか、気持ち悪」
「具合悪いじゃないか」
「そっちじゃない、精神的にだよ」

心配して手を出してきた夏油の手をパシンと叩き落とし、エンジンをかけてハンドルを握る。
痛みはあるが運転は出来る。力も入ると確認して痛み止めの効果を待つまで時間は無いからと車を出発させた。

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