呪術 | ナノ
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「やっほー五条くん、突然で悪いんだけどこれ読んで。あと車の用意に現金も欲しいな」
「…は?な、おま」
「おっと無駄話をしている余裕はない。五条くん、夏油くんを連れ戻したいでしょ?四の五の言わずにさっさとしな」

呪術高専3年、五条悟。
その五条の前に突然現れた苗字名前。五条の六眼は当然ソレを苗字名前と認識し、そして五条自身もそう認識している。
名前で間違いない、間違いないのだが違和感がある。
そう、成長しているのだ。
同じ学生である名前の面影を残しながら成長している。

「な…」
「ほらほら、時間がないよ?手遅れになるかもよ?夏油くん、迎えに行かなくっちゃ」

これこれ。と手紙を渡してくる名前に普段では気圧されない五条が気圧され、言われるままに手紙を受け取り中身を見る。
何も書いていない、否、六眼だけが読める何かで文字を感じ取れる。
ざっくりと言えば「10年前の僕、五条悟へ。10年後から名前を送るから傑を迎えに行かせな。そうじゃないと絶対後悔する、名前を信じろ。10年後の僕、五条家当主の五条悟より」とふざけたことが書いていある。
しかしこれは間違いなく五条悟がしていることで間違いがない。六眼がなければできない事、伝言、手紙なのだ。

「意味…わかんねえ…」
「今そんな時間がないのはおわかり?てか、これ五条くんが五条くんに書いた手紙なんだけど?」
「おま、え…名前、だよな」
「うん。五条くん、ここで夏油くんの運命変わるかもしれないよ。どうする?」
「傑、戻ってくるのか…?」
「私が居た10年後にはいるよ、夏油くん。すごーく元気にしている」
「マジか…」
「マジマジ、超マジ!五条くん言ってたよ、ここで迷ってたら傑帰ってこれなかっただろうから僕、即決しな!ってね」
「ぼ、僕…?…っは、そうか、ああ、わかった。騙されたと思って信じてやるよ」
「うわ、生意気!でもまあこっちの方が五条くんって感じがする」
「あ?」
「ちなみに、ここの私は10年に行って五条くんと夏油くん、硝子とか諸々に色々可愛がられる」
「…傑、戻ってくるんだな」
「もち!まあ私の頑張り次第かな?特級にどこまで通用するかわからないけど、1級の意地でどうにかしてみるよ」
「なんだよ、1級かよ」
「うるさいな。五条くん、これから君には私の事を色々誤魔化し、また夏油くんか戻るためのサポートしてもらうんだからね」
「あ?」
「がくちょ…じゃなくて、夜蛾先生への説明とか色々。車や現金の準備は五条家パワーで頼むよ?」
「お前面倒なこと投げただろ」
「だって五条くんがそれでいいって。ま、私これから修羅場だし?当主、よろしくね」

確かに名前ではあるが、学生であった名前とは性格が違う。
あの控えめで後ろにいた名前がここまでグイグイくるのか。いや、急いでいる、焦っているのかもしれない。名前を怒らせて怖い思いをしたのを思い出せば、まあ納得できるかもしれない。名前は大人しそうに見えて案外怖い。

「車はどうしたらいい、現金はどのくらい必要だ」
「話が早くて助かるよ、五条くん」
「うるせえな」

順に必要なものを名前は羅列する。
随分出てくるなと思えば名前が「って、五条くんが言ってた。まあ必要なんだろうねー、あと戻ってきたときにお風呂と食事、あと私結構な怪我してくるって話だから手当できる人用意しておいて。硝子は駄目、今の時代の人を助ける手だから」とまた酷いことを言う。

「お前…自分が大怪我するのわかってて反転術式拒むのかよ」
「全員が五条くんみたいじゃないからね。硝子の手を待っている人はたくさんいるからね」
「………」
「ほら、早くして。うわ!ガラケー懐かしい!」
「あ?」
「あー、ゴメン。手配お願いしまーす」
「お前本当に名前かよ…」
「ははっ。特級2人が近くに居たらこうもなるさね…」

何かを含ませる言い方に眉を顰める五条だが、今は名前が夏油をどうにかすることができる、という可能性に賭けるしかない。
いつもの名前の少し距離を置いたような感じではなく、比較的ぐいぐいとくる名前に少し戸惑いを覚えつつも携帯で名前が言う通りのものを集めるように指示を出す。

「おい、さと…名前、か?どうした、そんな恰好で」
「あ、先生。ほら、五条くん、出番出番。まず先生を納得させて」
「あ?お前、今そこに黙らせるって含ませただろ」
「先生、私これから夏油くん迎えに行くので」
「…は?何を、お前…」
「あー、先生、これ、名前」
「ああ…」
「なんか、10年後からきて、傑助けてくれるんだって」
「俺を馬鹿にしているのか」
「してません。まあ信じてくれるとは思っていないので、それは想定内です。とりあえず時間がないのでざっくりと説明しますと」

普段の名前とは思えないほどの饒舌なしゃべり。それこそつらつらとよくそこまで舌が回るものだという感心させ覚えさせるほど。
反論の隙を与えず、また疑問さえも持たせない言葉選びに五条同様に夜蛾さえも黙ってしまった。

「ということです。まあこれ、ほとんど五条くんが考えて覚えさせられた文章なんだけど」
「俺かよ」
「誰よりも私に教え込んだからね…夏油くん大好きなんだね、五条くん」
「うるせ!!」
「ということで、先生も共犯になってください」
「…………わかった」
「わかるのかよ!」
「悟が名前に協力するという事がそういう事なんだろう。なにをしたらいい」
「さっきの以外だと、私は任務で出ているってことしておいてほしいです。ほら、私一応学生生活真面目にしてたので、ここでサボりだのなんだのって付くのは個人的に嫌なので」
「わかった」
「わかるんだ…」
「あと、じゃあ、私夏油くんちゃんと連れてこれたらビール飲みたい!先生の奢りで!缶ビールでいいんで!」
「………なぜだ」
「ご褒美ですよ。だってボロボロで戻って、夏油くん戻ったワーイ!だけじゃ私のご褒美ないし。五条くんも夏油くんも硝子も皆未成年でしょ?おねだりできないし」
「…わかった」
「わかるんだ…」

嘘だろ。という顔で名前と夜蛾の顔を交互に見ては夜蛾の対応に「うそぉ…」という表情になる五条。
まず夜蛾が名前を受け入れたことも信じられない。確かに五条が信用した、という点で信用したのかもしれないが、それにしてもである。

「一番いいビール!」
「わかった」
「やった!やる気俄然出てきた!さっさと夏油くん殴って連れ戻そう」
「できるのか」
「まあ居場所はわかっているので?あとは夏油くん次第」
「俺も」
「ダメ。それは絶対にダメ。五条くんが一緒じゃ夏油くん戻ってこれないから、ここは頼りないけど私に任せなさい。死なない程度に頑張ってくるからさ」
「1人で大丈夫なのか、他に呪術師の手配するが」
「1人じゃないと駄目らしいので。まあ簡単にはやられないつもりではいます。五条くんと夏油くんに散々鍛えられたので?まあ多分、死なないと思います。多分、おそらく?あとは運?」
「…………」
「だって夏油くん手加減とか絶対しないでしょ?!硝子が私ボロボロだったって言ってたし!」
「まあ…」
「無理、するなよ」
「いや、無理しないと連れ戻せないので無理はします。死なない程度に」

本当に1人でいいのか?と再三名前に確認を取る夜蛾。しかし名前は「1人でやらないとなので」と断る。
五条も一緒に行きたいと直接的ではないが言えば、やはり断る。
意思が固いというよりも、「名前が1人でやらねばならない」という事なのだろう。
名前自身もあまり乗り気ではないのは雰囲気からわかるが、それでもダメなのだろう。

「おい名前、準備ができたぞ」
「わ、早い」
「五条家舐めんな」
「舐めてないよ。うわー夏油くんと殴り合うの怖いなー戻ったら五条くん報奨金ちょうだい」
「お前……わーったよ、10年後にな」
「うわ、覚えておこ。じゃあ先生、いってきます」
「………ああ、気を付けて。ちゃんと戻ってくるんだぞ」
「それは夏油くん次第」
「傑も名前なんて殺せねえよ。お前みたいな雑魚」
「えー?私コレでも夏油くんに私と一緒にこない?って誘われてるんだよ」
「なに、傑高専にいねえの?」
「独立してやってるよ。まあ、何を、とは言わないけど」
「あ?」

誤魔化すように言う名前を不信に思いながらも五条は高専内に準備させた車に向かった。
これで夏油が戻るならば、という一抹の期待を持って。

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