呪術 | ナノ
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「さて、今日が5日目。名前が戻るまで2日だ」
「7日間の入れ替わり?」
「そう」

へえ。と名前は正面に座る夏油を見て気の抜けた声で返事らしきものをする。
名前が今わかっているのはここは10年後で、やたらと同級生が構ってくる。
家入は美人になって、夏油は色気が増しているし、五条は…あまり変わらない。外見が。
そして高専の10年後には女子学生がいて美人で可愛いという事。五条が色々と手を回しているのだろう、あの重苦しいような、まとわりつくような悲壮感がそこにはなかった。

「…ねえ、なんで私夏油くんとこんな向かい合って、改まってお話する感じに?」
「大事なお話だよ。あ、お茶が欲しい?いい和菓子があるけど食べる?」

いらない。というように名前は頭を振る。
朝食を一緒に食べ、双子は今度はこちらの仕事だと出て行き、夏油に「おいで」と言われてきた。そしてら冒頭の話である。
怒涛の7日間、あと2日ある。
未来の名前が何をしているかは、なんとなく理解しているつもりである。
逃亡中の夏油を捕まえて、連れ戻した。という概要はわかる。同級生で話している時にポロポロというのだろうか、断片的に理解している。まあ同級生らは名前に対して全く配慮、いや、隠そうともしてないの。

「私、夏油くん助けられた?」
「うん?ああ、もちろん。だからこうして呪術師をしているんだよ」
「じゃあ、五条くんも助けられたんだね。未来の私、凄いな…私、できるかな」
「できるよ。私と悟が頑張るから」
「え、それはスパルタ、的、な…?」

ふふふ。と正面にいる夏油は意味ありげに笑う。
実際のところ、体術面は逃亡後に五条とともに磨き上げたといってもいいだろう。未来の名前が「五条くんと夏油くんにめちゃくちゃしごかれた。これのためだったか…」と漏らしていた。事実、名前と未来の名前では実力の差が明白で、1級という名を体現しているようだった。特級である夏油には及ばないが、それでも夏油の動きの癖を理解してそれに打ち込むくらい芸にもならないと言っていいほど。

「あ、そういえば…」

ふと思い出した夏油。
未来の名前に「うわ、若い夏油くんと五条くん薄いね…今じゃもっと分厚いの、鍛えてるんだね…」としみじみ言われたことを思い出したのだ。
ついでに「私、ここの骨盤の上の筋肉の盛り上がり好きなんだよね」と言われ鍛えたことも。

「どうしたの?」
「いや?名前も10年で変わったなって思って」
「そ、そうなんだ…お仕事、いいの?」
「今日はオフだから。実はあの子たちから2人でデートに行けと言われていてね」
「なんで?」
「え?」
「なんで、夏油くんとデートなの?」
「え?」
「付き合ってるわけじゃないんでしょ?」
「……実は私と名前は結婚を前提に付き合っているんだよ」
「ダウト。お前昨日僕に言ったの忘れた?」
「五条くん…」
「おはよ2人とも、遊びに来ちゃった」

てへ。と年甲斐もなくポーズをとる五条。
オフなのだろう、高専の服装ではない。名前の隣にすとんと腰を下ろし、名前の前にあったお茶を勝手に手に取って一口。

「なかなか良い茶使ってるじゃん。茶菓子ないの、茶菓子」
「さっきあるって言ってたよ」
「マジで。傑、だしてだして」
「名前…それは言わないでよ、名前のために用意したのに」
「あ、ごめん…?五条くんどうしたの?」
「遊びに来たんだって。本当は硝子もつれてきたかったんだけどさ、まだ戻ってないんだよね」
「残念…硝子……」
「硝子のところには泊ったじゃないか」
「…硝子のとこに泊まって、傑のところに泊まって、僕のとこ泊まってないね名前」
「え、……う、ん?そう、だね…あ、泊まらないからね」
「そうだよ悟」
「僕だって名前で遊びたい」
「今だって遊んでいるのに…?」

信じられない。という目で五条を見る名前。
これに対して五条は「可愛がってるんだけど!」とぷんすか怒るふりをする。成人男性がそんなことをしても少しも可愛くはない。まして10代である名前から見れば、同級生(約10年後)で高身長の体格のいい男性。怖い方が上回るというものだ。

「名前」
「な、なに?」
「真希と野薔薇と遊びに行こうか」
「…え?」
「悟、いくら君と言えど名前を猿と関わらせるのは看過できない」
「それはお前の考えだろ?名前はそんなの関係ないじゃん。名前だってあの2人と遊びたいでしょ?どうせ傑が連れてくところなんてお高いとこばっかで楽しくないっしょ。ゲーセンとか楽しいよ!お財布は全部僕持ち」
「悟」
「だんだよ傑。僕ばっか名前と時間ないの不公平じゃん」
「君は普段高専にいるんだから名前と時間あるだろ!」
「五条くん暇なの?」
「めっちゃ忙しいよ。僕特級だもん、名前だって忙しいよ」
「ブラック?」
「ブラックブラック、混沌ブラック」
「それに比べてうちはホワイトだよ!」
「やってることはブラックだけどな」

売り言葉に買い言葉。いや、名前を出しに2人で遊んでいるともいえるだろう。
仲が良い分お互い好きなことを言うのは相変わらず、むしろ学生の時よりも棘があるような気さえする。
逃亡した、という夜蛾の言葉を聞いて暫く五条は酷い状態。いや、その最中。それが未来ではこうしているのだから、未来の名前のやったこともなかなかに捨てたものではないのだろう。
思わず笑うと2人に「なにさ」と言われてしまった。

「だって、2人のケンカ、この前まで見てた気がするけど懐かしいなって。未来なのにね。大人になってもそんな風にケンカするんだね」
「………」
「………」
「どうしたの?」
「いや、今まだ年下の名前の方が大人だと思って」
「じゃ、名前は僕と真希と野薔薇と遊びに行こうね」
「え」
「ほら、未来の後輩と遊ぶのも大切でしょ?名前後輩の女子いなかったし」
「後輩の、女子!い、き…たいな」
「じゃあ決まり!ってことで傑、名前は貰っていくから。さあさあ行くよ」
「…ぐ……名前が、いうなら……夕食までには帰っておいで」
「は?何言ってんの?名前は僕が貰っていくんだよ」

じゃあな傑!と名前を小脇に抱え、いい面で小悪魔的に笑って瞬時に姿を消す。

「あいつ…!」

言えばここは室内で名前は靴を履いていない。
五条の事なので気づけば靴を買ってやるだろう。しかしそれまでを考えると夏油は頭を抱える。
あの話しぶりからすれば繁華街、若い猿が賑わう場所にいくはず。と唇を噛む。確かに名前は呪術師と非呪術師を差別をしない人間である。それでも、それであっても面白くはない。ついでに五条が連れ去ったというのも。
東京という小さな土地を考えれば若者が好む場所も絞られる。が、それに関して名前は同じ高専の女子というコミュニティを楽しみたいと言っていたわけである。

「ああもう…!」

色々と考えたが、ただイラつく心情だけを腹に抱えて座りなおすしかできない夏油。
眉間を親指で撫で、ただただぶつけようのない苛立ちをどうしてくれようと悩んだ。

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