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「名前さん誕生日オメデトー!!」

高専の、勿論学生が普段立ち入る事のない呪術師のフロアで名前が七海と雑談をしていると五条が袋を持って押しかけてきた。
台詞通りであるなら、それは誕生日プレゼントなのだろう。
はい。と渡されて名前は「ありがとう」と礼を言っている。

「……名前さん、お誕生日、なので?」
「え、ああ、うん」
「こっちは津美紀、これが恵。んで、これが僕ー」
「沢山だね、あとで二人にもお礼の電話しないと」
「すみません、何もご用意せず…」
「え、いいよ、そんな」
「えー七海ってば名前さんに世話になってるくせしてプレゼントも用意してないの」
「……ぐっ」

気にしないで。と名前は笑うが七海としてはそうもいかないだろう。
目の前で「誕生日オメデトー」と言われ、目の前でプレゼントを渡されたのだ。
そんな事をクズと名高い五条悟にされてしまえば後輩といえど七海の立場がない。それに名前には学生時代から色々と世話になっている。
勿論名前の誕生日を知らないわけではない。ただ抜けていたのだ、それゆえにこうも煽られているのがわかるから悔しい。別段特別な感情を持っているわけではないのだが。
これが伊地知であったならもっとスマートに行っただろう、しかし相手はあの五条だから余計に面倒なのである。

「こ、このあとのご予定は……」
「任務があるよ、七海くんもいっしょの」
「その後です」
「なになに?七海ってば名前さんを食事にでも誘うつもりな訳?へー」
「五条くん。七海くん、気にしなくていいよ。これいつも子供の付き合いで五条くんもくれるだけだから」
「ちょ、名前さん酷くない!?」
「普段の行いだわね。私は七海くんが健やかに生活してくれることが最高のプレゼントだよ」
「うわババクサ」
「うるせー人生のささやかな楽しみだったんだからな!今は津美紀ちゃんと恵くんが私の楽しみ」
「………復職するには反対だっというのは知っていますが」
「あ!気にしないで、本当。私の都合だし、ね?」

全然、いや、ちょっとアレだけど、うん。全然気にしないで。と手を振る名前。
名前自身もまさか七海が誕生日プレゼントからそこまで気にするとは思っていなかったので気を使ってアピールをする。
七海が復職して悲しいのは自分の都合で本人が気にすることは全くない!と焦る。
それとは反対に七海はそれはもう終わった事と思っているのでいいのだが、それよりも煽るようにしていた五条のアレである。

「で、名前さん」
「なに?まだ用事があるの五条くん」
「七海と僕の対応の差が酷くない?僕だって可愛い後輩じゃん?」
「え、可愛い??え、どのあたりが?え?……え?」
「泣くよ?」
「2m近い男が泣くの?え?お屋敷帰ってからの方が良いと思よ、一応御当主様だし…嫁さんの膝か胸で、うん」
「いませんけど!?」
「引く手あまたのくせにー!何年か前にお屋敷伺ったらお見合い相手の女性に嫌味をたらふく言われた事根に持ってるからね、私」
「え、それ初耳なんですけど?それ誰」
「知らないよ、その時のお見合い相手の名前なんて」
「さすが御三家、違いますね」

さらりと煽られた恨みを晴らす七海。
ちらりと腕時計を見ればそろそろ時間である。名前に絡む五条に「そろそろ時間なので行きましょう名前さん」と割って入る。
時間前行動派である七海と名前は時間を気にしない五条とは、まさに性格の不一致なので名前はさっさと話を適当に終わらせて歩き出す。
しかしそうはさせないと長い脚を使って名前の横に並んで「他に言われた?それいつ?何年か前って、何年?顔は?覚えてる?」と面倒な彼氏以上に面倒になっていた。

「ええい!うるさいぞ五条くん!これから任務なの!仕事、労働です!!」
「仕事と僕どっちが大切なの!?」
「仕事でしょうね」
「仕事ですけど!?」

名前さんの場合。という言葉はあえて言わない七海。七海とって労働はクソではあるが名前にはそうではない。
名前には呪術師という仕事しかない。と名前本人が思っているからだ。それを七海は知っている、それ故五条以外が同じことを言っても同じように返すであろうと思っている。

「えー……じゃあ、最後」
「はいはい最後最後」
「お誕生日の感想は?」
「………今まで生きてきて大変申し訳なく思っております。弟の件が済みましたら命を絶つか早々に呪術師を辞めて姿を消したい所存にございます。五条の御当主様には大変お世話になりました」

プレゼントを持って、曇りのない真っ直ぐな目で、名前は目隠しをしている五条の目を射抜く勢いだった。

「以上お終い!」
「…………ご愁傷様です、五条さん」
「そこは私では?」
「では仕事終わりましたら何かご馳走させてください。20歳まで私の誕生日に食事をご馳走していただいたので」
「えーいいよ。七海くんこそ彼女とご飯食べなよ。その話を聞かせてもらうだけで私の寿命1日延びる」
「生憎この仕事ですのでそのような関係の女性はいません。名前さんが気を使ってくださる理由はないです」

名前の言葉に固まってしまった五条を置いて二人は歩いて駐車場に向かう。
待っていた伊地知に「その荷物は…?」と聞かれると名前が答える前に七海が「名前さんのお誕生日だそうで」と答える。

「じゃあ伏黒のお子さん2人からですか?」
「そう。ついでに五条くんも入ってるんだって」
「わあ…高くつきましたね」
「本当。無駄に高いから恐いんだよね…任務中車置かせてもらいたいんだけど」
「はい、わかりました」

車での移動中に名前のスマホが鳴るも名前は嫌な顔をして画面を見つめていた。
恐らく五条が鳴り散らかしているのだろう。
無視するのも後が面倒だし今出ても面倒だし、と名前の顔からよく分かる。
耐え切れずに伊地知が「出ないんですか?」と聞いてみるも名前は「五条くんからで出たくない」と画面を睨んでいる。
それから数コール。今まで鳴っていたスマホが黙ったと思えば伊地知のスマホが鳴り響いた。

「…ゴメン伊地知くん。私寝てる事にしておいて」
「ええええ………」
「では私が代わりに出ましょうか」
「それはそれで面倒だから。うん、私寝てる事にして。んで、スマホなってて唸ってたとでも言っておけばいいから」
「そ、そんな…」
「大丈夫、伊地知くんが何かされそうになったら私が守るから」

いつも五条に迷惑を掛けられる側同士ではあるが、名前の場合はその場数というかレベルが違うなと二人は察した。

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