呪術 | ナノ
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「よく似合ってるじゃないか」
「でしょー?」
「夏油様、名前さんにどのかんざしが良いと思いますか」
「そうだね…」

どれどれ。とまるでコレクションかと思うほどの髪飾りを物色する夏油。
中心となっている名前はされるがまま、となって椅子に浴衣を着て腰かけている。

「これなんて名前に似合うんじゃないかな」
「いいかも!じゃあ髪型はどうします?」
「夏油様も一緒にアレンジしましょう?4人でおそろい」
「いいねー!」
「え、私も?」
「名前さんはどれがいい?」
「私コレがいいと思う」
「それ名前に似合いそうだね」

これ!と美々子と菜々子が持って来て名前に見せ、「色はこっちとこっち、どっちが好き?」「名前さんの髪色だとこっちがいいと思う」と名前に聞きに来るようで自分たちで決めている。
こっちだとあの髪型、それだと似合わない。こっちは夏油様もつけられそう。と好きにしている。

「こら、名前にちゃんと聞かないと駄目じゃないか」
「わ、私は別に…こういうのは、多分2人のほうが上手いと思うし…ヘアアレンジだって、私できないし」
「えー!?出来るよ!だって私名前さんにしてもらったことあるし!」
「私も。あ、もしかして私たちが教えたのを名前さんが私たちにしてくれたのかな」
「ありえる!じゃあ、夏油様の髪で練習してみる?」
「え…私、かい?」
「夏油くん…?男性と女性の髪って、違わない?」
「んー、じゃあ私たちのどっちかで練習しよ!」
「菜々子が教えて、私が練習台」
「えーズルい美々子。私も名前さんに撫でてもらいたい!」
「順番にしてもらいなさい」

いや、やるとも何も言ってないんだけど。という言葉を飲み込む。
中心でありながら外野の気分である。
ここで言っても「どうして」「なんで」とくるのがここ何回かのやり取りで経験したのだ。

「浴衣も何着もあるし、このかんざしとか…どうしたの?夏油くんが2人に買ったやつ?」
「いや?これは信者にこういう関係の猿がいたからね、言いくるめて持ってこさせたのさ」
「そういうこと!」
「えええ…」
「名前さんが気にすることじゃないよ?だって猿だもん、呪霊も見えない奴のために私たち任務があるんだし、これくらいしても足りないくらいだよ」
「い、言うねえ……」
「金用の猿だけど、これくらいは献身的にしてもらってもいいだろう?」
「さ、さる…?」
「猿は猿だろう?」

無意識なのか3人の顔が怖くて名前はとりあえず黙る。
無駄に刺激しないほうがいいという本能が働いたのかもしれない。ここは夏油をトップとする集団で名前は部外者で、夏油にだけは絶対に勝つことはできない。

「夏油様」
「なんだい?」
「この浴衣良いと思うけど、なんか…今の名前さんぽくないよね」
「私もそう思う。大人の名前さんならもっと似合うと思うけど」
「ああ、これ?これは戻った時にと思ってね。今の名前ならシックな色よりも明るい方が似合うだろうけど。それは若い私に任せて」
「それも…そうかも」
「小さい時名前さんに着付けてもらったもんね」
「私が?」
「そう!」
「かわいい帯もしてくれて」
「買ったのは私だけどね。着付けができなくて…悟に頼めないだろ?女の子だし」
「津美紀ちゃんにも名前さんが着付けてた」
「積み木ちゃん?」
「あ、まだ知らないのかも。菜々子、しー」
「今のナシ!ナシナーシ!」

名前はとりあえず黙る。ここの世界で異質なのは理解している。そしてこの3人が良くしてくれる理由も、名前からしてみれば未来の自分が何かしているのはわかる。
10年経つと特級である夏油を殴って高専に戻すのだ、とは聞いた。
最初こそ「私が?夏油くんを?殴るの?」と懐疑的ではあったが、ここまで、いえば懐いている状態を見るときっと未来の自分は夏油に何かをしたのはわかる。
それから髪型とかんざしを決め、下駄はそれこそまた後で買おうね。なんていわれて双子のどちらかの下駄を用意された。

「さて!名前さんを撮りまくるよ!」
「え」
「うん!名前さんが戻ったら4人でとろうね!」
「じゃあ夏油様、名前さんの隣ね」
「わかったよ。こう?」
「わっ」
「そんなかんじ!」

えー?という名前の困惑をよそに、3人は「もっとこうして」「ああがいい」「違う、そうじゃなくて」とてきぱきと指示を飛ばして夏油はその指示に従う。
しっかりと腰に手を回され、密着するからだ。少しでも名前が離れようとすれば、きゅっと力が入る。
おかしい、おかしいぞ。と名前は困惑した顔をするが双子の方はまるで無視しているかのように「ほら、名前さん笑ってよ」と言うばかり。

「ち、ちかい…!」
「そう?普通だよ」
「夏油様、名前さん抱っこして」
「やめて!」
「…名前?」
「それは、抵抗がありすぎる…」
「えー?絶対絵になるのにー」
「名前さん、夏油様嫌い?」
「今は…嫌いかも」
「「「え」」」
「えって…」
「「だって夏油様だよ!?」」
「すごい自信…」
「私だよ!?」
「げ、夏油くんですね…?」
「今のうちに夏油様ポイント上げておかないと駄目じゃん!」
「な、なにそれ…」
「夏油様に対する好感度!ここで上げておけば名前さんが10年前に戻った時夏油様と仲良くしてくれるでしょ!?」
「別に…私、夏油くんとは仲悪いわけでは…?」
「うそ!戻った時よそよそしかったもん!」
「……こういう、ことをするからでは?」
「「え」」

うそ!夏油様!と2人が今度は夏油にすがるように見つめている。
これには夏油も困った様子だが、名前の腰に回した手は離れない。
名前が「い”ー!」と唸りながら手を剥がそうとするも、びくりともしないあたり男性で特級である。

「でも、こうやって私という男性に慣れる必要もあるからね」
「なんで…?てか、手を離して…」
「だって私、名前が『10年後の夏油くん、もっと体分厚くなってた。今の夏油くんて薄いんだね』って」
「失言ごめんなさい!」
「という目で見ていたような気がする」
「嘘かい!」
「あ、そうだ。見る?私の体。悟に負けないけど?」
「結構です!」
「遠慮せずに。あ、でもそのことがあって私結構鍛えたんだよ?名前が『大人の夏油くんのここの筋肉が好きだったんだ』って」
「………きんにく?が、すき…?」
「大人の名前さん、前会った時は『夏油くん若い時薄いわけじゃないけど、今と比べると厚みがないよね、厚みが』って言ってた」
「うんうん。それで夏油様筋トレして、プロテイン飲んでってしてたんだよ」

「へえ」と心底興味がないと言わんばかりの反応をしつつ、腰の手を名前は力いっぱいぎゅうっとつねり上げる。それはさすがに痛かったのだろう、夏油は名残惜しそうに手をどけ、もう片方のてで名前がつねり上げた部分をさすっている。

「後で見せてあげるね」
「…え」
「見せるからね」
「え」
「見せるから。戻ったら私の嫉妬心に火をつけるんだ!」
「ええ…夏油くん、別にたるんでるわけじゃないし…」
「駄目、駄目だよ名前!今の私があるのはある意味名前が言ったからだから」

う、うん…ととりあえず頷いた。

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