呪術 | ナノ
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「もう京都戻っちゃうんですか…?」
「っ…じゃあ名前も京都来ちゃう?」
「!い、行きたいです!」
「駄目ー!ダメダメダメ駄目ー!」
「ああん!?なんで手前が言うんだよ、何の権限が…あるな」

くそ。と成人女性の言葉遣いとは思えない言葉が庵の口から飛び出た。
名前からしてみれば通常運転に近いが、それはまだ若いから許される範囲、また先輩後輩という親しい関係の中であれば問題ないだろうが一応は成人で主に活動をしている京都ではない東京での態度。それはいくら何でも名前もあまり良くないのは理解できる。

「今名前は超頑張って傑と戦ってるからね。僕のすることは名前を守ってあげる事」
「なんで五条なの…」
「六眼無下限持ちだからね!最強だし?」
「名前も名前よ…あんたが夏油助けるからこうなるのよ…」
「でも、夏油くん…私、見てたのに、知らないふりしちゃってたし…」
「そうね、名前は良い子だものね。ごめんね、名前を責めてるわけじゃないの」

名前は前から良い子だもんね。と庵は名前を抱きしめる。
名前も名前で「せんぱい!」と抱き返す。言えば同性の友人でスキンシップである。言えば学生からのノリであって、それ以上も以下もない。現在の名前も家入も庵も会えば挨拶と言わんばかりにしている通常運転。

「…というかさ、なんでこんな大事なこと私知らないの?」
「歌姫部外者じゃん」
「ぶ、部外者ってアンタ」
「だってそうじゃん?傑逃走した時歌姫卒業してたっしょ?名前が10年後から来て僕にその証明だって文章見せて仕方なしに信じて送り出したわけだし」
「仕方なし…」
「あ、別に名前を責めるわけじゃないよ?だってどう見ても僕の字と呪力籠った文章で疑いようのない物で名前は名前で早くしないと傑が取り返しつかなくなるって脅すし」
「頑張ってる名前に対してそれは酷いでしょ」
「名前も必死だったしね。まあそれで傑と子供をボロボロで連れてきたからまあ、うん。こっちの名前が戻ったら美味しいの食べさせてあげるよ」
「……名前はなんでこんなクズを助けるためにそんな大変なことしたのかしらね…」
「な、なんででしょう、ね…10年間に何かあったんですかねえ…」
「まあそれから傑すげー名前に懐いてたし?」
「猛獣使いかよ」
「あ…だから、夏油くん私に構うの…怖い…」

恐いの?と庵が聞けば名前は素直に頷く。
庵からしても五条と夏油の体格は大きく身構えるときがある。それが10年前の名前であれば余計怖いだろう、10年前とは厚みが違うのだ。
それがなんであれ迫りくるのは恐怖であるのは否定できないし、するつもりもない。

「名前、元気でね」
「歌姫せんぱい…」
「もっと一緒に居てあげたいけど新幹線の時間がね…」
「五条くん…」
「駄目だよ。言ってるけど名前は上層部に知られたら困る状態なの」
「でも歌姫先輩」
「歌姫の話なんて上層部は右から左だからいいの」
「ああん!?」
「ほら、行けよ伊地知待ってんじゃん」
「あんたに言われたくないわよ!何かあったらすぐ硝子に言うのよ、それか学長」
「はい…歌姫先輩、お元気で」
「やあねえ、死ぬわけじゃないんだから。戻ったら大変なのよ?今のうちに五条と夏油をいいように使っておきなさい」

伊地知が運転席に座る車に乗り込んだ庵を名前は五条と並んで見送る。
寂しい気持ちはあるが、今の名前は10年前の名前で学生である。現在の名前は10年前で夏油と一線交えているか終わっているかだろう。
確かに夏油はそれ以来名前を構うようになった。それ以前から同級生である名前を構っていたものの、それ以降は度が増すのだ。
まあそれに便乗して五条も名前を玩具のように構い倒して何度か名前がマジ切れをするのだが、それはそれで五条は楽しんでいたし名前のご機嫌を取るのも一種のゲームのような感覚で遊んでいたわけだが。

「歌姫先輩行っちゃった……」
「本当歌姫好きだねお前」
「冥冥さんも好き」
「僕は?」
「……え、えっと」
「そこは好きって言えよ」
「こ、こわ…っ」
「えー?心外なんだけどー?僕超優しいじゃん」
「こわ…」
「こわって鳴き声か?」
「ひええ…」
「バリエーションが増えた。まあいいや、後で傑が来るってさ」
「なにしに?」
「名前に会いに。双子もくるよ」

まあそれまで硝子のところでも行って時間潰してな、僕これから生徒の実習に同行だから。と名前の頭をぽんぽんと軽く叩いて「じゃあね」と手を振って行ってしまった五条。
そういう姿を見ると教師なんだな…と名前はなんとなく思う。
いや、一応は教師としての姿は見ていたが、10年の間に何があったのだろう。あの俺様のいじめっ子体質というのか唯我独尊というのか、名前からしてみれば関わりたくない人間のタイプだったのが。今でも面倒見のいいふりをして遊んでいるのだろう、という疑う心が名前を支配してはいるが。
とりあえず指示に従っておく方がいいだろうと思い、名前は慣れた道を歩く。
10年なんて膨大な時間を一瞬で跨いだというのに、この高専は大きく変わっていない。
まあ痛んでいた床や壁、使っていない教室に変わりはあるものの、たいていのものは変わっていない。

「しょー…こ?」

あれ?と医務室の扉をあけると家入の姿はなく、机にはメモが1枚。
『名前へ
 急患が入ったのでしばらく空ける。
 学長かそこらで時間潰しておけ。 家入』
どうやら不在でいつ戻るかわからない、ということだろうか。
五条は学生の実習同伴、夏油は居ないし、家入も不在。書かれていた通りに元担任の学長のところに行くのがよさそうである。
医務室を後にして、でもすぐに学長室に行くのもなんだか面白くない。と思った名前は廊下の窓から外を眺める。本日は良い天気でとても過ごしやすい。

「………うわ、びっくりした」

目線をずらせば夏油の呪霊だろうか、それもかなり低級で呪霊の気配も微か。一応は高専側にも申請してあるのだろう、アラートも鳴らない。
小さな小さな呪霊がぽあぽあ揺れて名前から数メートル離れて居た。
夏油くん来たのかな。と名前はそれを眺めつつ遠回りをして学長室に急いだ。

「なんで逃げるの」
「わっ!?」
「なんで逃げるの」
「げ、げとう、く…」
「なんで逃げるの」
「こ、こわ…」
「ねえ、なんで逃げるの」

怖いよ!と名前の口から出ることなく名前は心で叫ぶ、人間恐怖で声が出ない事をここで身をもって知ったのだ。
夏油は真顔で名前に迫り、名前はただ逃げる。
夏油の体格、体力から言って名前が逃げたところですぐに捕まえることができるだろう。それをしないのだから遊んでいるのだ。

「せんせえ助けて!!」
「!」
「酷いじゃないか名前、助けてだなんて」
「お前ら…傑、名前をいじめるな。お前何歳だ、名前はお前のところの双子くらいの年だぞ、考えろ」
「名前が逃げるのが悪い」
「せ、せんせい…」
「硝子はどうした」
「急患だって…」
「そうか。ノックなしでの入室は褒められたものではないが傑に追いかけられたのなら話は別だ」
「なんです、その名前に対する信頼は。私だって優等生だったでしょう?」
「優等生だったな、過去形だ。傑、来るのは早いんじゃないか」
「名前のためなので」

がっしりと名前の肩をだく夏油に名前は「ひい」と悲鳴を上げる。
その姿に夜蛾は大きな溜息をつく。夜蛾の言葉通りであれば、夏油が来るのは決定であったが時間が早いのだろう。実際五条も「傑来るまで硝子のところで時間潰しな」と言っていたくらいだ。
夜蛾が「肩の手、どけろ」と言うので夏油は渋々その手を離す。

「美々子と菜々子がこちらの方面で仕事でね。2人を送りがてら迎えに来たんだよ」
「2人は元気か」
「ええ、とても」
「高専生じゃないのに、任務があるの?」
「別に高専所属でなければ呪術師ではないわけではないからね。冥さんは高専卒業してるけど所属はしてないフリーだろう?」
「あ、そっか…高専卒業しなきゃ呪術師になれないわけでもないもんね。資格らしい資格もないし」
「そいういこと。じゃあ行こうか、2人が名前とまた買い物がしたいって」
「おい傑、お前打ち合わせ前だろう」
「別に私でなくても問題ないでしょう?私特級ですよ?」
「そうはいかない」
「任務、ですか?」
「ああ。こちらだけでは手が足りなくてな」
「ミゲル貸すのに」
「傑」
「はいはい、わかりました。すまないね名前」
「え、ううん。打合せ頑張ってね」
「名前…!」

名前はここで待機させるから傑は打ち合わせしてこい。と夜蛾がため息交じりに指示すれば、夏油はニコニコして出て行った。

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