呪術 | ナノ
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「名前さんかわいいー!」
「似合う」
「写真とろ!」

夏油と美々子と菜々子にクレープ、タピオカと食べさせられ、最後には「パジャマパーティーしたいからジェラピケ!」ふわもことした可愛らしい服が並ぶショップに連れていかれて「これがかわいい」だの「こっちが似合う」と2人に玩具にされて選んだ服。
俗にいう部屋着で、今までだるだるのティーシャツとよれよれのジャージで過ごしていた名前にはただただ衝撃的だった。

「本当だ、可愛いね、似合っているよ」
「あ、ありがとう…?でも、これ結構高かったと思うんだけど」
「気にしない気にしない」
「そうだよ名前さん、夏油様は名前さんを可愛くするのに余念がないから」
「うん。ずっとね、名前さんに可愛い服あげるチャンス伺ってたから大丈夫」
「へ、へえ………」

どう反応したらいいのだろうか、というのが今現在の名前の心境である。
お屋敷というには大きすぎで、施設と言った方が適切な大きな大きな敷地に大きな大きな建物。
こっちだよ、と買った服やら色々を持った夏油を先頭に2人に挟まれて名前は歩いて、敷地内にいる人間は夏油を見つけると深々と頭を下げる。
不思議に思っていると2人から「夏油様はここの教祖だから」「神様みたいなんだよ」と左右から耳打ちされた。
教祖というのは本当であったようだ、と名前やっと理解した。勝手に名前は硝子たちがグルになって揶揄っているに違いないと思っていた。
施設のようなお屋敷に入って、疲れただろうと言われて大きなお風呂に通されて、買ったふわもこの可愛らしい部屋着に着替えて。

「去年買った浴衣名前さん着てよ!」
「次は私のやつね」
「いっそ名前の分買おうか、それで3人で写真とってあげよう」
「夏油様も浴衣着て4人でがいい」
「美々子名案!」
「私も?」
「あ、あの…盛り上がっているところ、申し訳ないんですが」
「なーにぃ?」
「名前さん?」
「わ、私、これだけしてもらってもう、十分なので…お気持ちだけで…」

えー。という声が3人分重なる。
なんでなんでなんで?と3人に迫られれば名前は「あひゅ…」と縮こまる。
色々してくれるのはとてもありがたい。しかし名前にとってこの2人が特にわからない。10年でとても懐いてくれたのだな、というのはわかるが、それでここまでするだろうか。
あと夏油も、だが。

「夏油様、戻った名前さんに浴衣プレゼントしたらどうですか?」
「それいい!夏油様もその時浴衣着ちゃえばいいんだ!」
「私たちが名前さんを誘うから、きてもらいましょう」
「それもアリ、か…よし、それでいいよね名前」
「え?」
「なに、簡単なことさ。名前は10年後に私たちと浴衣を着る。それだけだ」
「今度名前さんの髪飾り買わなきゃ」
「かんざし?お花とか名前さんの好みじゃなさそう」
「その話はまた後にしよう。さあ食事にしよう、今日は名前が居るから奮発してもらったよ」

それからまるで旅館のような部屋で4人で食事をする。格好は女子3人がふわもこなのでとてもアンバランスではあるが、それはそれで楽しい時間だった。料理は和食、これは夏油の好みなのだろう、高専の時から蕎麦が好きだった。
誰が作ったのだろうかと思っていると「料理が得意な人間がいるんだよ」とだけ。
夏油の口から出た人間なので、単に人を雇っているのではなく呪術師なのだろうというのは名前にも推測できた。お膳は給仕の呪術師、なのだろうか。黙って回収されていった。
それから夏油は「私は少し仕事があるから3人でおしゃべりでもなんでもしておいで」と部屋を出て行く。

「名前さん、10年前だから高専生だよね」
「う、うん。3年」
「今頃だと、夏油様と名前さんがバトってるところかな」
「そうかも。すっごく強い呪術師が来て、夏油様圧倒されてたもんね」
「そうそう!ニコニコ笑ってさ、『お仕置きタイムだよ夏油くん、覚悟しな』ってね」
「名前さん、夏油様にストレスたまってたんだろうね…」
「うん…たまに私らでも引くもんね…」
「夏油くん、そんな性格変わったんだ…」
「私たち前の夏油様は知らないけど、他の人の話だと変わったみたい」
「五条悟も変わったって、よく名前さん言ってたよ」
「五条くん変わってたね…」

僕なんて言ってなかったし。と名前は思った。
それから今流行りの食べ物、曲、アイドルにゲームを教えてもらい、テレビでは今こんなのが流行っているのだと眺める。10年という差は大きく、ずっといたならまだしも、いきなり見て「面白い」と思うのはとても難しい。

「失礼します。苗字様、お部屋の準備ができました」
「えー?もう名前さん寝るの?」
「仕方がないでしょう菜々子。ほら、美々子も名前様をお送りする準備をして」
「「はーい」」
「……は、はい」
「あ、菅田真奈美さん。夏油様の秘書してる人だよ」
「秘書!夏油くんこんな美人な秘書さんいるんだ…」
「まあ。苗字様、お部屋の案内の前に夏油様がお呼びですがご案内してもよろしいですか?」
「は、はい…なんだろう」
「明日はどこ行く?って話かも!」
「外は猿ばかりだから、夏油様嫌がるんじゃない?」
「でも名前さんの服いるじゃん!」
「あ。」
「ほら、美々子菜々子。苗字様をお連れしますよ」

長い廊下を案内されて菅田がコンコンとノックすると夏油が返事をする前に扉が開いて中から夏油ではなく五条が顔を出す。

「あ、名前可愛いの着てるじゃーん」
「「五条悟!」」
「五条様、いつお見えに?アポはないはずですが」
「悟!あ、名前。真奈美さん、悪いんだけど名前を置いて2人を連れて行ってくれる?」
「「夏油様!!」」
「ジェラピケ?おいでおいで」
「え?え??」
「もう寝るの?僕来たばっかりなんだけど」
「じゃあ美々子菜々子お休み。真奈美さんもそのまま休んで」

名前の腕を引っ張って部屋に引き込むとパタンと閉ざされた扉。
廊下では2人が「夏油様ー!」「名前さーん!」と暫く騒ぐ声が聞こえたがすぐに止んだ。
夏油の部屋、と言っていいのかわからないが、シンプルでありながら重厚感のある作りで、いかにも重役がいる部屋。という感じがする。

「可愛いね、もこもこ。名前ってそんなの趣味なの?」
「こ、これ?これは夏油くんと、美々子ちゃんと菜々子ちゃんが」
「ハグしちゃお」
「わ、わー!!え、ちょ、やめてよ」
「やめろ悟!私だってしてないんだから!」

大男に抱きこまれて抵抗する名前、そこに割入ってくる大男その2、である。
名前が入学してしばらくしてからこの2人にはよく玩具にされていたのでその延長だろうが、それでも名前からしたらいい気分はしない。まして大男、高専の時に比べて厚みがあって力も増している。名前の抵抗なんてものは抵抗にもならないだろう。まして高専の時から特級の2人に腕力で勝てなければ呪力、呪術でも勝てない。詰みである。

「もっこもこーかわいいー」
「離せよ悟!私も抱っこしたいんだから!」
「離してー!いやー!!!」
「抵抗してて可愛い!」
「わーん!硝子ー!!」
「私に助けを求めろよ」
「聞いたぞ傑、お前名前連れて行くとき2年の生徒たちに助け求められたんだってな」
「誤解があったんだよ!」
「それに関して名前の答えは」
「へ?いや、今も普通に助けてほしい」
「だってさ傑。明日歌姫高専来るけどどうする?」
「高専行く!大人の歌姫先輩に会いたい!です!」
「じゃあハグ続けるけど」
「それは嫌!」
「私庵に負けるの?私の方が良くない?こんな良い男なかなかいないと思うんだけど!」
「うるさーい!!私にとっての良いか悪いかは私の主観なの!私が嫌だと思うことする人間が良いわけないだろー!」

やだー!と抵抗する名前。
しかし10年前の名前から今現在の名前のような態度がでると2人は顔を見合わせてにやりと笑う。イジメ甲斐がある、ではないが構いたい精神に火が付いたのだ。
縮こまってやり過ごすのではなく、抵抗が今の名前っぽい。しかし10年前のまだ猫被りが抜け切れていない。
可愛い。というのか、加虐心をくすぐられる、というのか。

「ねえ名前」
「な、なに…?」
「一応君、私に保護されてるっていうの忘れてない?」
「あ、忘れてた。でも、夏油くんが高専で暴れたりしなきゃ大丈夫だったんじゃないの?」
「あっは、正論!1級とはいえ、なんかの理由で出張だって言っちゃえば上だって僕ら特級でなければ気にしないしね」
「…ぐ」
「……じゃあ、明日ご飯食べたら高専戻って歌姫先輩に会いたい、です」
「今から戻らないの?」
「だって…菜々子ちゃんと、美々子ちゃんに挨拶しないとだし…」
「あの双子?」
「双子なの?」
「そ。名前が居る時代の傑連れてる子供たち」
「双子…」
「そこ引っかかる?」
「双子レア…」
「真希も双子だよ、京都校に妹がいる」
「すご!」
「はいはいはーい、悟名前から離れて。名前はもう寝ようね、今部屋に送るからね」
「送り狼?」
「しないわ!名前はまだ未成年だからね」
「聞いた?これ名前が成人してたら送り狼するつもりなんだよ、いやーねえ、厭らしい」
「いいからもう悟は帰れ」
「私何のために夏油くんのところ連れてこられたの?」
「それはねー、傑の奴名前に晩酌させようとしてたからだよー」
「うわあ…最低………」
「なんで!?」
「そりゃ未成年に晩酌させようってのがアウトだろ、僕でもわかる」
「悟のくせに正論を言うんじゃないよ…」

ていうか、私コレいつまで付き合わなきゃなの?寝ていいの?駄目なの?という名前の言葉によってその場は一応(という名目上)終わりを迎え、夏油は五条もつれて名前を寝かせる部屋まで送る。不愉快ではあるが「送り狼だ」などと言われたからだ。
おやすみ。と挨拶を交わし、黙って夏油の部屋まで行き、今度は2人でああだこうだ言いながら少し話し合い、本日はお開きとなった。
何故五条が来たかと言えば、ただ単に「思いついたから!まあ学長から聞いたからってのが本当なんだけど。学長も心配してたからさ」「私を?まさか」「名前だよ、誰もお前の心配してないし」と話していたところに名前が来たのだ。


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