呪術 | ナノ
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「うわー!名前さん若ーい!」
「クレープ、クレープ食べに行きましょ!夏油様!名前さんとクレープ!」
「ああ、いいね。じゃあ帰りに寄ってもらおうか」

昨夜はパンダに助けられ、その後家入のもとに行って一晩泊まり、朝になれば五条に「今3年いないし、僕1年担任だから名前も1年の教室おいで」と言われるままに1年の教室に4つ目の席を用意してもらってそこで授業をなんとなく受け、午後からは1年達は実習だというので名前はまた家入のいる医務室で時間を潰して、暇だから飲み物でも買ってくると自販機コーナーで自販機を眺めているときだった。

「げ、とう、くん…?」
「私菜々子」
「美々子」
「苗字、名前です」
「「知ってる!」」
「ほら、名前が困っているから落ち着いて」

はーい。と美々子と菜々子は返事をする。そしてその2人の保護者のような立ち振る舞いの夏油に名前は困惑する。確か昨日「ミミコとナナコが」何とか、と言っていたような気もする。

「喉乾いたの?」
「え、あ…うん、あと、散歩、みたいな、感じで」
「なにがいい?ご馳走するよ?美々子と菜々子はどれがいいの」
「名前さん、何にする?」
「へ?」
「あ、私も名前さんと同じのにしよっかな、夏油様、いい?」
「いいよ。名前はどれにするの?」
「え、えー…?」

夏油はまだわかる。同級生、だった。
しかしこの2人は何だろうか、と名前は思いっきり顔に出ているが困惑する。
名前の記憶にこの2人は居ない、というより、名前から見ておよそ10年後の現在にこの年なのだから、名前が戻った時には幼い子供のはず。
自己紹介の様な何かはあったが、関係がつかめない。ただ名前が掴めないだけで、2人からしたらきっと知り合いなのだろう。

「えっと、じゃあ、……サイダー?」
「これ?」
「うん…」
「ありがと夏油様」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう…」
「ふふふ、どういたしまして。これから名前はどこに行くの?」
「硝子の、ところ」
「ねえ名前さん、なんで昨日夏油様と一緒に来なかったの?」
「私たち待ってたのに」
「あ、あの…」
「なになに?」
「夏油くんと、2人は、どういう、関係?あと、私になんでそんな親しげに?」

貰ったサイダーを両手で持ち、疑問をぶつけてみる。
名前からしらたら、五条より夏油のほうが幾分か話しやすかった。話しやすかった、というだけで話しやすいわけではないが。それでもこう、ぐいぐい来られると名前は名前で困惑するわけである。聞いて教えてくれないのであれば逃げるしかない。

「えー!なんでそんなこと聞くの!?」
「あ、じゃあ、今の名前さんは私たち知らない名前さん?」
「ごめんごめん、2人には話してなかったね。今の名前は私が2人と逃亡してる時の名前で、まだ2人は知らないんだ」
「だから名前さんの様子変なんだ…」
「名前さん、五条悟に変なことされてない?」
「へ?」
「そうそう!あいつ絶対名前さんに変なことするじゃん!」
「まあまあ、今は悟の事はいいんだよ。名前の知る私は今逃亡してるだろ?」
「う、うん」
「2人の子供を連れて」
「あ…じゃあ、その?へえ…へえ…」
「なに?その反応」
「いや?別に…」

女子高生侍らせてる…それに「夏油様」って…と思わず一歩下がる。
いくら同級生だった、とはいえ、困惑する。
しかしあの夏油がどうしてこうなったのだろうか、と名前は思う。彼はもっと知的というか、まだ一般人向けというか、五条よりマシではあるがクズだった。それでも外面は良いほうだった。
それが教祖、である。しかも女子高生を侍らせて。胡散臭いし。

「じゃあ行こうか」
「へ?」
「行こ行こ!夏油様、クレープね!」
「タピオカも、行こ?」
「いーねー!」
「え、ま…行くって?私なにも、」
「名前は私たちとここを出るんだ」
「え?」
「今名前はここから言えば10年前の名前だ。これを上層部に知られると面倒だからね、私たちのところで保護するんだよ」
「そいういこと!」
「うんうん」
「いや、私何も聞いてないし…硝子も、五条くんも、夜蛾先生も、」
「私のいう事は信用できないの?」
「え、あ…うん、まあ」
「うわあ酷いな…私、名前が助けてくれたからこうしているのに、助けた本人はそんな態度なんだ」

悲しいなあ。なんて大げさな演技をする夏油に、2人の女の子は「可哀想!」と声を上げる。
ざっくりとした関係は聞いたが、なんだろう…と名前は思ってしまった。とりあえずはこの2人は夏油に助けられて慕っている、というところなのはわかる。ついでに名前自身も慕ってくれているのはわかる、そうでなければいいところ会いに来てバイバイだろう。

「と、とにかく、ね?私何も聞いてないし」
「そうか、じゃあ学長に交渉しよう」
「…え?」
「それで正式に私が名前の保護ができれば名前も納得してきてくれるんだよね」
「え、えー…?」
「よし、じゃあ学長のところに行こうか」
「私たちはどうしましょうか」
「そのあたりで暇をつぶしておいで。行くよ名前」
「え」
「行くよ」

ざり。と踵を返して名前に付いてこいと命令する夏油。2人には「早く」「夏油様が待ってるよ」と背中を押されてしまったので渋々夏油の後ろを歩く。
名前の知る夏油とは違い、髪が長い。ついでに服装も違うし、性格もちょっと違う。体格は厚みが増しただろうか、袈裟ではすこしわかりづらい。
五条も厚みを増していたようなので、そうなのだろう。なんだかんだあってもあの2人は仲良しだった。

「私いい男になった?」
「へ?」
「さっきから見てくるから」
「そ、そう…かな……みんな、大人になってるから、不思議で」
「10年前はいきなり名前が大人で殴りに来たぞって私に言うんだもんな、驚いたよ」
「殴った?」
「そりゃもう、重いの一発」
「大人になると夏油くん殴れるんだ…」
「う、うん?」

そこ?と夏油は思ったが、突っ込む前に学長室の前に来てしまった。
ノックもなしにバンと扉をあけて驚いている学長のいる目の前のデスクに座って夏油はにっこりと笑う。

「学長、名前を保護しに来ました」
「…なにを言っている」
「ほら、今名前10年前の状態でしょう?上に知られたら不味い、なら私のところで面倒見ますって話ですよ。これでも私名前に助けてもらったので、今度は助ける側でしょ?」
「その件については名前からは聞いていないが」
「名前だって無駄なことは言わないですよ」
「ならそれが無駄ではないか傑。名前はどうしたい」
「へ!、えっと………どう、しましょう…」
「…………硝子と悟と相談しろ。私は名前が決めたのなら文句はない。が、上層部が気づいたら面倒だから静かにしろ」
「はいはい。じゃあ名前、行こうか」
「え?相談は?」
「昨日から言ってたし、わかってくれるよ。それでは学長、名前は私が」
「え?え??せ、先生!」
「諦めろ」
「さっきと話が違う!」

嫌だ!と抵抗する名前だが、夏油にとってはなんてこともない。
名前の腕を引いて2人が待っているだろう場所に向かっていると、2年の3人(2人と1匹)が外に見えた。

「ま、まきー!パンダー!狗巻くーん!!」
「おや、2年生じゃないか」
「助けてー!!」
「名前?」
「夏油くんに連れていかれるー!!」

瞬時に夏油の顔の横を棒が横切る。
真希が投げた訓練用の長い棒である。次にパンダがどすどすと大きな体を揺らして猛スピードで駆け寄ってパンダが名前を確保して外に戻る。

「大丈夫か?」
「こんぶ?」
「まさみちに連絡するか?」
「残念だけど学長からの許可はでてるよ。まったく、名前は助けてだなんて酷いじゃないか」
「で、ゲトーさんは名前さんに何の用事なわけ?助けてって言われることしてんじゃん」
「猿が黙れ」
「その猿に助け求められてんじゃん」
「わ、私行くなんて言ってない」
「私と行くの、嫌?」
「嫌」
「即答じゃん」
「嫌われてんな」
「しゃけ」
「嫌われてない。ここだと上層部の目につきやすいんだよ」
「それゲトーさんが来るからじゃね?」
「しゃけ」
「黙れ猿が」

ああん?とガラの悪いヤンキーがバチバチとしている、そんな情景である。
名前はパンダの手を軽くぺちぺちと叩いて降ろしてもらい。やっと落ち着いた。
まあ同級生が年下の女の子とバチバチとやりあうのは正直見たくはないが、これも名前自身が招いてしまったことなのだろうか。いや、そうではない。
そもそも、なぜ夏油は真希を「猿」だなんて呼ぶのだろうか。

「…なんで、さる?」
「呪術師じゃない人間は人間じゃない、猿だ。名前、そんな猿の近くに居たら汚れる、こちらへおいで」
「………、弱者生存は、どうしたの?」
「若い頃の妄言さ」
「私は弱くねえ」
「猿が喚くな」
「あ、もしもしまさみち?名前なんだけど…うん、そうそれ。うん、うん…まじか?あー、うん、わかった、うん。いや、ここで名前が助けてってSOS出してさ、了解、じゃあな」
「すじこ?」
「真希、まさみちに連絡したら本当に名前は許可下りてるみたいだぞ」
「それなのに名前さん助けてって私らに言ったの?」
「う、うん。でもね。私一言も夏油くんのところ行くなんて言ってないし…夏油くん、私が知ってる夏油くんと、なんか、違うし…怖いし」
「え、私怖い?ごめんね名前、そんなつもりはなくて」
「ゲトーさんはアレだ、非呪術師が大嫌いで猿って呼んでるし、呪霊の被害も非呪術師が死ぬのは気にしないし、非呪術師は金か呪霊集めるだけの道具だと思ってんぞ。高専だと私と虎杖を猿猿猿猿言うしな」
「う、うわ…夏油くん最低」
「猿は私たちを搾取してのうのうと生きているんだ、猿を猿と言って何が悪いんだい?さあ名前、行くよ」
「や、だから」
「行くんだ」
「嫌がってんぞ、色男」
「上層部に見つかって連れていかれるくらいなら私が保護する。上はそういう奴らなんだ」
「ま、それは私も同感。名前さん、行きなよ」
「え」
「まあここよりそっちの方が安全かもな…」
「…しゃけ」
「さ、行くよ。これ以上嫌がると呪霊使うよ?美々子と菜々子がクレープと、えっとタピオカ?を楽しみにいしているんだから」

ま、悪いようにしないだろ、諦めろ。とパンダに背中を押されて名前は夏油に腕をひかれて高専を出ることになった。

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