呪術 | ナノ
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うわぁ…胡散臭い…。それが夏油を見た時の名前の一言目だった。
それまでは担任であった夜蛾に会って「うわあサングラス…」と呟いたし、補助監督の居る部屋で待機をしていれば報告書を出しに来た女学生に見つかって寮で一緒にゲームでもして時間を潰そうと誘われて寮に行って遊んでいた。
トランプ、ウノを筆頭にアナログで人数がいてもできるもので共有スペースで遊んでいればだんだんと人数が増えて楽しんでいたのだ。
すると五条が顔を出して「傑来たよ、会う?」というと名前が答える前に夏油がその場に飛び込んできたのだ。

「あっはははは!」
「わっかるー、ゲトーさん胡散臭いよねー」
「非呪術師を猿って言うくらいだからな」
「うるさい!散れ!猿が名前に近づくな!」
「うっわ、怖いなー。野薔薇行こうぜー。じゃあな苗字さん、また後で」
「明太子」
「じゃーなー」
「俺たちも逃げるぞ虎杖」
「え、な…うん、じゃね、苗字さん」

名前の知る夏油とは、まあ10年の時間があるので大人になっている、といえばオブラートに包んだ方だろう。
今まで遊んでくれていた学生たちは夏油を見て退散し、ゲラゲラと笑う五条と胡散臭い夏油が残った。あの学生たちの反応を見る限り、これが通常運転なのだろう。随分と名前の知る夏油とは違うが、もしかしたらこれが本来の夏油なのかもしれない。

「…名前、」
「…………」
「名前ビビってんじゃん」
「うるさいぞ悟、ほら、怖いくないからおいで?」
「怖い怖い。えっと、夏油くん?」
「そうだよ!夏油傑、高専の同期で特級の」

両手を広げて抱き上げようという体勢の夏油に、名前は困惑して目隠しをして目が見えていない五条に目で訴える。
しかし気が付かないのか無視しているのかわからないが、まだ笑いが噴出して止まらないらしく「ひいひい」言っている。

「…え…、や、やだ…」
「え」
「ひー!!振られてやんの!!」
「な、なんで?私怖い?」
「怖い…」
「どこが?!」
「全部…」
「全部!!ひー!!いっひっひ!!胡散臭いもんね傑」
「うん」
「うん!!??え…そんなに、胡散臭い…?私…これでも教祖してるんだけど」

それもある。と名前と五条は思ったが口にはしない。
まあ名前が来た今から10年程前の名前の記憶とは大きく違う夏油に戸惑う気持ちはわからないでもないが、ここまで拒否される夏油を見て面白くないわけがない。
普段透かしている夏油がこんなにも壊れているのだ。
ついでにその袈裟が余計に胡散臭さを増大させている。似合っている、のだが。

「何持ってるの?」
「夜蛾先生が、不審者に会ったら使えって言われた防犯ブザー」
「ひー!防犯ブザー!!傑不審者認定!んひぃ!」
「不審者じゃないから!私!」
「五条くんと夏油くん対策だって」
「は!?僕まで入ってんの!?」

ここに家入がいたらゲラゲラ笑っていただろう。
名前にしてみれば担任が身の安全(仮)のためにくれた…キモ可愛い、といっていのか分からないキャラクターがニヒルな笑いを浮かべているブザー。
使えば通常の防犯ブザーのように大音量で威嚇するのだろう。さすがに呪力でどうにか、という代物ではないことを名前は願うしかない。

「で、名前はこれからどうするの?」
「へ?」
「名前は硝子のとこに泊まるよ」
「私のところおいで?美々子と菜々子が会いたいって」
「硝子のところ行くから…いいです…」
「私ちょっと硝子とお話ししてくるから」
「無駄だから止めな?花の女子高生が27のおっさんのところ行くわけないだろ、パパ活なんて僕が許さないよ」
「パパ活って?」
「現代版援交」
「うわあ…」
「私そんな歳じゃないし。名前とは同期だから」
「今名前10代、お前アラサー」
「…おじさん、かあ…」

でもうちの施設のほうが部屋は絶対良いしご飯も美味しいし布団だっていいよ。と食い下がる。
一歩近づけば名前は一歩下がる。その動きがまた五条を刺激したのか、腹を抱えて笑っている。
しかしその攻防も長くは続かず、ついに名前の後ろには壁。
ちらりと五条を見てもゲラゲラ笑ってるだけなので名前は防犯ブザーに手をかけて思い切り引っ張った。
ビビビビビビビ!と警戒音が鳴り響き、これぞ防犯ブザーという音があたりを埋め尽くす。それと同時に先ほどまで一緒に遊んでいた大きなパンダがスパーン!と扉を開けて軽い身のこなしで夏油に迫れていた名前を抱きかかえて共有スペースからの逃走を図る。

「え…?」
「あー、あの防犯ブザーパンダにも連絡行ってたんだ」
「とりえずこれ潰していいかな」
「いいんでない?」

パンダに抱えられていく際、落としたのだろう。床でブザーが大きな音で警戒音をならしている。
ドシャ、と夏油がそれを踏み潰せば警戒音はピタリと鳴りやんだ。
確かに静かにはなったが、それは夜蛾が名前に持たせたものである。それに気づいた2人は「あ」とお互いに声が重なるとゆっくりと目線を合わせる。
これ、学長が来るパターンだよな。と。
これは学長が名前に「悟と傑対策に」と渡したもの。それがその2人の前にある。学長はこの2人が原因と考える。と、2人の頭の中でこれから起こるであろう事態を想像する。

「…これ、学長来るパターンだよね」
「そうね…僕何もしてないのに怒られるパターン」
「私だって何もしてないんだけど」
「名前が傑の事不審者と判断したんだろ、何かしてんだよ」
「私逃げるわ。明日美々子と菜々子連れてくるから名前に言っといて」
「逃げんな、んで学長に怒られろ」
「嫌だね。逃げた名前が悪い、私何も悪くない」
「逃げられるようなことをしたな、お前ら」
「げ、学長…誤解、僕何もしてないし」
「わ、私だって」

いつの間にか背後に居た夜蛾。やはりあれには警戒音だけでなく、居場所がわかるようになっていたらしい。
よって名前が落としたのではなく置いて行った、という可能性のほうが高い。まだ学長が名前が寮の共有スペースにいることを知っていた、という可能性もあるが低いだろう。

「名前はパンダが保護している」
「保護って…名前保護される歳じゃないでしょ」
「学生だからな、一応」
「あー…青春時代、こんなところにいる場合じゃないんだけどね」
「いや、私助けてるところだろ、そんなこと言うなよ」
「助けてこれだもんな…」
「離反してない功績たたえろよ」
「1人で抱え込んで大人の名前に連れて戻されて、よく言うよ」
「はあ!?それは悟が」
「うるさい」

ガチンと制裁の音がした。

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