呪術 | ナノ
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「しょーおこー」

いる?と医務室のドアを開けて名前が顔をのぞかせる。
そこにはさぼっていたのか知らないが五条がさっと手をあげて挨拶をするが、そのスカした感じが名前はイラっと来たので「げ」と声を漏らした。

「どうした名前、怪我でもしたのか」
「ううん。これ」
「げ、名前ってば硝子に賄賂?悪い子だね」
「五条くんもいる?あ、飲めないもんねー五条くん」
「言い方!」
「あ、これ新酒?」
「そう、送られてきたけど私飲まないから」
「いつも悪いな」

名前の持っていた袋から綺麗な化粧箱。その中からまた綺麗な瓶がでてきた。
それが酒だとわかると五条は「硝子ばっかり狡くない?」と名前に詰め寄る。すると名前は面倒くさそうにポケットに手を突っ込んで探って、棒が付いたアメを渡す。

「なにこれ?」
「アメ」
「いや、わかるけど…」
「それ、漁師さんが舐める長時間舐められるアメなんだって。あげる」
「なんで名前そんなの持ってんの?甘いの好きだった?」
「任務で会ったギャルにもらったの、ありがとあげる。って」

ギャル。と2人の声が重なってゲラゲラと笑う。
余程名前の口から「ギャル」というワードが面白いらしい。名前とギャルという組み合わせも面白い。
家入は自分の椅子に腰かけながら名前に聞く。

「なに?名前ギャル助けたの?」
「地味子〜これお礼にあげる〜って?あっひゃっひゃ!」
「そんな軽いノリではなかったけど。任務で心霊スポットデートしてた陽キャカップルで、彼ピはビビって逃げて取り残されギャル」
「はークズだな」
「彼ピクズ男だったか。ま、僕みたいなGLGはなかなかいないからね、最強だし」
「すごく泣いてて、一緒だった猪野くんドン引きして、仕方ないから補助監督のところまで私が慰めながら歩いて、懐かれた」

今プリっていうんだっけ?そんなん渡された。と名前は続ける。
それを想像した2人はまた腹を抱えてヒーヒー言いながら笑う。
名前とギャル、名前とギャル!と。2人で地団駄を踏むようにダンダンと大きな音を立てて、アラサーとは思えぬ笑い声が医務室に響く。

「逆に口説かれたよね、ギャルに」
「む、り…ひいい!名前ギャルに口説かれてるの?男はからきしなのに。んひい」
「わ、笑うなよ五条……ぶふ。」
「おねーさんやばい、カッコよすぎ。なんの仕事してんの?え、じゅじゅちゅ、なに?それえ。みたいな?」
「んひー!!!やぱい!ひ、っひ…」
「っそ、それ、で…?」
「なんか窓の素質かなんかあるかもってことで引き渡してそれで、さよなら。何もしない猪野くんが疲れた。納得できない」
「ちょ、名前。つ、次その子、見つけたら…教えて…んふふ、僕見たい」

私も。とプルプルと震えながら家入も手をあげる。
家入は名前がモテるモテないという問題には興味はないし、言えばクズの同期の不名誉武勇伝のほうが笑うネタとしては十分である。
ただ名前がギャルに気に入られたという話が思った以上に家入のツボを突き、笑いが止まらない。まして名前はどう見てもギャルに受けるような恰好はもちろん、顔でも性格でもない。それだけ彼ピとやらがドクズだったのだろうが。

「ね、連絡先は…もらってないの?」
「携帯の番号強請られたけど無視した。硝子、コーヒーもらっていい?」
「いいよ…好きに飲みなよ…ん、ふ」
「そんなに面白いかな、今の話」
「こんな面白い話ないよ!!!」
「そのギャルの名前は?ギャルは案外行動力があるからな、補助監督になるかもしれないぞ」
「名前聞いてないなー、興味ないし。私同性なら冥さんみたいなセクシーな人がいい」
「まっじ?!お前冥さんみたいなのがタイプなの?」
「色気がある方が好き。ギャルのさっぱり感もいいけどね」

インスタントコーヒーの香りがして、名前はそれを何度かに分けて口をつけてから溜息をもらす。
まあ名前の女性のこと見など、見た目やら軽い意味の話だろう。そもそも名前はそういう趣味というより、そういう考えもないのだ。
名前は家入や庵、冥とも仲が良いが誰もが名前をそういう目では見ていないし見られてもいない。

「ギャルが黒スーツきて「ちーっす」とかいうの?」
「それは知らん」
「ギャルって「ちーっす」っていうの?」
「え、言わないの?」
「わかんない。でもあの子は言ってなかったよ」
「私らの感覚はもう古いだろ、お前の受け持ちの子に聞いてみろよ」
「誰もギャルっぽい子はいないんだよ」
「高専はそういう子来ないもんね」
「一番派手なのは七海だったな」
「それなら五条くんも負けてないでしょ」
「えー悟美ちょーいい子だしー」
「「古」」
「ちょ、」

「キッショ」「気持ち悪」「やばい、寒気がする」「名前、帳降ろせよ。それ封印しろ」となんちゃってギャルを披露して散々貶され、なぜかそれが医務室にいる間ずっと続いた。
後日、例のギャルはしっかりと補助監督になっており、五条が「ぱねえな」といったのが名前の耳に入って名前は吹き出した。

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