呪術 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「ええい、鬱陶しい!!」

ぎゃはははは。という家入の笑い声。
立て続けに入った任務を終え、やっと帰れると思った名前を五条と夏油が捕まえ、やってきた五条の部屋。
そこに居は酒を飲んである程度でき上っていた家入に名前と同じく連行された七海が死んだ目をして酒の入ったグラスを持っていた。
そこからつまみを食べ、酒を飲んでいると案の定特級の2人が名前に絡み、ソファに座る名前の脚に甘えるように近づき「ねえ、叩いて?お願い」と迫ってきたのだ。

「あんまりしつこいと七海くんのお尻叩くぞ!」
「なんで私なんですか、やめてください」
「叩け名前、七海も仲間にしてしまえ。そして2人を後悔させろ、どうしてあの時七海まで引き込んでしまったのかと」
「硝子?」
「七海もハマるタイプだと思うぞ?いいのか、お前ら。名前は七海を気に入っているんだから七海が名前に叩いてくれってオネダリして叩かれて嫉妬しないか?付き合って最後には結婚するかもしれんぞ?」
「それは駄目!絶対ダメ!それ僕の計画だから!」
「私だって名前に尻を叩いてほしいんだぞ!」
「硝子が変なこと言うから収拾がつかない…」
「私何も言っていないのに勝手に付き合うだとか結婚だとか…」
「はあ?お前名前に文句あんの?」
「五条さんや夏油さんほどではありませんが」
「そりゃ他人だもん、文句だってあるでしょうよ。それをわざわざ言わないのが大人だよ」

ふん。と心外であると言わんばかりにグラスをあおる七海。
確かに先輩、同僚としては付き合いはあるが男女のなかではないのだ、ここの誰もが。
そもそも呪術師をして結婚だのなんだのという事自体が間違っている。中には結婚して子供をもうける者もいるが、呪術師としては御三家や家系でなければ大多数が結婚をしない。する暇も相手も見つける時間がない。
五条であれが御三家のひとつで当主なのだからそういった見合いやら相手は居てもおかしくはないが、そういう話は聞かない。
夏油も特級というクラスで考えれば呪術師の家系が黙っていないが、特級故に夏油が遊びでは相手にしてもそれ以外は相手にしていないのだろう。
そしてその2人と仲が良い異性である家入と苗字に嫌味やらを言うのがいるかと思えばそうではない。
家入は他人に反転術式を使える貴重な人材、機嫌を損ねるわけにはいない。
苗字は結界術のスペシャリストで帳などの結界を使わせたら右に出る者はいない。
そんな特別ともいえる人間に嫌味など言えるほど愚かではない、というところか。

「で、叩くのか名前」
「叩かないよ」
「僕名前に叩いてもらう約束したのに傑が乱入して傑が叩かれてるんだけど!約束守って」
「聞いたか名前…五条の口から約束を守れだと」
「どの口が言うんでしょうねえ。どう思います七海くん」
「私を巻き込まないでください」
「名前ー私も叩いてよー」
「モテ期来たな」
「嫌なモテ期だ…私のモテ期、これで終わりかよ。変態集めて終わりか」
「変態あつめ」
「やめて」

ソファから立ち上がって七海にそばに行って「助けて」とSOSを出すも「嫌です」と切り捨てられる名前。
またそんな姿を見て家入はゲラゲラと笑い、大男2人は名前に「ねえねえ」と甘えている。
片方はまだ酒が入っているからわかるが、もう片方は素面だから手に負えない。いや、そもそも特級を相手にするのが間違っているのかもしれない。

「あーもう、そこに並んで尻をだせ!これで最後だ!!」
「まっじで!?」
「名前…!」
「本気ですか苗字さん」
「いい加減鬱陶しい。これが最後だからね!わかってる!?」
「うん!またお願いするときは恋人になってからにする!」
「絶対五条くんとは付き合わない!!」
「私もそういう関係になってから、ね」
「特級うぜぇ!!

パァン!パァン!!と連続して名前が2人の尻を叩く。
言えばスパンキング、というやつだ。
家入はギャハハと笑い、七海は信じられないといった顔でその様子を見る。
だいたい名前だってこんなことはしたくはない。きっかけとなったアレも勢い余ったというのだろうか。そもそも普段無下限で何もかもを閉ざしている五条が不用意に無防備になるが悪いのだ。ついでに五条家のお坊ちゃまだったのだから尻を叩かれるという体験もないので、初めての体験でアレなのだろう。
おかげで名前は酷い迷惑をこうむっているのだが。

「……っ、」
「……っ。」
「うわぁ…」
「七海のドン引きもウケる」
「はい、お終い!もうこれ以上私に尻を叩けだの言わないで。あと私は2人とは付き合わないからね!」
「…っ、は、あ…これだよ、これ」
「あー…消えてしまった…衝撃が」
「うっわ…苗字さんこれ悪手では?」
「名前、確か冷凍庫にアイスあったよ」
「食べるー!」

わーい。と言わんばかりに、すでに切り替えた名前。
五条の冷凍庫をあさって「あ、限定の奴あるじゃん!さすが五条くん。あー、こっちも限定だ」と楽しそうにしている。

「ふ…七海残念だね、この気持ちよさがわからないなんて」
「わかりたくありません」
「いいじゃないか悟。この気持ちよさは私と悟が知っていれば」
「最低ですね」
「名前ー、ついでに冷蔵庫からつまみになりそうなの持って来て」

おっけー!という名前の声。
まだガサガサと漁っているらしい。勝手知ったる他人の冷蔵庫(冷凍庫)なのだ。また五条も慣れたもので同級生に漁られても特に何か言う事もなく過ごしている。

「五条くん、マカダミアナッツの奴貰ったから。はい硝子」
「サンキュ」
「硝子の隣行こ。いーれて」
「いーいよ」
「…仲いいですね」
「同性舐めんなよ。学生の時は歌姫さんも入れてよく一緒だったしな。歌姫さん東京こないかな」
「名前、ちょっと」

うん?という名前の応えもなく、家入の隣に座った名前を抱きかかえて一人分のスペースを空けてその間に五条が入り込み、その反対に夏油が座る。
なんだかホストがゲストを囲む構図のようであるが、まさにそれなのである。
しかし当の名前は気にすることもなくカップアイスの蓋を開け、フィルムを剥がしている。マイペースというのか、慣れているというか、酒の力なのか。

「あ、スプーン忘れた」
「持ってくる」
「で?なに?てか私と硝子の間に入らないで。入っていいのは七海くんか伊地知くんだから」
「はい名前、スプーン」
「ありがと」
「ねえ、名前。僕らのご主人様になって?」

は?という七海の声が大きく響く。
これには名前も家入も予想外の発言で七海と同じく「は?」という状態。
だか当の本人達は前もって示し合わせていたのだろう、名前の膝に手を置いて「ねえねえ」と甘えた様子で名前に迫っている。

「ご、ごしゅじん、さま?」
「そ。ご主人様。僕ら良い子で任務に行くし、報告書もちゃんと出すから、ご褒美でお尻叩いてほしいんだ」
「は?なに普通の事して褒めてほしいだ、馬鹿にしてんのか」
「呪霊玉凄く不味いんだよ名前…それは言葉にできないくらい。ご褒美くらいあっても、いいよね?」
「蕎麦でも食ってろ。膝に手を置くな気色悪い、私はアイスを食べるの、邪魔すんな」
「え、なんですかアレ…」
「お?七海初めてか?名前酒飲むと口が悪くなるんだよ」
「いや、それではなく」
「あの馬鹿どもは知らん」

きっぱりと切り捨てた家入。
まあここにいる特級の2人以外はわからなくて当然である。
裏で2人で、「恋人は抜け駆け、どちらか、3人での交際なんてもっての外。ならば2人のご主人様になってもらえばいい」と話し合ったのだ。
特級だから、というよりこの2人の思考がぶっ飛んでいる。ぶっ飛んでいなければ同期に対して「尻を叩いてほしい」とはふつう言わない。

「ねーえー。名前ってば、最強だって疲れるし癒しが欲しいんだよお」
「そうだよ名前。名前が私たちの手綱持っていれば皆幸せなんだよ」
「私が幸せじゃないだろ。大体、人が休みたいっていってるの拉致る悪い子は嫌いなの」
「だってそうしないと構ってくれないじゃん」
「大きい猫だと思えば可愛いだろ?ほら、私もスグルだし。にゃあにゃあ」
「「キッショ」」
「苗字さん、学長にセクハラを相談しましょう、それがいい。私も付き添います、徹底的に戦いましょう。日車さんもきっと協力してくれますよ」
「あー、弁護士やってた?七海知り合いなの?」
「ええ、同じ1級という事で組みまして。とても誠実な人です、戦いましょう」
「御三家舐めんなよ七海。こっちもお抱えの弁護士いるんだっての」
「戦いましょう」
「名前より七海のほうがやる気じゃん。ウケる」

まあ確かにこの地獄見るなら弁護士でもなんでもいてくれたら助かるな。と家入はケラケラと笑った。

/