呪術 | ナノ
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「あ、五条くん。コレあげる」

うん?と渡された小さな紙、言えば名刺くらいの厚紙で、やはり名刺だった。
そこには「Reira」と書かれている。
それを見て五条が頭を傾げれば名前はにこりと笑う。

「ナニコレ」
「この前の任務で知り合った窓の人なんだけど、五条くんに紹介したくて」
「ふーん?なんで?」
「ほら、五条くん、お尻叩いてって、言ってたでしょ?その人SM嬢なんだって」
「え、なに?名前ってば僕がSMに興味あると思ってんの?」
「え、違うの?」

凄ーく美人さんなんだよ。とスマホでSM嬢を見せるが、五条にとってはまあそこら辺の女と変わらんな、という印象である。
さすが五条家、というのだろうか。散々見合いだのどこそこ家のお嬢様だのと一般的な美人という美人は見慣れているのでさほど心は動かない。
だた化粧が濃いな、というだけの印象である。

「お尻、叩いてほしいんでしょ?プロだよプロ」
「いや、別に僕そういうんじゃないし」
「違うの?」
「違うの」

そう、なの?と不思議そう、腑に落ちないという顔で少し頭を傾げる名前。
名前からしてみたら五条はきっとお尻を叩く誰が必要なのだろうと思ったのだ。
そして偶然出会ったSM嬢。その相談をしたら客は責任が多い人間が多く、全てを決定してくれるからと通うのだ、というではないか。
それで五条は叩いてほしいのか!と納得した名前は名刺と知り合いを紹介したいのだと相談し、この名刺なら特別サービスをする、というので貰った。

「ストレス発散にいいんだって」
「へー」
「……行かない、のか」
「うん。僕は名前に叩いて欲しいんだから。他人に触らせる理由がないよ」
「え」
「うん?」

はい?と今度はお互い同じ方向に頭を傾げる。
どうやらお互い行き違い、思い違いがあるらしい。というのはわかるが、何がどう違うのかがわからない。わからない事だけがわかっている。
五条は持っていた名刺を「いらないから返す」と名前に渡すし、名前も名前でそれを受け取ってスマホのケースに仕舞う。

「なにしてるの、2人で」
「あ、夏油くん。五条くんにSM嬢を紹介したら趣味じゃないって言われたんだよね。でもお尻叩いて欲しいっていうし。意味が分からなくて」
「あ、あー……うん、それね…」
「この前学長にしこたま怒られたんだよ。そんな往来のあるところ、まして同期とはいえ女性に対して何を言っているんだって」
「それは確かに。正論が嫌いな五条くんもウンもスンも言えない相手からの正論に黙るしかないね」
「だから、僕はそういう職業の人間に叩いて欲しいんじゃなくて名前に叩いて欲しいの」

思わず夏油は名前の腕を引っ張って五条と名前の間に立つ。

「そうだ、傑も叩いてもらえよ。そしたらわかるって」
「私そういう趣味無いから」
「僕だってないよ。でも名前の叩き加減というか、力加減等言うか…絶妙でさ」
「私にそんな才能が…!?」
「プリ〇ュアのノリで言うんじゃないよ」
「夏油くんプリ〇ュア知ってるの?」
「美々子と菜々子がいるからね」
「女児向けアニメ観てたのかよ」
「今はそんな話しなくていいんだよ。悟は名前にそんなこと言わない、名前は悟にそんな話題をふらないこと」
「だって尻を叩けって迫られる私の身にもなってみてよ。ならプロを紹介した方がwin-winでしょ?紹介料入るし、客になるし、欲は満たされて」
「やめさない」

女性が尻尻言うな。とぴしゃりと名前に向かって言う。
いや、元をただせば原因は五条であるのは明白なのだが。
そもそも女性に尻を叩かれるという原因は何だ、と言いたいがここで言っても埒が明かない。

「ねーえ、名前。もう1回でいいから尻叩いてよ」
「さ と る」
「嫌だってば。夏油くんにでも叩いてもらえば?」
「傑ゴリラじゃん」
「七海くんは?」
「ゴリラじゃん。僕は痛めつけてほしいんじゃないんだよ」
「君本当プロに頼みなよ…名前はプロじゃないんだよ。職業は呪術師、同僚、わかる?副業でもないの」
「あ、じゃあ名前僕と付き合ってよ」
「任務?」
「男女の仲ってやつ」
「ぜってーやだね」

んべ。と舌を出して煽るように拒否をする。その姿はまるで学生時代の五条のマネである。それを知ってか知らずかは知らないが、赤い舌を出して絶対に拒否!とアピールをする。

「GLGよ?」
「御三家五条家当なんて無理無理ー。それならまだ夏油くんのほうがマシ。まあマシってだけで付き合うとか断固拒否ですが」
「なんで私まで名前に振られた雰囲気になるんだよ」
「流れ弾ごめんね?」
「1回でいいんだよ、もう1回」
「それで本当に気が済むの?」
「……わかんない。だって、気持ちがよくて…まだオネダリするかも」
「キッショ……名前、もう悟には近づいちゃ駄目だよ。あっち行きな」
「おい傑!お前はわかってないんだよ!名前に尻叩かれてみろよ!ぜってーお前も堕ちるぞ!」
「悟」
「あ…ん…え、学長………」
「傑、名前連れて行きなさい」
「はい」

ほら行くよ。と名前の手を引っ張って夏油はその場から距離をとる。
名前は引かれるまま夏油に連れていかれるし、五条の背後には前回同様に夜蛾学長。

「悟」
「あ、いや…だって、名前が」
「名前が?」
「SM嬢の、名刺なんて…僕に、渡すから…」
「名前はお前にその欲を満たす場を紹介したんだな」
「そ、そうです…僕は、名前に叩いてもらいたくて…」
「悟。もう一度言わないとなのか」
「…!そうか、名前が断れないようにしたらいいのか。学長、ありがとうございます」
「悟!」
「どこから固めようかな〜」
「悟!!」

ふふんふ〜ん。と機嫌よさげに夏油と名前が行った方向に鼻歌交じりにスキップをする五条。
呪術師としては五条家の当主が身を固めるのは実に嬉しい事ではあるのだが、あれが自分の受け持った問題児であると話は別である。まして学生時代散々五条に嫌がらせに近い扱いを受けていた名前。
名前からしたら関係としては悪いわけではないが、良いわけでもない。
が、五条から見れば良好だと思っている。これは名前の身が本当に危ないかもしれない…と夜蛾は思った。


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