呪術 | ナノ
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「ななみん…?」

そ!と虎杖が良い笑顔で名前に頷いた。
その彼の前には七海建人。
そう呼ばれた当人は酷く重い溜息をついている。

「七海くんのこと?」
「ななみ、だからナナミン」
「へーななみん。ナナミンか」
「……なんですか」
「いや、可愛いなって思って」
「まさか」
「言わないから、安心して」
「え、名前さんナナミンって言わないの」
「この年で後輩をそんな風に呼ばないよ」

ソファに向かいあう様に座って資料を見ていた時の事。
普段であれば1級が二人の高専生が一人という構図はまずない。これもまた五条絡みの要件だと言う事だ。

「でも可愛いね、ナナミン。なんかキャラクターみたい」
「やめてください」
「照れてんの?」
「照れてません」
「大丈夫だよ、七海くんはちゃんと七海くんて呼ぶから」
「名前さんはずっと、その君付けなの?」
「うん、後輩だし。学生の時は七海くんからは先輩だったけど」
「そっか、名前さんも高専だったんだっけ。で、ナナミンも」

一人資料に目を通しながら「そうですね」と七海は答える。
名前と虎杖は資料よりもおしゃべりの方に力が入っているらしい。

「名前さん名前さん、ナナミンって高専の時どうだった?」
「今とあんまりかわらないよ。真面目で、良い子だよ」
「いいこ…」
「あ、良い後輩?ワンマンじゃないし連携もちゃんととれるって意味でね」
「へー」
「まあ比べるのが癖が強すぎる人が多いので。おしゃべりもいいですが資料の確認はいいのですか」
「確認済みですので大丈夫です」
「え!俺まだ……」
「ま、現役の当時の後輩で虎杖くんが知ってるのは五条くんと硝子だから、五条くん見たら七海くんとのアレがわかるでしょ」

資料に落とした目を再び上げて名前と七海を交互に見る虎杖。
そして言われた担任の顔を想像でのしてたのだろう。
名前の言葉に「なるほど?」と納得したようなしていないような顔をしてまた資料に目を落とす。

「読んだ!」
「では今回は虎杖くんと名前さんが組んで私が単独で行動しましょう」
「賛成」
「ナナミン一人でいいの?」
「問題ありません。虎杖くん、名前さんを頼みます」
「よろしくお願いします」
「え!あ、はい!頑張ります!でも名前さん1級じゃん?」
「名前さんは接近戦はあまり得意分野ではないのですよ」
「へえ!俺得意!」
「現場についてからは虎杖くんは名前さんの指示に従う事、名前さんは虎杖くんが暴走しないように注意してください」
「応!」
「了解」
「で、なんでナナミンが仕切るの?」
「七海くんが虎杖くんと私のどっちも知ってるからだよ。虎杖くんとはお話はしても任務一緒にしたことないでしょ?」
「あー、そういう」

打ち合わせが終わり、また五条の我儘で付き合わされたであろう伊地知が準備していた車に乗り込む三人。
後部座席は大柄男性がいるので名前は助手席に乗る。

「あれ、名前さん前?」
「流石にその体格の男性の所に座ったら狭いでしょ?」
「そっか。伏黒と釘崎だと一緒に後ろだったから、そんなもんだと思ってた」
「二人は細いからねー」
「私が太いとでも?」
「んー、まあ筋肉質の逆三角形タイプは細くはないね」

昔は細かったのにね、七海くん。と名前は何の気なしに言えば今度は虎杖がへー!と声を上げる。
今の体形から細身だったというのが信じられないのは名前も近い感情がある。
高専を卒業して一般企業に就職、七海が20歳になるあたりからあっていなかったがここまで変貌していて驚いた。

「伊地知くんはあんまり変わってない気がする」
「ははは…」
「でもまあ忙しいのが顔にでるくらいは、あるね」
「それは伊地知君だけではないでしょう」
「確かに」

大人が笑えば虎杖だけがその輪に入れないのか「わからね」とポソっと呟いた。
彼はまだ15歳なのだから仕方がない。若いのだ、体力が有り余っているのだから理解し得ない。その15歳の少年が宿儺の器だという。その少年は既に処刑が決まっている。
なんて虚しいのだろう。と思いながら現場までの車中話したり黙ったりを繰り返す車中


そんな事をしているうちに現場につき、予定通りに二手に分かれる。
帳を落としているせいか、それとも呪霊のせいか。辺りには特有の陰湿な空気が漂っている。
重苦しく、そして息苦しい。
1級が二人駆り出されているのだから当然相手も等級としては高いのだろう。
五条からは「悠仁の任務の経験値あげるために協力してチョ!」と資料を渡される前に軽く言われた。七海と名前は「は!?」と声を上げたが相手は五条。ささっと逃げていく当たり二人が断れないようにしたように思える。

「っと、虎杖くん。あそこに居るの見える?」
「あー居るね」
「多分苦戦はしないと思うけど…1、2、3、4、5…下の3体頼んだ、上2体は私が」
「応!」
「っと、待った」

今にも飛び出そうとする虎杖の肩を掴む。
ここからでは距離がありすぎるからもっと近づいてから。と小声で名前が言えば「…はい」と返事をする。
良い子なのだが、恐ろしく身体能力が高いので名前という人間の感覚と全く違うのだろう。それに関しては名前も五条から聞いている。感覚が壊れているのは名前とて同じだが、とりあえずは相手とのペースを合わせねば。

「……そろそろ、いい?」
「まあ、この辺りなら」
「応!!」

そこで名前が体感したのは衝撃波。瞬時に姿を消したかと思えば下で仲良くたむろしている呪霊が鈍い音を立てて変形して溶けていく。

「名前さん!!」
「お、応!!」

名前は上部に浮遊する2体を捕捉して目の前で叩く。それに呼応するように2体の呪霊は潰れて空中で飛散した。
名前は一応は虎杖の事を危惧して近づいてからの対応をと思ったが、どうやら無用の心配だったらしい。ここまで強力だったとは思いもしなかった。

「すっげー!今のなに?名前さんの術式?」
「え、ああ、うん…虎杖くん、凄いわ。私の思っていた以上に強いわ、強力だわ…へえ、びっくり」
「!へへ、なんか褒められるの恥ずかしいな」
「………」
「え、なに?」
「ううん、こう…なんていうか、うん。そう素直に喜ぶ姿が眩しいなって」
「え?そ、そう?」
「うん。じゃあこの調子で進んで行こうか。さっさと終わらせよう」

かわいいね。なんてとても言えないが、その素直さが名前にはとても眩しい。
接近戦が不得手であると七海から聞いたせいか虎杖は名前の前を歩いて当たりを警戒して先に進んだ。




「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
「っした!」

言われた仕事をこなして伊地知の運転する車で高専に戻ってから労いの言葉を口にする。
学生であるが故なのか、まだ子供だからか虎杖のその言葉に七海が咳払いをすると言い直すあたり本当に素直である。

「お疲れサマンサー。どうだった悠仁は」
「ねえ虎杖くん」
「うん?なんすか」
「夏油さん家に養子にこない?」
「へ?」
「名前さん!?」
「だって凄ーく良い子なんだもん!夏油さん家の養子においで!五条くんの家より資産はないけど」
「すみません五条さん、名前さんかなり疲れているみたいなので送ります」
「さすがに12連勤はマズった?あはは」
「七海くんは呪術師戻るしさ!!」
「では。報告書は虎杖くんが出してください、一応これは君の案件でもあるので。名前さん、帰りますよ」
「七海くんの馬鹿ー!なんで、なんで呪術師に戻ってくるだよ!私の!楽しみを!!今からでも遅くない、脱呪術師!どう?」
「しません。帰りますよ。では」

あー!!と叫びながら七海に引きずられて行く名前。
まだ何か言っている様子だったが急に静かになった辺り七海が何かしたのだろう。七海の性格からして乱暴な事はしないと思うが、相手は同じ一級呪術師。あっても不思議ではない。

「名前さん、やべえね」
「さすがに12連勤させたら壊れたかな」
「うわ…」
「ま、名前さんこと嫌いにならないであげてね。疲れてたんだよ」

疲れさせたの誰だよ…と思った虎杖は、さすがに口に出すことはなかったが名前は本当大変なんだなと思い、今度からもっと優しくしようと心に決めた。

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