呪術 | ナノ
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「お疲れ〜」

報告書類を持っていた名前に後ろから声をかけてきた五条に名前は小さく「げ」と声を漏らした。
こういう声色の時はいいことがないのを経験しているが故に漏れ出た本音に気づいた五条は「ひどーい!」と声をあげる。
これは絶対にろくなことがない、と名前は思った。

「なに?あ、イタドリくんどう?」
「じゃじゃーん」
「にゃーん!」
「な、なんで連れてきてるの?」
「部屋に居ても暇でしょ?連れ歩いてんの、敷地内だけだけどね」
「てか本当に出張すぐ終わらせたんだね…」
「まーね。一応可愛い生徒の身の安全のために。帰ってくるの遅くなったけど、悠仁が出迎えてくれてさー、いやー僕も名前の気持ちわかったよ…あの生意気なスグルを飼っていた名前の気持ち」
「猫、可愛いでしょ…?」
「悠仁が可愛い」
「あっそ。」

ひょい。と五条の手からすり抜けてトンと着地をする。その姿はまさに猫である。
思わずしゃがんで頭をカリカリカリと掻くように撫でると気持ちよさそうにすりよってくる。
かわいい。その一言である。

「あ!また撫でてる!」
「あ、ごめんねイタドリくん」
「んに?」
「い、いたどりくん…」
「ふふふ…悠仁の可愛さにもうメロメロだね名前…」

すりすり、もっとして。と言わんばかりに名前すり寄ってくる猫。
元よりフレンドリー、コミュニケーション能力が高いのだろう。名前自身そのイタドリユウジという人間は「両面宿儺の器でいつか処分される男の子」という認識でしかない。
七海には「いい子ですよ」とは聞いていたものの、今までかかわることのなかった学生である。
そもそも名前自身学生にかかわることがあまりなかったのだ。学生の戦闘タイプの相性をとっても名前と合うタイプの子はいなかった。

「あーん、お腹見せてくれるの?かわいいー!」
「まって悠仁、お前…僕にだってそんな恰好しなかったじゃん…!」
「ふふふ…元猫飼いの手にかかればこんなもんよ…ここ?ここが気持ちいのかな?」
「そ、そんな恰好まで!?」
「あ、私報告書出さないとだから行かなきゃ。じゃあね、イタドリくん」
「え」

またね。と喉を撫でて名前は立ち上がって五条に手を振って足早に去る。
いやいやいや、ここはもっと猫を愛でるところでしょ!?と思って呆然とするが、当の猫である虎杖は撫でてくれた名前が居なくなったことに今更ながら気づいて「あれ?」という顔をする。

「悠仁」
「んに?」
「名前に撫でてもらって気持ちよかった?」
「に!」

よし。と抱き上げて名前が報告書を提出に入った補助監督が事務作業をする部屋に入る。
虎杖が猫になったことは高専の補助監督には周知されている。五条がその虎杖を抱えてくるとは想定外だっただろう。入室時に補助監督たちがざわついたのだ。

「で、以上です」
「はい、確かに……どうしたんです、五条さん。虎杖くん?を抱いて」
「うわ、ビックリした…イタドリくん抱っこしてどうしたの?」
「はい」
「え?」

渡されて猫(虎杖)を抱く名前。ゴロゴロと機嫌がいいのだろう、喉が鳴っている。
名前は猫が好きだ、飼っていたし。学生のころ実家から猫がわざわざ名前に会うために高専までやってきた。それに関して夏油には世話になったし、双子の世話だって猫はした。まあ世話というより相手、子守りではあったが、それでも双子の遊び相手になってくれただけ夏油は助かっただろう。

「にーう!」
「え、え?」

ご機嫌に鳴く猫(虎杖)とそれを見てニコニコする五条。
猫好きの補助監督からは「いいな…」という目で見られている名前ではあるが、今の状況が整理できないので猫(虎杖)を五条を交互に見ては「え?え?なに?なんなの?」と戸惑っている。
確かに今現在は猫だが、本来は思春期真っ盛りの15歳の男の子だ。

「今日暇でしょ?」
「暇じゃないよ」
「暇だよ。七海と猪野ペアに名前の任務も押し付けたから」
「えっ」
「高専内で悠仁の面倒見てよ、僕また出なきゃなんだ」
「でも、この子宿儺の」
「大丈夫!制御できてるから猫でも!」

じゃ、そういうことでお願いね!と名前の両肩をぱんぱんと叩いて長い脚で逃げていく五条。
報告書を出した補助監督と顔を見合わせ、同じ速度で猫(虎杖)を見る。
ゴロゴロと喉を鳴らし、ご機嫌であるのはわかる。

「ど、どうしよう…」
「五条さんの、指示という事にしておくのは、どうでしょうか」
「ま、まあ…それしか、ない、ですよね……」
「五条さんの言った通り苗字さんの本日の予定は七海さんと猪野さんにお願いされていますので、まあ…はい、虎杖くんのお世話、というか監視でしょうね」
「……イタドリくん、君はそれでいいの?」
「うに?…にー!」

ニコっと笑うように鳴く姿は可愛らしいが、もう少し色々と考えた方がいいぞ、と名前は思った。

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