呪術 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「ああ名前お疲れ」
「疲れたー。これお土産」
「お!」
「あの2人は元に戻った?」
「ああ。五条は昨晩、夏油は今朝戻ったって連絡が来た」

名前が持っていたトートバッグから日本酒が1本。家入の使っている机にドンと置かれれて家入はその瓶を見て暗かった表情がわずかばかり明るくなる。

「なに?実家行ったの?」
「任務がそっち方向で、ついでに実家に顔出して酒持ってきた。五条くんにはお菓子、夏油くんには蕎麦」

特にあの2人は面倒だしね。と名前は笑う。
特級の2人が任務ができなくなったが故に1級の呪術師が各地に飛んで任務に勤しんだのだ。勿論名前も例外ではなく、遠い実家付近の任務に赴いて戻ってきたのだ。

「見合いがどうのって煩いんだもん、嫌になっちゃう」
「アラサーがだもん言うな」
「同期なんだからいいじゃん。愚痴も言いたくなるよ、ちょっと実家に顔出せば結婚だ同級生のエリカちゃんはもう2人目生んだとかケンゴくんは結婚したとか。うるさーいって感じだよ」
「へえ?」
「こちとら命張って任務してんのに結婚だのしてる暇ないっての。まあ興味もありませんが」
「それは言えてる。これからオフ?」
「ううん。あと都内で1件任務がある。終わったら即刻帰って寝るわ」
「なんだ、飯でも誘おうと思ったのに」
「飛び回ってもう疲れが…また今度」
「そうだな。五条と夏油に奢らせよう」
「さんせーい!」

気をつけてな。と家入に言われて名前は頷いて医務室を出る。
大きなトートには家入のお土産のほか、先に言っていた2人のお土産が入っている。会う予定は今のところないが、あった時に猫になった時の件で色々文句を言われそうなので回避のために。言えば名前もこの急な任務の被害者なので逆に謝ってほしいくらいだが、あの2人がそんなことをするはずもなく「なんで七海の世話したのに」と文句を言われるのはわかっている。置いて行くときの夏油のあの声が、まさに文句のある鳴き方だった。

「苗字さん大荷物っすね」
「今硝子にお土産渡して、残りは特級対策」
「特級対策。確か実家近かったんですよね」
「そうなの。顔出したら見合いだ結婚だ子供だって煩いんだよ、嫌になるよね」
「あー…ご実家呪術師っての知らないんすか?苗字さん一般家庭出身すよね」
「男児第一!だから私の事はまあ可愛いけど男児未満って感じ?当時も私が高専入るって時は普通に学校だと思ってたくらいだし。今も理解してるとは言い難いかな…」
「うわ…大変すね」
「そうっす」

大変なんすよ。と名前は新田に愚痴をこぼす。
これから最後の1件は新田が補助監督として同行する。名前の持ったトートに驚いていたが、名前の「特級対策」という言葉に納得した。
1級の呪術師も比較的各地に飛びまわるので、その都度土産やらを買っていては大変である。それに各地の銘菓が休憩所に山になっても邪魔なので基本的に呪術師も補助監督も土産は買ってこない。
ただし特級に関しては別な部分がある。

「「名前ちゃーん」」
「うっわ。来たよ」
「名前、よくも私たちを置いて行ってくれたね」
「僕なんて本家送りだよ?酷くない?酷いよね」
「私は双子に風呂に入れられるし一緒に寝る羽目になるし。成長は嬉しいけど指導しないとだと痛感したね」
「はいはいお疲れお疲れ。これお土産ね、五条くんと夏油くん」

ほいほい。とトートから2人にお土産を取り出せば、トートは空なのかひどくショボくれた印象になる。
新田も名前がこの2人と家入と同期なのは知っているので「仲が良いな」という印象で聞かない。特級とここまでできるのだ、他の補助監督や呪術師だって一歩下がってしまう。

「あ!これあのゼリーじゃん!」
「あの蕎麦!ってことは、実家行ったの?」
「任務が近場だったの。硝子にはお酒持ってきた」
「え?名前実家行ったの?」
「任務が近かったからね。久しぶりに顔だしたら見合いだの結婚だの子供だのって煩いの。うるせー!って叫ばないで我慢したの褒めてほしい」
「偉いね…私だったら潰してたよ猿がって」
「他にお土産ないの?饅頭とか」
「そんな買ってきてないよ。かりんとう買おうかと思ったけどこの前五条くん食べたし」
「えー!あれ…また食べたかった」
「お取り寄せもあるから利用してね。私これから任務あるから」
「それいつ終わる?」
「さあ?とりあえず資料だと1級だからそれなり?」
「お腹空いてるだろ?ご飯行こうか」
「無理!私は疲れたので即終わらせて帰って寝る!」

という事で!と名前は元気よく「バイバイ!」と手を振って新田と駐車場に向かう。それから目的地について帳を降ろして、いつものように呪霊を祓って、この忙しい数日は終わるはずだ。
任務が終わって帰り道にコンビニに寄ってもらって、チルドのパスタと缶チューハイを買って帰宅する。数日前にあった猫の気配ももうないし、七海のためにと買った猫用のチーズが1つだけ残っている。今思えばそれをあの双子にあげればよかったかな、と思うが今更思い出しても無駄である。自分で食べるか?とも思ったが、動物用は単純に美味しくないのでそのまま捨てることにする。
シャワーを浴びて、パスタを温め、缶チューハイの口を開けて。
ごみをごみ箱に入れて歯磨きして寝るか。と思っているとピンポンピンポンと呼び鈴が連打される。

「うるさーい!」
「あ、酒飲んでる」

まじかよ。という五条の声。
大きな男が2人、名前の玄関の前にいた。
猫から戻って任務がたまっているだろうに、何をしているのか。

「なに?私もう寝るんだけど」
「これから硝子も誘ってご飯にしよう」
「はい?」
「僕の部屋がいい?傑の部屋がいい?」
「いや、寝る…」
「ソファ貸してあげるからそこで寝な?」
「え、…酷い…」
「なら悟の部屋がいいんじゃない?無駄にデカいし」
「じゃあそうする?」
「名前はそこで寝て、私は蕎麦を食べるし硝子は酒を飲むし、悟は甘いものを食べるから」
「それ私要らないよね、なんで私はソファで寝るの?普通に部屋で寝かせてよ」
「僕のベッド貸そう?」
「自分のベッドで寝たいの!!」

はい連行。と腕を掴まれ玄関にあるカギを奪われて部屋を出される。

「あー!!人でなしー!クズー!」
「スマホいる?」
「………いる」
「とっておいで」
「…そのまま寝たいです」
「「だめ」」
「…うわん」



「うわ、本当にいる」
「しょうこ…」
「酒飲んだな名前。酒飲んだ顔している」
「…強制連行だよ」
「可哀想にな。おい五条、酒飲むグラスだせ」
「しょうこお!」
「そこで寝てろ」

硝子のばかー。と五条の部屋の大きなソファの上で丸くなって毛布をかぶって寝始めた名前。
「名前捕獲した」という短い電話。
家入は五条と夏油に「名前連れてきて宅飲みしよう。名前はそこらへんに転がして置けばいいし」と言われて家入は思らず「クズだな」と笑った。
そして本当にいた。

「なに?本当に連れて来たんだな名前」
「私たちだけだと名前が仲間外れみたいじゃないか」
「学生の時そうだったろ?名前は自分から外れてたけどな」
「僕らが許さないの。はいグラス」
「それ私も入ってんの?」
「硝子は前から名前と仲良かったしね」

手渡されたグラスに名前からもらった酒を注いで1人で飲み始める家入。夏油が「私も」とグラスを出せば注いでくれたので飲む。
五条は適当に買って来たであろう料理を食べ、夏油は名前からもらった蕎麦を茹でて食べている。冷蔵庫には名前が渡したゼリーが入っているかもしれないが、五条の事なのですでに食べているかもしれない。
当の名前はソファですでに落ちたのだろう。規則正しい寝息が聞こえてくる。
この状況で寝てしまう程度には疲れとアルコールが効いているようだ。

「名前可哀想にな」
「ん?」
「疲れて帰ってきて寝ようとしたら捕まったんだろ?ベッドで寝かせてやれよクズ」
「名前が嫌だってごねた」
「だいたい名前が悪いんだよ硝子」
「あ?」
「そうだそうだ!」
「私たちがせっかく猫になったっていうのに、ほっぽり出して任務に行くんだから」
「そこはさ、『五条くん、可愛いね』って抱っこするでしょ」
「そうそう『夏油くん抱っこしてあげる』って一緒に寝るでしょ」
「………………」

七海ばっかりズルい!と大の男が言うものだから家入は思わず「クズ……だから七海に懐くんだよ名前は」とこぼした。

/