呪術 | ナノ
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名前を追いかけてはるばる東京のこんな辺境の地までやってきな大きな黒い猫。
名前をスグル。「優しい」と書いて「スグル」だと飼い主である名前は言っていた。
名前曰く「もうお爺ちゃんだからスグル」と言ってはいたものの、五条から見て猫の毛艶はいい。それこそ数日前まで入院してたとは思えない。

「何してんの五条、猫のほうのスグルと見つめ合って」
「こいつが睨んでくるから睨み返してんだよ」
「おいスグル、名前が探してたぞ」

にい。と一鳴きして猫のスグルはふいと視線をそらして、まるで理解しているように座っていた腰を上げて共有スペースから出ていく。
アイツ人間の言葉がわかるのかよ。と五条が独り言を漏らせば家入はげらげらと笑う。
猫のスグルは名前に懐いているのは当たり前だが、女子である家入にもそれなりに懐いている。反対に五条と夏油には愛想の一つさえふりまこうとはしないのは癪ではあるが、猫は大きいもの、低い声が嫌いだと言われればどちらとも該当するでの何も言えなかった。

「嫌われることしてんだよ」
「うっせ!」
「そーゆーとこ。撫でたいなら名前に頼めば?」
「俺がいつあんな猫なでたいって言ったよ」
「へえー。まあ私はいいけど。案外触り心地いいぞ、スグル」
「へ!傑だって猫なでてないし」
「私?撫でたことあるよ」

うわ!!と驚いて声をあげる五条の後ろに猫と同じ名前の夏油。いや、猫が同じ名前、とした方がこの場合はいいのかもしれない。
大きな声に驚いた夏油も「悟うるさいよ」と迷惑そうにしている。

「だから嫌われるんだよ」
「嫌われてねーし!っつーか、こっちから願い下げたっての!」
「猫の目をジーっと見つめたら敵対行動だってよ五条」
「大きな声も低い声もね」
「で、悟は猫なでたいんだ?」
「べ つ に !」

ふん!とソファにでんと座り、ポケットから何の連絡も来ていない携帯を引っ張り出してカチカチとなぶる。
ニヤニヤと2人がしているのを視界の端に入れつつ、それに反応するとまた揶揄われるのをわかっているからだ。

あの猫、スグルは先生と相談した結果、呪霊が見えるのがほぼ確実で害をなさない程度の低級であれば退治もできる様だ、とのことで名前が面倒を見ることを条件に寮に置かれている。
同級生男子2人には愛想が悪いが、それでも引っかいたり噛み付いたりはしない猫だ。鳴く声も思いのほか小さいし柱で爪を研ぐこともしない。
女子の家入には撫でられるくらいは、と近くによっても逃げないが男子は名前が居れば低確率だが触ることができた。

「硝子、優見つかったよ」
「ここで五条と睨み合ってたよ」
「うわ…びっくりした、皆居たんだ」
「スグルは?」
「薬飲ませたら機嫌悪くなってどこか行っちゃった」
「悟みたいだ」
「あ!?」

びくっとする名前。
今来たばかりの名前にはなぜ五条が機嫌が悪いのかわからない。
ソファの真ん中を陣取り、入ってきた名前をギロリと睨みつけ、またフイっとあちらを向いた。

「五条の奴、スグルに触れなくてイラついてんだよ」
「へ?」
「うるせーぞ硝子!猫なんかに触る必要ねーし!」
「私抱っこしてみたいんだよね…」
「案外抱き心地良いぞ。まあ私も少しだけだけど。こう、なんていうか柔らかい」
「私以外の抱っこ嫌がるからね…お母さんもお父さんも全員駄目だったし。硝子の場合タバコくさい。歌姫先輩はちょっと膝に乗ってたかな」
「猫のくせに生意気な」
「硝子…」
「歌姫先輩の膝の上は私んのだ」
「えええ…」

そっち?と名前は笑って家入の隣へ。
この業界は言えば男尊女卑が根強い。だからこそ女性は女性同士固まる。勿論全員が全員ではないが、まるでイワシの様だ。
敵から身を守るために固まる。それでもまだこの学年はマシな方だろう。
御三家である五条悟が女子に対して「女のくせに」とは今のところ口にしたことはない。

「ねえ名前、今度猫抱っこさせてよ」
「夏油くん…は、たぶん嫌がられるかな…」
「なんで。私恩人だよ?」
「猫にんなこと関係あるかよ」
「それなら俺だって触ってるしってか?」
「うるせ!猫猫うるせーんだよ!」
「悟、猫の魅力が馬鹿にできなんだよ」
「あ?」
「まあ触れない悟にはわからないことだけどね」
「んだと!?」

ガバっと立ち上がり、長い脚で夏油に詰め寄って「俺のほうが上だし!」と意味の分からないマウントをとる五条。
それを見て家入はまたゲラゲラと笑うし、夏油は夏油で「そうかな、猫のほうが可愛いし」と煽る。途中から来た名前はなんとなく猫が絡んでいるんだろうなという予測は付くが何のことだかわからない。

「そういや名前ってスグルと寝てるの?」
「寝てるよ。冬は一緒に布団に入るけど、今の時期は枕元で寝てる」
「へー。」
「冬はね、温かいんだよ…湯たんぽならぬ猫たんぽ」
「いいね、冬一緒に寝よ。歌姫先輩と名前とスグルと私らで」
「楽しそう」

馬鹿置いて菓子でも食おうぜ。と言わんばかりに家入は名前の手を引いて共有スペースから出ていった。
しばらく女子の楽しそうな声が聞こえていたが、すぐに聞こえなくなり、残った男子2人は冷静に距離をとる。

「…馬鹿らし」
「ま、一応はあの猫は名前の猫なんだから嫌がらせしちゃだめだよ」
「あ?」
「悟は知らないかもしれないけど、こういう些細なことって後々響いてくるんだよ」
「人の大切にしているものをないがしろにしては駄目だった事」
「意味わかんね」

まあ、でも猫と戯れている女子は見てていいもんだよ。となんとも言えないことを言い出した夏油に五条は「うへぇ」と悲鳴を上げた。


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