呪術 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「伏黒って名前さんと仲良いわよね」

見かけると寄ってってるじゃない。と釘崎が任務に向かう車中でスマホをいじりながら言いだした。

「確かに。名前さんも『恵くん』て呼んでるし。てか、なんて名前さんてゲトーさんって呼ばれてないの」
「色々事情があるんだよ」
「で、なんで?」

運転手をしている新田までが「確かに伏黒くんと名前さん仲良いっすね」と興味ありげに聞いてくる。
別に隠しているわけではないがこうも興味津々だと言わんばかりの中で言うのもなんだかいやだ。だからと言って関係ないだろ、と突っ返せば面白がるに決まっている。
ひとつ溜息をついてから伏黒は続けた。

「小さい時から世話になってる」
「じゃあ伏黒と名前さんは付き合い長いんだ。どのくらい?なあなあ」
「………俺が小1か小2くらいだから、……10年、くらいか?」
「へえ、本当長いんだ」
「名前さんが伏黒くんと話すときはなんとなく弟って感じがしてるんだよね」
「まあ、そんなもんですから。授業参観とか三者面談とか、色々」
「え!マジで!」
「マジもんの保護者枠じゃん…なにがどうしたら伏黒なんかの保護者枠になるのあの人」
「うるせえな、色々あんだよ」
「一緒に風呂とかはいった?」
「入らねえよ!」

その一言が余程周りは面白かったのか車がエンジンと道以外で大きく揺れる。
「なにムキになってんの?」「それは虎杖くん、まずいっす!!」と主に女性陣の方ではあるが。
言った方の虎杖は「え?なんで?」と頭にハテナを飛ばして何かおかしなことでも言っただろかと不思議そうにしている。






「あれ、皆お疲れー」

三人が高専に戻ると名前も高専に用事があったのか伏黒としては嫌なタイミングで会ってしまった。
釘崎と虎杖は「お疲れっす」と挨拶をする。そしてくるりと伏黒を見て「ほら、名前さんだよ」とニヤニヤするではないか。

「どうしたの?」
「なあなあ名前さん。名前さんて伏黒と昔からの知り合いなんだって?」
「ああ、うん。そうだね。恵くんが小学…何年だっけ?低学年くらいからの知り合いかな」
「伏黒、可愛かったですか?」
「んー、まあ年相応に?どうかしたの?二人とも顔が妙に恐いよ」
「ぶっちゃけ、伏黒と名前さんの距離が近いからそういう事かなって」
「そ、そういう?」

にーっと笑う釘崎。とりあえず笑う虎杖。溜息しか出ない伏黒。
名前は名前で「え?うん?なに?」と迫る釘崎に圧倒されている。

「えーなになに?楽しそうな事してるの?僕も混ぜてよ」
「あ、五条くん良い所に」
「じゃあねー」
「待てコラ。伊地知くんが連絡取れないと私の所に連絡が来たので早急に連絡する事。あと七海くんからクレームが来たのでチョッカイださない。そして私に厄介な用件をまわすな、私サポートなかなかつかないんだからね」
「えーそんなこと言われても僕わかんなーい」
「五条さん家の御当主様、温情を頂けませんか」
「とりあえず伊地知はマジビンタ」
「後輩をいじめない」

急に出てきた五条が風の様に去ろうとするのを名前はすかさず五条の上着の端を掴んで阻止する。
それから色々と名前からは次々と誰がどうだと言っていたからどうにかしろと言う名前経由のクレームが矢継ぎ早に出てくる。

「以上、わかった?」
「えーわかんなーい」
「じゃあこの頼まれてた資料も要らないのかなー?」
「それは要るー。てかさ、なんで名前さんからそんな色々言われるの?僕」
「それは先生が色んな人に迷惑かけてそのクレームが名前さんに行くんじゃないんですか」
「もっと言ってやって恵くん」
「小さい時から名前さんの電話なる度に先生の所連絡してたみたいだし」
「そうだそうだ!私経由にするな!おかげで発信履歴はほぼ五条くんだったんだから」
「だから着信履歴名前さんばっかりだったか僕の携帯…名前さん僕の事大好きじゃんって思ってた」
「それはない、絶対にない」

酷い名前さん!と悲劇のヒロインぶる五条に釘崎が「うわマジでクズ」と吐き捨てるあたり学生からの信頼がうかがえる。

「なあ、なんで名前さんは五条先生のそんなオモリみたいなことしてんの?」
「良い質問だ虎杖くん!私がただ単に五条くんの先輩かつ五条家に世話になっていたからだよ!何と言う貧乏くじ!!五条くんに直接言えないクレーム、みーんな私!手当欲しい!」
「出そう?」
「え、いいの?」
「いいよー」
「名前さん、騙されないでください。手を切るべき案件です」
「……いや、でも本当…五条くんには世話になってるから……」
「目を覚まして名前さん!これじゃ先生に良い様に使われる女になりますよ!」
「まあ名前さんの世話色々したのは事実だからね、本当」
「んな事言ったら俺もだし。先生は名前さんに甘えすぎだろ」
「恵言うじゃーん」

このこの!と伏黒をつんつんとつつく五条。
実際に名前と五条の関係を知る人は数が少ない。名前と五条は言えば高専時代の先輩後輩で、ある日の事件を切っ掛けに名前は五条家の保護下に入った。
それを知る人間は当時関係があった人間だけで、伏黒恵といえど当時幼いために知らされてはいない。
名前と伏黒とは似たような境遇ではあるが別物である。

「私なんかわかったわ。伏黒が名前さんと仲良い理由」
「あ?」
「同じ人間に同じくらい苦労かけられてる仲間意識ね。てか名前さんの方が上だわ」
「別に僕名前さんに仕事以外で迷惑かけてないけど」
「…俺が小3の時の夏のプール」
「やめて恵くん!それは私にも効く…!泣いてしまうから…!」
「え、五条先生名前さんと伏黒になにしたん…」

えー?と頭を傾げる五条に苦労を察した釘崎と虎杖。
とりあえず二人の中で伏黒と名前は五条に関しては被害者同士で色々と思う部分があるのだな、という答えに行き付いた。

「ということで、私は用事が終わったので帰るね。五条くんに資料を渡したし」
「じゃあご飯食べに行く?奢るよ、生徒たちと一緒に」
「やめとく」
「え、なんで?」
「五条くん無駄に目立つから嫌」
「「あー…」」
「………名前さん、五条先生抜きで俺らとご飯行きましょう」
「賛成。たまには良い事言うじゃない伏黒」
「俺焼肉がいい!」
「え、ま」

さっと五条から離れた伏黒は名前の後ろに回って方向転換をしてそのまま名前の背中を押してその場からスタスタと歩き始める。
それに続けと言わんばかりに釘崎、虎杖に続いて「私中華がいい」だの「え、じゃあラーメン?」と話している。

「え、待って待って。私行くなんて」
「名前さん、名前さんも中華が良いと思いません?」
「えー……恵くん背中押すの止めようか」
「ちょちょちょ!!僕無視するなんて酷くない?僕がご馳走するって」
「私ら名前さんと行くんで」
「そーゆーこと!先生はまた今度行こうな!」
「名前さん何がいいですか。この前言ってたカフェにしますか?」
「え、なにカフェって」
「新しく出来たとこでホットサンドやらあるらしい」
「えーいいじゃん。そこにしましょ」
「中華は?」
「先生を財布に行くからいいわ次回で」
「五条くんヘルプー!」
「ヘルプされたら僕付いて行くよ」
「あ、じゃあいいです」

スパッと断られた五条。それには五条自身も意外だったのか「え、うそ…」と体格に見合ない格好で酷く驚いていた。

/