呪術 | ナノ
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「ね、誰?」
「うん?七海」

名前ちゃんにスペシャルゲストー!と復帰した呪術師がいるからしばらく組んであげて。と五条から呼び出されて来てみれば、そこには金髪長身スーツに見慣れないサングラスをかけた男性と見慣れた五条悟の姿。2人の姿は言えば対象的だった。方や黒、方や白。
とりあえず名前は「五条くん」と声をかけて、相手が誰かを聞くと、それは1つ下の後輩と同じ苗字が耳に入る。

「なな、み?」
「そ、七海」
「え、七海くん?え、嘘だあ」
「本当です。お久しぶりです苗字先輩、いや、苗字さん」
「やだ……」
「嫌われてやんの七海」
「イケメン…超好み、タイプ!」
「はあ!?このグットルッキングガイを前にして七海のほうがいいとか!?ありえないんですけど名前ちゃん!!」

不本意ではあるが、相手に警戒して五条に寄っていた名前はサングラスを外して挨拶をする七海に近寄る。
確かに学生時代から美人の部類で先輩である名前にだって丁寧に接してくれ、呪術師にはならないとなってから久しぶりの再会に名前は学生時代と大きく変わった七海を見る。

「学生時代と違うね…久しぶり、元気だった?なんで呪術師に?」
「色々ありまして。それなりに元気です、苗字さんもお元気そうで」
「名前は誰よりも綺麗な結界を張るからね」
「いきなり実戦大丈夫?」
「本日は苗字さんのサポートをさせていただきます。鍛えていても実戦は」
「五条くん!私が七海くんみていいの?本当に?嘘じゃなくて?」
「そ。」
「ありがとう!大事にするね!」
「…うん?」

今まで見たこのない良い笑顔。
同級生で集まって個々の誕生日の祝いだって名前はこんな風に喜んだことはない。
それに「大事にする」とはどういう意味だ?と五条は頭を軽く傾げる。
名前に七海をあげるわけではない。七海を好きにしていいわけではない。復帰したてだから面倒を見てほしいとはお願いしたが、全てをゆだねるわけでもない。

「大事、に?する?」
「うん!七海くんは大切な後輩かつ美人さんでしょ?怪我しないように気を配りつつ死なないように任務をして、また一緒に任務ができるように鍛えるね!」
「あ、そういうね」
「でもなー、私そんな筋肉隆々じゃないし、鍛えるって言っても何もできないか…七海君ゴリゴリの近接だもんね、ごめんね、力になれなくて」
「いえ、苗字さんは学生時代から頼りになりますし信頼も尊敬もしています。私こそ苗字さんの足手まといにならないようにしないと」
「2人の世界になるなし」

まったく名前ちゃんてば七海七海って!と任務の書類を渡してくる。
今回は1級である名前と復帰したばかりの七海で補助監督が付かないからね、と最初に言われ、次に内容の説明、最後に車のカギを渡された。
「ま、名前ならこの程度ものの数分で終わるでしょ。七海にやらせて名前はサポートしてやって。次回からは七海が名前のサポートだよ、1級の任務になるから」と七海言っていた内容とは逆のことを言う。

「あれ?七海くんが私のサポートじゃないんだ」
「実戦になれるには実戦が手っ取り早いから。勘を取り戻してからのほうがいいでしょ」
「騙しましたね」
「騙してないよ、変更しただけ」
「クソが…」
「クズだよ」
「てへ!」
「終わったら直帰していいの?」
「名前は怪我しないだろけど七海怪我しない?」
「させないから大丈夫。七海くん終わったらご飯食べ行こうよ、ごちそうするから」
「は!?なにそれ!名前僕のこと誘わないくせに!」
「当たり前でしょ!!なんで私が五条くんとご飯食べなきゃいけないの!?」

馬鹿じゃないの!と言って「七海くん、行こ」と資料と車のカギを手に名前は踵を返す。
キーキー言っている五条を無視しして2人で駐車場に行き、名前は運転席に座れば助手席に七海が座る。
七海が「私が運転を」というが名前は「これから久しぶりの実戦だし、緊張するでしょ?」と笑ってエンジンをかけてナビで目的地を入力して発進する。
道のりはスムーズでほぼ時間通りに目的地に着いた。
今回は補助監督が不在なので名前がさっと帳を降ろせば七海はすぐに戦闘の体勢に入る。

「お見事ですね、帳」
「結界術は学生時代から得意だから。等級は低いけど復帰直後かつ久々の実戦だから気を付けて」
「勿論です」
「直帰、直帰だからね!」
「善処します」

懐かしい鉈を持ち、スーツでよくあそこまで動けるなと名前は感心する。
勿論サポートをしながらである。高専を卒業し、高専所属の呪術師として現在働いている名前は五条の推薦もあって卒業してから数か月後には1級へと昇級した。1級ともなると任務も過酷ではあるが、その分下級の呪術師のサポートも受けることができるし移動は基本補助監督が付く。まあ下級であっても上級のサポートにつくので補助監督が付かないほうが珍しいのだが。それでも優先度は高くなる。帰りにご飯食べたいというわがままだって言いやすいし食べたいものを言えるのだ。

「うーん、ざっくりいうと、すごーく”ざっくり”だよね」
「………」
「怪我してる」
「すみません」
「まだ勘が戻らないのわかるけど、飛ばしすぎだし、呪力が学生の時より雑」
「…すみません」
「まあ復帰してから時間が経ってないってことなんだろけど、今回の任務で4、5回は死んでると思う」
「…はい」

ボロ…という音が付きそうである。
スーツは見事に乱れ、擦って生地は駄目になっているし怪我で血で汚れているしボタンだって飛んでいる。
任務は名前にとっては手っ取り早く終わるものだったが、七海のリハビリとなると手間取った。
まず鍛えてはいるが呪術師としての鍛え方ではないという事。良い身体ではあるが実戦向きではない健康趣向から筋トレマニアがまあいいところ。
卒業してから一切使っていなかった呪力に術式は精度が甘い。速度も甘い。

「五条くん、見越してたな。腹立つ」
「はい?」
「絶対これ五条くん私が結界術得意だから七海くんが死なないように組ませたんだよね」

名前の結界術は確かに正確で美しく、柔軟性に富んでいる。
平面的に結界を出して言えばシールドのような使い方もできれば足場にしたり、学生の時は呪霊を閉じ込めてそこを叩く戦法で戦っていた。
七海と組まされ、死角から飛んでくる呪霊を名前がはじいたり足止めをしたり。それこそ4、5回以上は確実に守っている。

「あーあ。結局五条くんの手の上か…その恰好じゃご飯は無理か。高専戻って硝子に手当してもらおうか」
「…すみません」
「じゃあ今度ご飯ね、約束。硝子は酒豪だし五条くんはお酒飲めないし、伊地知くん忙しいし。付き合ってよ」
「え、ええ…私でよければ」
「約束だからね。私普通に飲みたいの、普通に」

でもお腹空いたからコンビに寄らせて。と七海が怪我をしていてもマイペースにわがままを言った。

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