呪術 | ナノ
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「最近2人の任務ないんだね」
「クズ2人?五条は反転術式使えるようになったからかもな。夏油は呪霊操術で怪我あんまりしないし」

極秘任務の手伝いを終え、名前の日常が戻って数か月。
あれほどニコイチだった2人の任務は個別になっていた。特級がニコイチよりのここに行ったほうが効率がいいのは誰にでもわかる。
空いた2つの教室の机を眺めながら名前はいちごオレを飲み、家入は煙草を吸っている。

「そーいや、名前が鹿児島から送ってくれた焼酎美味かったよ」
「まさかメールで強請られるとは思わなかったし、送れとかくるとも思ってなかった」
「ははは。私だって真面目ちゃんの名前が本当に送ってくれるとは思わなかったよ」
「制服着てたしちょうど修学旅行生と混じってたの。いいよね、修学旅行…高専こなきゃ普通に高校行って修学旅行で楽しんでたんだろうな…」

こんな若いうちから馬鹿みたいに働かされることもないしな。と机でうなだれる名前の頭をつつきながら笑う家入。
こんな怪我が絶えない生活とは無縁で、バイトをしたり、クラスの誰がかっこいいとか、誰と誰が付き合ったとか別れたとか、彼氏がどうだとか。そんな会話をして家に帰れば家族がいて、という漫画のような生活を思い浮かべる。

「もしもさ、ここが普通の高校で私たち以外にも学生がいて、五条くんと夏油くんに彼女っていると思う?」
「とっかえひっかえだろ、あのクズども」
「私逆にいないと思うんだ」
「へえ?なんで」
「顔が良すぎて親衛隊的なものがあって、抜け駆け禁止令」
「ぶっはは!なにそれ、漫画の読みすぎじゃね名前」
「実際中学の時あったんだって、本当」
「名前の学校ヤバイな」

同じ学年の男子が非常に顔がよく、スポーツ万能学業優秀。まあ本当に漫画のような存在だった。
1年のころ同じクラスになり、席替えで隣になったときは親衛隊の女子から嫌がらせが来るのではないかとハラハラしたことがあった。実際は何もなかったのだが、3年になって親衛隊の子と仲良くなり、こんなことがあったと話した際には「だってそれで彼の評判に傷がついたら大変でしょ?」という非常に大人な返しがきた。

「おっす」
「よお五条」
「おい名前、なんか食うもん寄越せ」
「え、ちょ、人のカバンあさらないので…」
「硝子のカバンはどうせ酒と煙草しかないんだからお前以外のねえだろ。あった」
「わ、私のチョコ…」
「強盗かよ。名前抵抗しな」
「負けるじゃん……」
「傑は」
「夏油なら1時間前に任務でたよ」
「んだよ…」

名前のカバンからチョコをひったくり、バリっと破って口に入れる。
確かに名前はカバンに食料と称して菓子をいれているが決して五条のためではない。特級の2人に比べて級は低いが、それでも急な任務で駆り出されて食べられないこともある日常だ。食料は持っていて損はない。都内であれば困ることはあまりないが、少しそれてしまえばチェーン店だってないのはザラだ。

「あ、美味いなコレ」
「それ期間限定のやつ…それね、いつもの美味しいんだよ」
「名前、あんたそれだから五条に狙われるんだよ…五条、あんたも名前からたかるの止めなよ、五条家の坊ちゃんが一般家庭の女子から食いもん奪うな」
「誰からならいいんだよ」
「誰でもよくねえわ。食うの止めろ」

余程気に入ったのだろう、名前から奪ったチョコが止まる気配はなく、バリ、ひょいと口に吸い込まれていく。
それを名前は「あ…あ…な、なくなる…」と五条の手の動きに連動して頭が動いている。

「もうねえじゃん」
「奪ったお前が言うな。名前、五条に買ってもらえ。五条は名前と一緒にコンビニ行ってお菓子買え」
「あ?」
「え……いいよ、今日授業だけだから終わったらスーパー行って買ってくる…」
「おい五条、こんな名前を見てないも思わないのか」
「同じの買ってこいよ」
「うっわクズ、超クズ。夜蛾センにチクりな」
「え、先生に『五条くんにお菓子奪われました』っていうの?小学生でも言わないよそんなこと」
「え…」

その言葉に衝撃を受けたのは五条だった。
今まで「あ…」だの「それ…」と弱気だった名前が「そんなこと小学生でもしない」と言い切り、あっさりと「お前の行動は小学生未満」と切り捨てたのだ。

「だいたい夜蛾先生だってとりあってくれないよ、そんなくだらない事」
「く、くだらない…」
「それか可哀そうにって飴くれるくらいだよ」
「はあ!?夜蛾センお前に飴くれんの!?」
「え、あ…うん、たまにね」
「私もらうよ」
「俺…もらったことない」
「悪い子にはやらないんじゃね?」
「先生にも選ぶ権利あるしね」
「あ?」
「あ、ごめん」
「いいぞ名前、その調子だ。お前もやればできるじゃないか」

ししし。と笑う家入にイラつく五条。それに挟まれた名前はとりあえずまた五条に「ごめん…」と謝った。

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