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ひぃ…。という小さな悲鳴が名前の喉と通り抜けた。
190センチを超えているというその身長は女子である名前から見ても十分巨人である。
加えて白髪、青い目、黒丸のサングラスに態度は横柄。
同級生の家入からは「クズ」と言われていて名前がビビらない要素はない。つるんでいる夏油のほうがまだ対人としてはかかわりやすいが、彼に至っては本当にできるなら関わりたくない。怖いから、以外の言葉がない。

「それなに」
「…え?」
「それ」

指された先を見れば、名前が抱えている箱。
中身は仕送りで祖母が名前が好きだからと送ってくれた地元メーカーのゼリーの詰め合わせである。もらったものの、任務や授業、そのほかで忙しく気が付けば賞味期限が近くなっていた。ゼリーというが、メーカーこだわりの品で賞味期限が短かったのをすっかり忘れていたのだ。量が量だけに1人では消費が難しいと思って共同の冷蔵庫にと持ってきた。

「ゼ、リー…」
「傑にやるの?」
「…え、いや…仕送りで、もらったけど、賞味期限近いし、食べきれないから…みんなに、食べてもらおうかって思って」
「じゃあ俺がもらっても問題ないよな」
「え」
「なっ?」

うんうんうん。と名前はビビり散らして頭を縦にふる。
はい、どうぞ!とひと箱差し出せば「食ってやるよ」と軽々とそれをもって男子寮に姿を消した。
あれは確かに美味しいが、どちらといえば女性向けの味付け。
まあ家入あたりは好きではないと思うが庵先輩あたりは食べてくれそうだし、冥先輩だって食べてくれそうだと思った。
自分が食べる分だけ抜いてはあるが、あれを全部食べるつもりなのだろうかと名前はからになった自分の腕を見て、まあいいか。と自室に戻った。



「名前、あのゼリー名前のなの?」
「ゼリー?」
「昨日夏油と五条と桃鉄してたらさ、五条が持ってきて食ってたんだよゼリー。名前からもらったって」
「あ、あー。あれね、おばあちゃんから送られてきたんだけど食べるの忘れてて。共同の冷蔵庫に入れて食べてもらうと思って持ってたら五条くんが欲しいって」
「あれ美味かったよ」
「美味しいでしょ。私もあれ好きなんだ」
「五条の奴、夏油の食べかけまで食おうとしててウケたよ」

おっすー。と教室に向かう途中に声をかけられて一緒に歩く。
あの3人は仲がいい。というより特別が特別を呼んでいるというのだろうか。平々凡々である名前にはとてもではないが、その輪に入ろうとは思えない。
一応のやさしさだろうか、声はかけてもらうことはあるが入ったことはない。場違いは理解している。
単品であれば怖くはない、いや、五条は怖いから訂正。と名前は脳内で訂正をする


「名前もやるじゃん」
「…やる?」
「夏油には蕎麦やって、五条にはゼリーやって。懐かせる算段?」
「え、違うよ…怖いこと言わないでよ…」
「違うんだ。てっきり餌で懐柔させよとしてんだと思った」
「そもそもあの2人ってそういうので、どうこうできるタイプの人?」
「さあ?どちらかといえば、する側の人間だな。名前も気をつけな」
「硝子のほうが仲いいじゃん。私なんて教室の隅っこに徹してるから」
「へえ?そんなつもりなんだ名前」
「ん?」
「そうやって自ら下に行くのやめな」
「……」

上げているのか下げているのか。名前のはわからなかったが、おそらく怒られたのだろう。いや、叱られたのかもしれない。
歩きながらスパスパとタバコを吸う家入にも名前はもう慣れてしまっている。

「そうだ、課題やった?」
「数学?一応。それよりまだ報告書書いてないからやらないとなんだよね」
「あー、そっちの報告書も面倒だよな。こっちのも面倒だし参考になるのないし」
「反転術式を他者に使えるのがすごく稀なんでしょ?大変だね」
「まあな。特級に挟まれる名前ほどじゃない」
「挟まれてない挟まれてない」
「戦闘タイプならうちらの学年じゃ私以外だろ?名前は挟まれてるんだよ」
「そうかな…特級2人、反転術式を他者に使えるのが1人。どうみても劣ってるし」
「馬鹿だな、そこで辞めずにここにいるだけヤバイやつだろ」

うーん?と頭を傾げる。
周りがすごいのは理解している。
だからこそ名前はそこから一線を引き、そしてそこから何歩も後ろにいて3人の背中を、姿を眺めている。仲良くしてもらわなくていいし、とりあえず表面上だけ仲良くしてもらって、学校生活が円滑にできれば、とりあえずはいいと思っている。
少ない人数だ、敵は作りたくない。

「名前」
「うん?」
「名前が思ってるよりも五条も夏油も私もちゃんと名前のこと友達だと思ってるよ」
「…う、ん?」
「だからさ、ちゃんと名前も2人と友達になってやりなよ」
「………」
「寂しがってるよ、あのクズども」

えー。と思わず名前は声に出した。

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