呪術 | ナノ
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「どうしたの、顔色悪いけど。二日酔い?変なモノ食べた?名前くんは拾い食いするタイプじゃないし…あ、もしかして東京に出張?最近多いわね」
「いおりさん……」
「なによ。あ、そうだ加茂なんだけど、今日私が実習につく予定だったんだけど任務入ったら代わりにお願いしたんだけど。申請書も書いておく……本当どうしたの」

手に持っていた封筒を庵に黙って渡す名前。
それを庵は黙って受け取り、名前の顔とそれを交互に見比べて封を開けて中身を見る。もしこれが仮に見てはいけない書類だとしても、名前がそれをわざわざ誰かに見せて巻き込むと言う愚行は行わないという信頼はある。
というか、庵にとって名前は特級の2人よりも断然信頼している。同じ京都で任務を行う仲間であり、双子の片割れよりも可愛げがある。たまにふざけるが公私混同はしっかりと分けているタイプだ。たまに飲みに行くが酒で失敗もしない。むしろ助けてもらっているのは庵の方である。

「………まっ!?え、うそ、本当なの?え、ちょ」
「こんなのありかよ………」
「お、おめんでとう?」
「全然めでたくない」
「そ、そうね…貴方呪術師が嫌で補助監督していたんだものね……でも、なんで?」
「五条と傑の計画だよ…こんなことが通常通るわけないし……あの野郎……」
「でも、ブランクとか大丈夫なの?あのクズ達の基準なんて到底無理なわけだし」

封筒の中の書類には「夏油名前を補助監督から呪術師として昇格する。等級は審査し後日通知する」と実に簡単に書いて有る。
正式な書類の一歩手前。署名には五条家当主の署名、特級呪術師夏油傑の署名。ついでに上層部のお偉いさまの署名まで綺麗に入っている。

「が、学長は?楽巌寺学長!だってあの人」
「楽巌寺学長から渡されました………」
「あ……そ、そう、なんだ……。京都での、任務になるの?」
「署名している名前みればもうこれ東京でしょ………あー……」
「の、飲みに行く?」
「そんな気分になれない。ここでの補助監督してのキャリアが……くそ」
「いつから?」
「近々だって……もう具合悪い事にして帰るわ………」
「そ、そうね…実際顔色かなり悪いし。1人で大丈夫?」
「持ってて良かった高専地内の自室」
「ああ、そうね………」
「加茂くんによろしく…」
「え、ああ、うん……別によろしくなくてもよくない?加茂学生よ?」
「加茂家にゴマ擦っておけばよかったな」
「おい」

ヒラヒラと力ない手が揺れてふらふらと歩いている姿は哀愁が漂う。
昇進はいうが、名前にとって良い意味ではないのは親しい人間ならわかる。何よりこの呪術界で補助監督が呪術師になると言う事が稀、いや無いと言っていいだろう。
呪術師から補助監督になる事はあっても逆なまず無いのだ。それだけの実力があるならまず補助監督にならない。大体なるのが4級から3級程度の能力が無いものだったり、窓から補助監督になるくらいだ。
名前の場合は学生当時から才があり、1級ではあったが「傑と比べられたくない」という理由から補助監督になった。当時は補助監督や呪術師から嫌味やらなんやらあったらしいが持前の営業スマイルと根回しでなんとか切り抜け、今となってはベテランに近い。若い呪術師や学生は名前が呪術師であった事など知らないくらいだ。




「私夏油名前は本日より呪術師として復帰することになりました………そうだ、死のう」

最後の言葉に補助監督の後輩たちが一斉に「うわー!!夏油さん!!!!」と一斉に焦り出した。
京都高専に所属する呪術師、教師、学生、補助監督、その他の関係者が集まる集会で楽巌寺学長が「皆に知らせることがある、夏油名前、前へ」と呼び出された事にある。
庵は実際そうなるのは本人から見せられていたので驚くことはなかったが、それでも最後の言葉に心臓が飛び跳ねたのは事実である。

「知っている者もいると思うが、夏油名前は夏油傑特級呪術師の弟である。この京都校に置いて勉学に励み、任務をこなし、実に真面目な学生であった。当時から1級として活動しておったが補助監督として今任務してついていたが本日より呪術師として任務となる。今まで補助監督をしていたから下級から徐々に1級の任務へとなるが、それまで皆頼んだぞ」
「………」

マジかよクソ。という声が聞こえそうな顔である。
しかしまだここは京都だからなー…という庵はふと思う。
あの2人の特級の事だからここで適当に過ごさせてから東京に来いと言うのだろう。アレの性格は学生の時から変わらない。あの2人は名前を構うが名前は表だって嫌がりはしないが面白くないのは庵も知っている。酒の席で愚痴っていたのを覚えていた。
それから言えばいつもの様に話が始まり、まだ終わらないと全員が思ってやっと終わり解散となる。
酷く顔色が悪い名前を全員が全員遠巻きで見守り、ふらふらと歩き出す姿に誰もが「誰か助けてあげて」と思っていた。
それにしびれを切らした庵が大股で近寄り、名前の背中をバシンと大きな音を立てて叩く。

「あーもう!シャキッとしなさい!そんなんじゃ本当に死ぬわよ!!」
「いおりさん……」
「だいたいね、アンタ私より上の級なんだから!そんなだらしない格好学生に見せるんじゃないわよ!!補助監督じゃないんだからスーツなんて辞めさない!スーツが良いなら七海くんみたいなのにしなさい、見分けがつかないのよ!!」
「もういっそこのまま黒スーツで補助監督のフリして行こうかな…あ、呪術師辞めればいいのか…」
「それこそ無理でしょ。アンタの片割れとその親友!この原因よ、逃げられるわけないでしょ!ほら、学生と同行して任務でしょ。三輪!メカ丸!」
「は、はい!!」
『なんだ』
「名前くん連れて行きなさい。アンタ達の実習は名前くんと一緒だから。駐車場で待ってなさい」
『……飯は食ったか?』
「昨日食べたよ…」
「うわ、今日食べてないんですか?じゃあ行く途中にコンビニ寄ってもらいましょう!」

学生2人に両サイドを固められた名前は引きずりはしないが連行されるように駐車場に向かった。
いつもであれば颯爽に歩いて学生や呪術師と並ぶ名前があそこまでなるとは、どれだけ呪術師が嫌なんだ…と庵以外の全員が思った。

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