呪術 | ナノ
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※夏油傑生存IF
※教師IF


「ちょっと、名前く……うげ!!」

うん?と同じ顔をした大男が二人声のした方を向く。
一方は長髪で特級、もう一方は庵歌姫もよく知る短髪で補助監督の男だ。
この二人は双子で、特級の方は東京を中心に活動しているが補助監督の方は京都で任務を来ないしている。

「あれ、庵さん」
「なんでアンタこっちに居るのよ」
「任務だよ。名前はこれから庵と任務なの?」
「庵さんの担任している学生の実習の送迎があったんだけど、傑が来たから傑の任務に回されたんだよね」
「え、そうなの?連絡来てなかったんだけど」
「斉木さんが引き継いでくれたんだけど…」
「君嫌われてるんじゃない?」
「失礼な、庵さんは慕われているぞ」
「私かよ!お前だよお前!夏油名前!」
「それこそ失礼だよ。名前は私の双子の弟だよ?」
「そうそう、表だって楯突いて損をするだけじゃないか。なんせ私の後ろには特級が居るんだ」

なんでそういう時に限って仲が良いんだよ!と思わず庵は大声を上げる。
そもそもこの二人は双子ではあるが仲が悪いワケではない。ただ活動の場が東京と京都と言うだけで、普通に連絡を取り合うし片方が片方の所に行けば食事にだって行く。
ついでに言えば傑の方にいる美々子と菜々子とも仲が悪いワケではなく、会えば挨拶だってするしご飯だって一緒に食べる。

「…あんた、相方がいると面倒くささが増すわね」
「はははは。特級が兄貴だから仕方がない。斉木さんに連絡しようか?」
「いいわよ。斉木さんだってまだ新人じゃない、一杯一杯なのよ。教育係誰よ」
「アイツアイツ、片岡」
「誰?」
「後輩。今回初めて教育係なって、アイツもてんやわんやしてるっぽいんだよ」
「そそっかしいからね、彼」
「そのくせ手伝おうとするとヤケになるし」
「アンタ教育係だったでしょ、どうにかしなさいよ」
「もう手を離れているので。まあ後日飯でも誘ってやるさ」
「名前、案外ちゃんとやってるんだね」
「まあな。呪術師と違って人間関係さえ気をつけておけば命の危険はないし」
「後ろに私がいるし?」
「そうそう」

実際の所、京都の方で特級に関わりがあるからと言って名前を恐がる人間は少ない。
そもそも京都で特級と言うのはある意味幻の存在である。東京の方にいるらしいよね、程度なのだ。
夏油名前が特級の双子の弟である、というのは周知の事実ではあるが実際にその兄を見た事があるのは少数。
故にここ京都で名前が特級の縁者だからといって恐がるような人間はいないのだ。
学生であれば交流会でどちらか、もしくは2人の特級を目にすることはあるがどちらも教職なので対峙することはない。まして術師になってしまえばそれこそ特級を目にする機会なんてなくなる。

「斉木さん呼ぼうか?」
「いいわよ、補助監督室に行ってみるから。打ち合わせもあるし」
「あ、じゃあ私のデスクの右側の真ん中の引き出しにお菓子あるから斉木さんアワアワしてたらあげてよ」
「は?」
「クッキーかチョコ入ってると思うから」
「……アンタ、そんなの常備してるの?」
「補助監督は何かと頭のエネルギー使うし、なにより人間関係が円滑になるからね」
「あ、そうだ名前。悟を甘やかさないでくれないか」
「あ?」
「悟の奴、京都行って戻ると我儘が増すんだよ。名前なら許してくれたーとか名前ならしてくれるのにーって」
「あーあ、だから五条の奴名前じゃないと京都来ないのね!」
「だって相手五条家当主で特級だろ」

伊地知くん見ろよ、下手に真面目だからメンタルやばそうじゃん彼。としれっと言う名前。
確かに下手に動いてイチャモンつけられたら面倒なのは庵としても同感である。なにせ庵自身もあれには手を焼いているし関わりたくないくらいに嫌いである。しかしそれを表だってしたところで面倒になるのはいい大人だししたくはない。
だからこそ、ではないが名前はあえて付き合っているのだという。

「あ、でも名前くんがアイツの相手してくれるからこっちも助かってるのよ」
「へえ?」
「こっちの補助監督はアレに慣れてないでしょ?その点名前くんはアレがこっち来た時についてくれるから。とりあえず五条に名前くん付けておけば大人しいし」
「へえ…そうか。ねえ名前、東京おいでよ、美々子も菜々子も名前に懐いてるし」
「嫌だよ……傑と離れたくて京都に来たんだ、わざわざ東京行く理由がないね」
「なにー?アンタ嫌わらてんの?」
「聞いてよ庵さん、コイツさ」

出てくる不満。というよりも、羨ましい気持ちだろう。
好きになる女子はことごとく傑を好きになるし、自分よりも勉強できるし運動だって上。
何より教師にだって受けがいい。
それに対してお前は…って比べられる身にもなってほしい。と大きくワザとらしく溜息をついた。

「あー…うん、なんとなくわかった」
「わかってくれる?庵さん!最後には特級、特級だよ!比べられるこっちの身にもなってほしいよ。呪術師になってもどうせ1級どまりだし」
「こらこら、準1級の人の前で失礼だよ」
「あ?んだとコラ…」
「おっと、傑。そろそろ時間だ。じゃあ庵さん、斉木さんのことよろしく。あと片岡にあんまりクレーム言わないであげて、クレームは飲み屋で聞くから」
「奢りなさいよ」
「え…そんな、先輩……」
「後輩に奢る甲斐性もないの?…可哀想に、私が奢ってあげるよお兄ちゃんだから」
「このノリ五条いると面白いけど傑だけだとな…」
「あ、そこすぐ冷めるんだ…まあいいわ、一応私の方が先輩だから奢ってあげる。先輩だから。」

じゃあちゃんと任務いきなさいよ。と呆れた風にしながら補助監督室に向かう庵を見送る2人。
五条と違い、この夏油兄弟は比較的時間を守るし規定を守る方だ。
2人で顔を見合わせ「そんなこと久しぶりに言われたよ」「俺も」と笑いあう。

「さて、庵さんにも言われたし任務行きますか兄さん」
「そうだね。あ、東京の話私本気だからね」
「マジかよ」
「悟とも前から話してたからね。私も名前が居る方が楽しいし」
「うっわ、最悪だ。楽巌寺学長にゴマ擦っとこ」
「あー…あの爺さん名前のこと気に入ってるんだっけ」
「そういうのに取り入るのなかなか得意なもんで」
「ま、こっちは五条家当主いるし。気長に行くよ。美々子と菜々子も名前に会いたいって言ってたし」
「どうせ任務で行った時会うだろ…」
「夏油さまの弟の名前さんもかっこいいからだーい好き。だって」
「うへえ。ほら任務任務クズ兄様」
「口が悪いぞ」

あっはは。と笑いながら長身の男2人組は仲良く肩を組み、駐車場まで歩き出した。

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