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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「あの人誰?」
「さあ?知らないけど。伏黒、知ってる?」
「…ああ、五条先生の義妹」

高専の廊下の一角。
見慣れない女性が一人、補助監督の伊地知と何かを話している。格好からして補助監督ではないのは確実である。

「ぎまい?」
「義理の妹って意味よ。あの先生に妹ねえ」
「術式で買ったらしい」
「先生の義妹なら伏黒知ってんじゃねえの?」
「恵はあんまり名前の事知らないね」

うわ!!と3人の声が揃って振り返る。
そこには担任の五条がニヤニヤとして3人を見ていた。またそれと同じく伊地知と名前という名前の女性も3人を見ているのがわかる。
五条が「名前、ちょっとおいで」と女性に声を掛ければ、その女性は酷く嫌な顔をするあたり嫌っているのだろう。
それはよく分かった。

「はい」
「紹介しよう!僕の義妹ちゃんの五条名前ちゃん!去年末まで呪詛師に誘拐されて行方不明だったのが保護されて復帰したんだよ。だから恵はあんまり名前の事知らないんだよ、高専も京都の方だったし」
「呪詛師に誘拐されてたの?先生の妹」
「そう!」
「先生が最強だから?」
「んー、それは違う。まあその話はまた今度ね。ところで今日名前任務あった?」
「負傷した人の代わりをと言われまして、本来であればオフでした」
「そ。恵は知ってるよね、女の子が釘崎野薔薇、男の子が虎杖悠仁」
「…五条名前です」

血が繋がっていないのだから似ても似つかない、それは間違いではないのだろう。
それに五条家の当主はワンマンという事も学生らは知っているので名前という人間が無理矢理だという可能性も捨てきれない。
まるでテンションの違う2人に何かしら事情があるのだろうなということくらいしか学生は察する事が出来ない。

「そうだ、今度恵に式神の稽古付けてよ」
「私は教員ではないので」
「あ、ナナミンみたい」
「?」
「悠仁は七海の事ナナミンって呼んでるんだって。あの七海が、だよ」
「七海、さんが…………嘘お」
「本当なんだって。ね、悠仁。あ、ちなみに名前は七海の1つ下で伊地知と同期。術式は呪霊操術。僕には遠く及ばないけど悪くない呪術師だ」
「ちょっと先生」
「なに?」
「その名前さんすごーく嫌な顔してるけど」
「名前ちゃん僕の事嫌いだからね!」

あっははー!と明るく笑う五条に対して学生3人は引いている。
そして名前に同情も同時にしている。
担任がクズだというのはわかっていたし、そういう人間でそうでなければ呪術師なんてやっていられないのもわかってはいるが、ここまで来ると逆に清々しいのか?なんて思えてくる。

「僕は名前と仲良くしたいんだけど、僕昔超悪い子で、名前から嫌われちゃった」
「え、なにしたん?」
「やめときなさいよ、どうせクズな事したに決まってるじゃない。胸糞悪くなるだけよ」
「釘崎に同感。やめておけ、聞くだけ無駄だ」
「あ、あの…」
「あん?」
「お話の所申し訳ないのですが、名前さんの任務の時間が迫っていまして…」
「今行く、ごめんね伊地知くん。それでは失礼します」

一礼して伊地知を伴って足早にその場を去る名前。
それを見送る教師1人と学生3人。
外見的にも五条悟とは似ても似つかず、言えば顔立ちだって日本的である。六眼の影もない変哲もない色だったし地味な色だった。
言われなければ五条家の人間だなんてわからないだろう。そもそも五条家の顔立ちなんてあるのかは知らないが。

「なんで誘拐されてたの?」
「おい虎杖」
「呪霊操術はレアだけど誘拐される?てか誘拐される呪術師ってどうなの?」
「手厳しいね。名前はちょっと特殊でさー、特級の呪詛師に目を付けられてね」
「名前さんって、そんなスゲーの?じゅれいそーじゅつって」
「術式で言えばレアな方。ただ名前の場合は取り込み方が危険だからほいほい取り込めないのが難点」
「せんせー。その、じゅれいそーじゅつって、どんな術式なの」
「文字通りに呪霊を操る術式。まず操るには呪霊を取り込まないとだけど。まあ恵の式神とは違って主たる名前が明確に命令しないと動かないけどね」
「へー!」
「じゃあ伏黒よりも難しい術式なの?」
「使い方次第だね。僕としては、同じ式神使いである恵の訓練に付き合って欲しいんだけどねー」

名前ってば京都校行ってたから京都校の子の面倒は見ても東京校の子は見てくれないんだもん!ぷん!と気持ち悪い程のぶりっこで学生たちは引いた。
それはもうあからさまに。190センチを超した身長を持つ成人男性、アラサーのする行動ではないからだ。ましてアイマスクをして怪しさ満点の男がしたら怪しいさが爆発である。

「なにしてんだお前ら。邪魔だぞ」
「あ、真希さん!聞いてくださいよ、このクズ教師の妹さんの話なんですけど」
「あー、名前さん?だっけ?」
「去年戻ったんだよな、名前」
「しゃけ」
「先輩たち知ってんだ」
「まあな。あれだよ、私らは悟と大喧嘩して校舎ブチ壊したって聞いてたんだけどよ」
「え!!まじ!!??」
「まじまじ。でも本人から訂正があったんだよ」
「悟相手に喧嘩して無事なワケないもんなー。正道に聞いたらまあ軽い兄弟げんかして、居心地が悪いから京都に行ったんだってよ。正道曰く、名前は良い子だって」
「悟に比べれば誰でも良い子だろ」
「高菜」
「まあー、ちょーっと僕も意地が悪かったかなーって思ってはいるんだし。そこまで言わなくてもよくない?」
「で、何が発端なんですかケンカの」
「それは私らも聞いてないな。何言ったんだよ悟」
「……………それは、秘密かな」
「どうせ碌でもないクズな発言したんだろ。正道が名前に優しくしてあげろって俺に言うくらいだし」
「先生最低じゃん」
「最強だからさ、凡人の心なんてわからないんだよ僕」

うわー。と学生全員の声が重なった。

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