呪術 | ナノ
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※夏油傑生存IF
※教師IF

「宿儺の指ってやっぱ不味いの?」
「…へ?」
「いや、傑がさ、あの玉?スゲー不味いって言ってたから。まあ他人の指、まして何百年も昔の死体の指と思えば不味いか。ははは」

やあ虎杖くん。と京都校で補助監督をしている夏油名前が声かけてきた。
夏油傑の双子の弟である名前は双子なだけあって顔がよく似ている。きっと長髪にしてハーフアップにしたらピアス以外には見分けがつかないだろう。

「まあ、うん。不味い、超不味い」
「よくまあそんなもん食ったね、君」
「うん、まあ…それが一番かなって思ってさ」
「ふーん?でもまあ、自己犠牲もほどほどにしておいたほうがいいよ」
「え?」
「知ってるかい?傑の高専時代の話」
「名前、君何しているのかなー」

怒気を含んだ気配。名前が虎杖に話そうとしたことに対してなのか、名前の双子の片割れである夏油傑が笑いながらも怒っている。
それを見た虎杖は「ひっ」と小さく悲鳴をあげ、名前は反対に「はははは」と笑っている。

「任務は終わったの?」
「ああ、私は悟と違うからね。で?名前」
「傑が高専時代ストレスたまりすぎて校舎全壊した話をしようと思って」
「マっジで!!!???夏油先生んなことしたん!?ちょ、詳しく!」
「虎杖」
「はい!」
「まだ報告書出してないよね?」
「え?」
「出してない、よね?」
「う、うっす…じゃ、じゃあね名前さん…」

俺行かなくちゃー…とゆっくりした動きで踵を返し、二人に完全に背を向けると虎杖は全速力で走りさる。
その光景に名前は「おお、さすが」と感心し、その隣の片割れは「さてと」と名前の肩に手を掛ける。

「どういうつもりだい?」
「大人からの忠告だよ、自己犠牲なんてほどほどにしないと爆発するよって」
「へえ?私を引き合いに出したのは?」
「五条じゃ面白くないだろ?やっぱり傑の方が面白いじゃないか」
「まさか京都でも学生にそんなこと言って回っているんじゃないだろうね」
「そこまで俺はクズじゃない。虎杖くんがあまりに良い子だから良い子過ぎると後が大変だよって」

ほら、俺優しいから。と名前はカラカラ笑う。
二人は同じく高専出身ではあるが傑は東京、名前は京都の出身である。
同じ東京でもいいのだが、名前は「折角京都にもあるならそっちがいい。傑と一緒はもういいや」と言った事に始まる。
言えば二人とも優等生ではあるものの、傑の方が一歩先に居る優等生だった。名前だって成績は良いし運動神経もよかったが、双子であるが故に比べられ、そしれ一歩及ばない。それは仕方がないと思いながらも面白い物ではなかった。

「あ、何してんの二人して」
「虎杖くんに傑が校舎全壊させた話をしようと思ったら傑に邪魔されたとこ」
「なに!?そんな面白そうな事しようとしてたの?なんで誘ってくれないのさ!」
「悟…?」
「そしたら傑に邪魔された」
「あのね…そんな人の黒歴史より名前の話してあげたらいいじゃないか」
「俺校舎破壊したことないし、先生怒らせたこともない。任務先でトラブルも起こさないし帳の忘れだってしてないし」
「…………、そう、だね…」
「二人に比べたら俺の失敗なんて可愛いもんだろ?」
「ま、僕たち最強だから?失敗なんて可愛いレベルは失敗じゃないからさ」
「悟…ところで君、任務はいいの?」
「俺?」
「悟の方」
「今は可愛い生徒たちの指導タイム。恵が体術見てほしいって」

良かったねー。と名前は割り込んできた五条に笑いかける。勿論本心ではない。
別段名前自身学生に慕われたいとか、仲良くしたいという考えはない。
しかし五条が学生を育ててこの呪術界を変えたいという願望を持っている、だから応援はする、という体である。何故なら五条が育てた学生らが担う頃には名前はお役御免になっているからだ。良い野望ではあるが、名前自身に恩恵が少ない。そもそもそんな事が可能かさえも不確かなのだ。

「で、なんで名前が東京に?おじいちゃん今日来てた?」
「出張だよ、出張。呪具運びに東京まできたのさ」
「ああ、今日京都から来るって聞いたヤツ名前担当だったんだ。泊まり?」
「この時間だからね」
「あ、じゃあ3人で飯行かない?」
「私これから任務。2人で行っておいでよ」
「七海くん居ないの?それか家入さん。伊地知くんでもいい、酒を飲ませろ、飲まなきゃやってらんねえ」
「荒れてるね…京都嫌なら東京おいでよ?悟がきっと手をまわしてくれるよ」
「そうそう!こっちで楽しくやろうよー」
「京都が嫌なわけじゃない。車でここまでくる道のりが最悪だった、なんだあの野郎!煽りやがって!!俺が呪詛師じゃない事を有難いと思えよ!って事があって。酒だ酒、酒をだせ」

ギリギリギリと歯ぎしりをたて、名前は唸る。
言えばこんな小さな呪具適当な名前で宅配でいいじゃないか。と吐き捨てる。
物としては小さな小箱程度のモノではあるが、中身は大変貴重なモノ。と聞いて居るソレは本来ならば1級呪術師が付いて運ぶべきものなのだろう。
しかしながら人手不足が常であるこの業界に荷運びをする呪術師は居ない。出張だ、といえばそうではあるが京都の学長がそんな事に人手をわざわざ裂く様な人間ではない。
それに京都の人間をわざわざ同じく高専があるところに出張をさせる理由も今はない。
そこで白羽の矢が立った名前がこうしてわざわざ京都からはるばるやってきたのだ、ただの荷運びに。

「式神使わず我慢するなんて偉いね名前」
「うんうん。僕なら盛大に邪魔するよ」
「いやお前ら馬鹿にしてんだろ」
「「ばれた?」」
「何故ばれないと思った」

盛大な舌打ちをした名前。
まあそもそも名前自身この2人に期待も何もありはしないし、逆の立場であれば名前だって喜んでおちょくっていただろう。

「まあ名前は悟にでも奢ってもらいなよ、私これから任務だけど」
「お兄ちゃん、一緒に行ってくれないの?」
「お兄ちゃん任務だから、ほら私特級だから」
「特級自慢うぜー。五条、寿司連れていけよ、特級の」
「いいよー!名前のおねだりだから即答しちゃう!」
「悟お兄ちゃん…!」
「うわキッショ、アンタら何してんの」
「疲れた成人男性が壊れた姿。家入さんも一緒に五条から寿司奢ってもらわない?あと酒飲もう、酒。酒を飲ませろ」


色々察したのか、たまたま通りかかった家入が「ただでいい酒が飲めるなら付き合ってやる」とクマが濃い顔で笑う。
眼は笑っていなかった。

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