呪術 | ナノ
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「こっちが津美紀、こっちが恵」

紹介したい奴らがいる。と引っ張ってこられた名前。
紹介したい?女の子?え?私に??と思いながらゆられた電車。ずんずんと先に進む五条に「早い!」と文句をつけてついたアパート。
ガキをだしてドアをあけると子供が二人こちらをみてた。

「…えっと、夏油、名前です」
「挨拶くらいしろよ」
「伏黒津美紀です」
「…伏黒恵」
「……で、私にどうしろと?」
「えーわかんね?」
「わかったら聞かないかな」

うふ。とわざとらしく笑う名前。
名前は今現在自由に出歩くには難儀する。それは精神的な面でもあるし、物理的な部分でもある。名前に出歩いてほしくない人間がいるのだ。
しかしそれには強制力はあるが拘束力まではなく、五条が「はー?うざ」と書きなぐった紙で名前を連れ出した。
それは名前にとっても突然で、ましてこの警戒している子供たちにとっても突然だったのだろう。

「俺が面倒みてんの」
「………え?五条くん、の、子供なの?」
「違ぇよ!!」
「え、じゃ…なんで?」
「あーもう!津美紀、恵、ちょっと出てくるからな」
「はーい」
「ん」

カンカンカンと乱暴にアパートの階段を下りる五条。その後ろから名前は追いかける。
これは私が悪いのか?いや悪くないよな。と高い背に見合った長い足で名前との距離が開く五条をやはり追いかける。
すると小さな公園に入る。小さなブランコに小さなシーソー、ベンチだけが大人が座れるようにと通常のサイズでそこだけが不思議な世界になって感じる。
五条はブランコに長い足を窮屈そうにしながら座り、名前に隣に来いと指す。

「似合わないね、五条くん」
「うるせーな。んで、あの二人なんだけど星漿体の件覚えてるだろ?」
「ああ、うん…傑と一緒にやった……、任務でしょう?」
「あれに恵の父親が噛んでた。んで、俺はそれを殺した」
「………うん」
「で、それが禪院の出身だったわけ」
「…………もしかして、この前話してた、あれ?」
「それ。んで俺が世話してんの」
「女の子の、えっとツミキ?ちゃんも?」
「あれは父親の再婚相手の連れ子。一人も二人も一緒だし?俺は恵を教育するのに世話してるって事。津美紀はついで」
「うわ…」

クズ…という言葉を名前は飲みこむ。
クズな発言ではあるが実際にあの少女は助かっているのは事実。それを名前がどうこう言う立場ではないし、言う必要もない事は自覚している。
名前だって五条悟という人間に世話になっている一人であるのだ。

「……五条くんさ」
「あ?」
「そういう大切な話は前もって言ってくれる?心の準備が必要だからさ」
「はー?名前さんそんな繊細なわけ?」
「一般常識を言っているんだけど、わからない?」
「………うっす」
「近くにケーキ屋さんとか、ない?」
「あー前に使ったとこなら」
「じゃあ案内して。ケーキでも買って戻ろう、あと説明してなった事をあの二人に謝る事。あの様子じゃ私と同じで言ってなかったでしょ」
「うげ、うざ」
「その態度じゃあの子、五条くんを師事しないよ。というより信用だってしてくれるのに時間かかるからね、わかる?」
「……あーもう、わかった、わかりました。んだよ」
「返事は『はい』でしょ」

かなり溜めこんでから小さく「はい」と返事をするあたりは素直である。
傑と行動を共にしていたせいもあるのか、名前に対しては大抵素直である。
今度は名前に早くしろと言われて立ち上がり、ケーキ屋へと向かう。その途中やはり「早い!」と名前が文句を言うが「名前さんが小さいからじゃん」と歩みを緩める様子はなかった。


「ごめんね、ビックリしたよね。これお詫びのケーキ、好きなの選んで」
「俺これ」
「五条くんのはありません!」
「………選んでいいの?」
「うん、いいよ」
「恵はどれにする」
「津美紀が選んでからでいい」
「なんて素敵な姉弟愛…泣ける」
「…じゃあ、私このチョコレートにする」
「……じゃあこれ」
「じゃあ俺はね」
「何食べようとしている、残りの1つはこの子らの夕食のデザートとして半分子させます」
「え…あと、1こ残るじゃん…」
「私が食べる」
「は?」
「え、五条さん食べられないの?なんで?悪い子だから?」
「そう、悪い子だから」

何気なく子供たちにも悪い子判定されているのは笑える。
ケーキ屋に脚を運び、子供に人気そうなケーキを適当に見繕ってアパートに戻った二人。
困惑していた様子だが名前が「ケーキ買って来たから一緒に食べよう」と声を掛けると女の子の方がニコリと笑った。
テーブルにケーキを置き、箱を開いてゼラチンによって輝くケーキが顔を覗かせる。
一人一人にケーキを出すのにお皿を一緒にだしてケーキを引っ張り出してお皿に乗せて。あまり気の利いたお皿ではないのはご愛嬌だろう。
子ども二人は名前の主観ではあるが嬉しそうに食べている。

「……名前さん、俺だけ酷くね」
「事前連絡の重要性をその身を持って知りなさい」
「じぜんれんらく?」
「そう!これこれこういう予定ですが、いいですか?って聞く事だよ。そうしないと今日の二人と私みたいなことになるから」
「今日はびっくりした。たしかに!」
「私だけでもいいから言う事。君たち二人もわかった?」
「はい」
「…はい」
「よろしい」
「じゃ、名前さんもこの二人の面倒見てくれることになったらいう事聞けよ」
「……ん?」
「はーい」
「はい」
「まって、それ、どういう事」
「そういう事。名前さんだって気晴らしにいいんじゃね?高専に籠ってるよりさ」
「そ、それは…だって、申請とか、あるし」
「俺、五条悟。それくらい楽勝。つーわけで、俺が来れない時は名前さんが来っから。学校のプリントとかも名前さんか俺に渡せ」

そういわれて何か思い当たる節があったのか、恵と呼ばれていた男の子がランドセルを漁ってプリントを名前に差し出す。
名前がそれを受けとり、読むと授業参観の案内だ。

「授業、参観……」
「あ、私も!」
「なんで俺に渡さないワケ!?」
「………この人の方がマシそうだから」
「言うね…えっと恵くん、だっけ」
「ん」
「名前、さん。私も」
「はいはい。来週の土曜日か……」
「来れる?」
「任務はまだ……こないから、多分、大丈夫、かな」
「俺も行ってやるよ」
「五条さんはいい」
「は!?」
「五条くん目立つし」

ねえ。と名前が言えば二人は頷く。
そうなれば目立ちにくい名前の方がマシ、という消去法で来たのだろう。
名前からしてみたら親がくる授業参観で名前は若すぎるだろうに、と思うが相手は子供だ。仕方がない。

「つーか、名前さん。これじゃあ断れないっしょ」
「……わかりました、私も協力します」
「うっし」
「今日は名前さんもいっしょにごはん食べる?」
「俺だろ、津美紀。五条さんごはん一緒に食べよ!だろ」
「あんたいつも勝手に食べるじゃん…」
「うるせえぞ恵」
「今日ね、わたしハンバーグ作りたい。名前さん作れる?一緒に作ろう!」
「は、ハンバーグ、か…久しぶりだけどできるかな」

それから津美紀と恵を引き連れてスーパーに行って食材を買う。
費用は五条が「これここの家の食費」と封筒を渡された。ひと月にしては多くないか…?と思ったが、五条が五条なので黙っておくことにした。残れば翌月にまわせばいいのだ。
ついでにこれからの週の食料はあるのかと聞いて、ないと言われたので日持ちする物をメインにカゴに入れていく。
子どもだけだというからあまり調理しなくていいものが良い。
包丁だってなるべく使わないで済むもの。お湯もまだ心配だ。しかしそれだけも言ってはいられない。ついでに今日少しでも料理して食べられるようにしておいた方が良いのだろうかと名前は悩んだ。

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