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※夏油傑生存IF
※教師IF

「ド、ドッペルゲンガー…」
「どうする?私達ドッペルゲンガーだって」
「どっちが本物だろうね」
「どっちだろうね」
「アレだ、戦って生き残った方が本物」
「私名前を殺したくないな」
「私だって傑殺したくない。というか、殺せないよね」

はははは。と笑う二人の夏油。
片方は見慣れた長髪、片方は短髪。
片方は大きなピアス、片方は飾りの無い耳。
どちらも切れ長な目で端整な顔立ち。
思わず虎杖が二人見て言ってしまった言葉に乗ったのだ。

「虎杖、紹介するよ。双子の弟の名前」
「初めまして虎杖くん。傑の双子の弟の名前です、よろしく」
「っす。虎杖悠仁です。夏油先生双子なんだ、真希さんと一緒だ」
「ああ、禪院さんのお姉さんだっけ」

術師の家系に置いて双子は凶兆ではある。しかし夏油兄弟は一般家庭出身である。その点は禪院姉妹とは大きく違う点であり、夏油兄弟には些細な事ではあるが禪院姉妹にとっては大きな事になる。

「で、何か用事かな」
「おう!夏油先生に稽古付けてもらおうと思ったんだけど…やっぱいいや」
「付き合ってあげなよ傑。せっかくのお誘いじゃないか」
「そうだね。付き合おう」
「え、いいの!でも、えっと、夏油…名前、さん?は、いいの?」
「私まだ仕事があるし。五条に同行して任務だよ」
「補助監督?」
「そ。私京都校の方なんだけど、今回出張と称して五条の世話係なんだよね」
「世話係だなんて失礼だなー。僕超いい子じゃん?悠仁もそう思うよね」

ぬっと現れた五条に虎杖が大きな声をあげて驚く。
女性の高い声に比べればまだマシではあるが、それでも耳をつんざくような声は聞いていて心地の良いモノではない。

「いい子は遅刻しないよ悟」
「言う事聞く補助監督が不在だからって京都から補助監督呼ばないね五条」
「先生最低じゃん…」
「僕最強だから」
「最強の我儘」
「最強の悪い子」
「名前さんも先生と仲良いん?」
「いや?これと言って仲が良いわけじゃないよ」
「え」
「私がただ臆することもなく思った事を口にしているだけだよ。ははは!機嫌損ねて殺されても災害に合ったものだと思って死ぬだけさ」
「う、うわ…」
「殺さねーよ!名前くんてば、ひどーい!僕名前くんの事お友達だと思ってたのにー」
「友達だとは思ってるよ、一応。まあでも一緒に仕事ってなると嫌な部類」

あっはは。と笑う名前に片割れは「正直すぎるよ」と窘めるでもなく一緒に笑っているし、虎杖はだんだん五条が気の毒になってきた。
虎杖はここ東京呪術高専に編入してから五条と夏油のやり取りを見ているし、それが二人に普通であるのも知っている。
しかし夏油でさえまだオブラートに包むのに名前は包むつもりさえないのでは思うくらいにストレートだ。

「じゃあ私は虎杖の稽古に付き合うけど」
「傑悠仁と稽古するの?えーいいな、ちょっと見ていこ」
「どうせもう時間過ぎてるしね、いいんじゃない?」
「え」
「30分も1時間も大差ないでしょ。私もちょっと傑の先生みたいし」
「じゃあ決まり。ほら、傑先生見学な」
「名前さんて結構適当なわけ?」
「虎杖くん」
「ん?」
「五条に正面切って正論を言ったって無駄だからだよ。私無駄な苦労はしたくない人間だから。30分遅れて怒られるのも1時間遅れてもどうせ怒られるんだ」
「こら名前。教育に悪いよ」
「そうだね、教育には悪いね」

ふふふふ。と笑う名前。何か含みがあるんだろうな、思う虎杖ではあったが、如何せん虎杖にはまだわからない。
悪い大人が三人、「ほら夏油先生、稽古お願いしますよ」と虎杖を囲みながら傑をいじり始める。
そういうものよくある事、なのだろう。「はいはい」と受け流して稽古場まで移動が始まった。
前を歩く高身長の男性三人、五条先生が真ん中…オセロならひっくり返って黒くなる。と思っていると五条が「僕は黒くならないよ、最強だから」と笑うので口にしていたのだろう、虎杖は誤魔化す様に笑った。

「五条先生、まだいいんですか居て…ああ、名前さん。どうも」
「やあ伏黒くん、久しぶりだね。あ、あの子も1年生?女の子」
「ああ釘崎ですか」
「おーい、野薔薇」
「なによ!って、夏油先生が二人いる!うわ、胡散臭い!!」
「傑胡散臭いって」
「名前胡散臭いって」
「傑の双子の弟の名前だよ、仲良くしてあげてね」
「初めまして釘崎野薔薇さん。胡散臭い夏油名前です、傑とは今紹介にあったように双子でね。よろしく、胡散臭いけど」
「く、釘崎野薔薇です…失礼、しました」
「胡散臭いってよく言われるから気にしてないよ」
「え」
「庵さんによく言われるんだよ。こっちは真摯に対応してるのに。まあ原因は傑なんだけどね」
「私?別に私彼女に何もしてないけど」
「言われるんだよ、傑と同じ顔だから信用ならないって。私は私なのに酷いよね、ぐすん」

高身長な男性がそんな可愛い子ぶっても何も可愛くない。むしろ吐き気がする。と思った釘崎ではあるが、あの夏油傑の血縁者である。無駄に敵に回したくない。そう思って黙る。そしてその庵さんという意見にも完全に同意だと内心思っていた。その庵さんというのは京都校の教師である庵歌姫なのだが。

「ほら傑、早く稽古付けてあげなよ」
「そうだぞ傑!先生なんだから」
「私達出発できないだろ」
「そうだそ…って待って?これ僕の我儘になってるの?」
「なってるよ」
「は!?ふざけんな。行くよ名前」
「お。急にやる気出たね。良い事だ。じゃあ傑、またね」
「うん」


「今の何?」
「名前の事?京都で補助監督していてね、今伊地知が出張で居ないだろ?その代わりで京都から悟が呼んだんだよ」
「なんでわざわざ?他にも補助監督の人居るのに」
「まあこっちの補助監督も悟は恐いからね。名前は計算しているのか知らないけどずけずけ言うからね、悟が名前を気に入っているんだよ。東京に移動してくれればいいのに」
「前五条先生させようとしてましたよね」
「東京に夏油は二人も要らんだろって、おじいちゃんがね」
「どゆこと?」
「名前も元呪術師なんだよ。まあ行っても1級どまりだけど。私と比較されるのが嫌だって辞めちゃった」
「うっわ…才能潰し」
「名前さん強いぞ?それこそ名前さんの方が教師に向いてる気がする」
「まじ!?さっき話した感じだとそんな感じはなかったけど」
「君は名前によく懐いていたもんね、津美紀も。同じ顔なのに不思議だよ」

と話していたなど、その場を後にした二人は知らない。

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